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- Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.23 )
- 日時: 2015/04/04 21:55
- 名前: 逢逶 (ID: 9yNBfouf)
episode4
title キス×キス×涙
「…何ですか?」
何故か、壁に追いやられた私。
背中がひんやりする。
私の顔の横には、森さんの手。
会話の途中、急に立ち上がった森さんは私の手を引き部屋の中で四人が見ている中、壁ドンをした。
「じゃあさ、俺ともキスできるわけ?」
「…」
「好きでもない俺とキスできる?」
すぐ目の前にある顔。
鋭い目が、私を見つめる。
私が返事をする前に、森さんの顔が近付いてきた。
「森さん!」
「え?」
森さんはぴたっと動きを止めた。
私は顔を近づけ、森さんにキスをした。
驚いた顔。ゆるゆると揺れる焦点があっていない瞳。
動揺している?
私はふっ、と鼻で笑う。
…あのままじゃ、〝無理矢理〟だった。
相手の許諾無しに、キスをするのはやっぱり男の証拠。
だから、自分からキスをして…、男に幻滅することを避けた。
もう、辛いから。
「…私、帰りますね」
「いやいや、待てよ」
「まだ何か?」
山田さんが私を引きとめようとする。
「…俺、好きだって言ったよね?蓮ちゃんに告白したよね?俺…、蓮ちゃんの携番消せないでいるんだよ?…蓮ちゃんは誰とでもできるの?たとえ、自分のことが好きな人が目の前にいても…男とキスできるの?」
「…そんなこと聞かないでください」
山田さんの泣きそうな顔は、私の心を少しだけ締め付けた。
だけど、私はそんな人。
お願いだから好きにならないで?
「…俺も、本当にキスするとは思わなかった」
森さんも、険しそうな表情で呟くように言った。
「…蓮ちゃん、俺にキスしてよ」
「いや…、意味わかりません」
「そのままの意味だけど?」
山田さんの要求の意図がわからない。
「…できません」
「…じゃあ俺からしちゃうよ?」
「…」
このままだと帰してもらえない…。
私は椅子に座る山田さんの肩に手を置いてキスをした。
「…」
「帰りますね」
「…待って」
「しつこいですよ?!」
…あ、れ?
頬が冷たい。
触れてみると、濡れていた。
あー、泣いちゃってるし。
「…どうして泣いてるの?」
「…えと、これは…」
「…本当はキスするの辛かったんでしょ?」
「そんなこと…!」
「…蓮ちゃん、何を抱えてるの?…俺さ、言わなかったけど蓮ちゃんがいつも辛そうな顔してるの気付いてたよ?」
「…え」
「ねぇ、俺…蓮ちゃんのこと何も知らない。…知りたい」
「…私のことは誰もわからなくてもいい。私だけが知っていればいい」
「…わかった。仕事決まった?」
「無いですよ」
「…マネもう一度やってくれない?」
「私が?!」
私とは最低な思い出しか無いでしょ?
それなのに…もう一度だなんて、無理だよ。
「…うん。蓮ちゃんはマネとして仕事は完璧だよ。俺達が大事にしてるツアーができるように調整してくれたし、会議での案も革新的で実現できたらKISSTILLの新しい世界を創り出せる。蓮ちゃんが必要なんだ」
そんなの…断れないじゃん。
これから新しく仕事を見つけられる自身も無いし…
「…良いんですか?」
「…うん。お願い」
私は、KISSTILLの仕事に戻ることを決意した。
自分から辞めたのに…勝手かな。
でも、必要とされていることが素直に嬉しかった。
「俺…小枝さんに当たって、必要ないとか言っちゃったけど訂正する。本当は必要だから」
伊藤さんの言葉が妙に胸に響いた。
あの時の〝必要ない〟が消えた。