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Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.3 )
日時: 2015/03/20 22:07
名前: 逢逶 (ID: MHTXF2/b)

episode2
title 彼等

今日は、初仕事。山田さんを車で自宅まで迎えに行って、KISSTILLの冠番組の収録現場に行く。
当たり前なのだがスケジュール調整も任されているから、収録中は他のメンバーのマネージャーさんとテレビ局にある会議室で打ち合わせをする。


現在時刻、午前9時。


そろそろかな…、

車のキーを持って家を出た。
小さなアパート。

私なんかには丁度良いサイズ。

さて、

スーパーアイドルはどんな家に住んでいるのか。



さぞかし豪華なのでしょうが。



一つため息を吐いて車を発進させた。


教えられた住所までは、十五分程。
意外と近くて驚いたが、車の運転が下手な私にとっては好都合だ。



「♪もう一度kiss me…kiss me…まだ、届かないsong for you♪」

自然と口ずさんでいた曲は、KISSTILLのデビュー曲〝STILL〟だった。



私は、KISSTILLの歌が大好きだ。


だからマネージャーになったわけでは無いんだけど。



何でかな…KISSTILLの歌は泣けてくる。



男の全てが嫌いな私だけど、KISSTILLの声だけは好きなんだ。



そんなことを考えながら車を走らせていたら、あっという間に目的地に到着した。


あぁ、やっぱりね。


大きなマンション。



何階まであるんだろう、と思わず窓から見上げた。



あ、山田さん。


深く帽子を被ってこちらに向かって手招きしている。


車を移動させて、山田さんの近くに停める。


会社から用意されたワゴン車だから、やっぱり扱い辛くてドアを開けるのに手間取っていると、山田さんは自分から開けて中に入った。


「…すいません」

「いえいえ。あ、そこ押せば開けれるからね」

「ありがとうございます」

「今日、仕事なに?」

「この後10時から雑誌等の取材。12時から3時まで収録。5時までに事務所に移動し、次のツアーの会議だそうです」

「ん、わかった」

私は、車を再度発進させて恐らく寝れていないだろう山田さんの顔色をバックミラーで伺いながら、慎重に運転する。



「…んー、蓮ちゃん」

「はい、何ですか?」

「蓮ちゃんって彼氏いるー?いや、普通にいるか。モテそうだもん」

「モテはしませんよ。彼氏はいますけど」

「蓮ちゃん…なんでそんな暗い顔すんの?」

「え…してませんよ」

「いーや、してるよ。彼氏と仲悪いの?」


突っ込んだこと聞いてくるなぁ…

本当に愛してる彼氏なんていないんだけどね。


私の周りにいるのは、どこで出会ったかも覚えていない男たち。
そいつらもどうせ捨てるんだけど。



「…良いとは言えませんけど。悪いかどうかだとそうでも無いですよ」

「そっか。ねぇ、蓮ちゃん。俺さ、蓮ちゃんと仲良くなりたい」

「全国のKISSTILLファンに申し訳ないです」

「ファンは恋人。だから良いの」

「ふふ、そうですか。じゃあ仲良くなれるように頑張ります」

「いーや、俺が頑張るの」

「わかりました笑」

口だけならなんとでも言える。
思っていないことだって、スラスラと出て来る。
そんな単純な嘘に騙される方が悪い。


山田さんと他愛もない会話をしながらテレビ局に到着した。

駐車場で車を降りて、山田さんと廊下を歩く。

「ちょっと楽屋に寄ってかない?メンバーに会ったことないでしょ?」

「そうですね。では少しだけ」


〝KISSTILL様〟

扉をノックし中に入る。

「失礼します」


見慣れた顔ぶれ。


「山田さんのマネージャーになりました。小枝と申します」

「あぁ!蒼の新しいマネさん!よろしくね!」

山田さんと同じようにニコニコと、笑いかけてくる四人。

まただ。


彼等の顔を見ると、


全身の毛が逆立って、震えてしまうんだ。




それは、男という性別が



凶器だから。