コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Gimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~ ( No.6 )
日時: 2015/03/24 17:07
名前: 逢逶 (ID: IqVXZA8s)

episode5
title 衝動と代償

何、ここ。

山田さんに連れて来られたのは…TV局の倉庫のような所。
薄暗くて、気味が悪い。

「一体何のつもりですか?」

「それはこっちのセリフ。手を振り払ったでしょ。その理由を教えてよ」

「…振り払った覚えありませんけど」

「じゃあ何?避けただけとでも言いたいの?同じことでしょ」

「…」

「はぁ…黙らないでよ」

「嫌だったから以外に理由ありますか?」

「…そっ、か」

「じゃあ、失礼します」

「待ってよ。蓮ちゃんは柏原のことどう思ってるの?」

「…気になる人ですかね」

なんて、嘘。
誰も好きにならない、けど恋愛はする。

「蓮ちゃん、俺が何でこんな質問してるか分かってる?」

「分かりません」

「…俺さ、恋愛で仕事の雰囲気乱されるの大っ嫌いなんだよね。…職場恋愛とか、本当に勘弁」

…へぇ。
雰囲気を乱されるのが大嫌い。
好都合。

乱してあげる…

取り返しがつかないくらいにね…


「…分かりません。私の気持ちは私の気持ちなので。…山田さんの考えを押し付けられても困ります」

「…マネージャー失格じゃないの?それ」

「他人を思い通りに動かせるなんて、自惚れてませんか?」

「…」

「じゃあ、私はこれで」


来た道を戻る。
山田さんを落とすのは難しそうだ。

だけど、難しいステージもなきゃゲームは盛り上がらない。



あ、マネージャーさん達。

「…小枝さん!」

急に大声で呼ばれる。

「はい?!」

急いで駆け寄る。
あれ、少し汗かいてない?

「…どうしました?!」

「早く!事務所に移動しなきゃ!」

「あ!」

あー、最悪。
仕事忘れるなんて…

「他みんな糸村の車乗ってるから山田呼んで来て!」

「はい!」

猛ダッシュで倉庫のような場所に戻る。



「山田さん!移動です!」

「え?あ、」

山田さんの手を引く。
本当は触りたくないけど、仕事だし。



早く、間に合わなきゃ!

駐車場まで全力疾走。
息も途切れそう。


糸村さん以外のマネージャーは戸部川さんの車に乗った。

「すいませんでした」

「以後気をつけるように」

「はい…」

里崎さんに軽く叱られ落ち込んでいると、柏原さんが突如、笑い出した。

「瑛太どうした?」

「以後気をつけるように、って。お前も新人の頃やらかしてたくせに」

「バカ!それ言うなよ!」

「…そうなんですか?」

「うん。俺と慎太は同期。で、俺の方が仕事出来たんだよ。こいつ超使えなくてさ」

「へぇ、意外ですね」

「もー…余計なこと言うなよ」

ほら、人って案外すぐ変わるんだよ…
昔は仕事が出来なかった人も、今ではしっかり出来る。

恋愛対象外でも、変えることが出来る。

もし山田さんが雰囲気を乱したくなくて、同じ空気を感じているマネージャーやスタッフと恋愛をする気がないなら…

それを変えればいいだけ。



「…小枝さん。明日さ、食事でもどう?」

戸部川さんの急な誘い。

「…すいません。明日は糸村さんと約束があるんです」

「そう…」

「おっ戸部ちゃんフられた?」

「…うっせ」

「まぁなぁ!小枝さん可愛いもんなぁ…」

「うん」

認められても…

「俺びっくりしたもん!こんな可愛い子がマネージャー?!って」

「…嬉しいですけど、なんて答えればいいんでしょう?」

「勝手に俺たちが思ってることだからさ、聞かなかったことにして」

「はい」



あぁ、もう。

衝動でゲームを始めて、


でも後悔はしていなくて。




過去にやめたゲームは、私を傷つけるものだと知っていて。



だけど、どこかで膨らんだ寂しさを埋めてくれる。



代償は大きい。ゲームを始めてしまった限り、一生傷は癒えない。





でも、寂しさだけは必要ない。