コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 雨と野良猫
- 日時: 2016/09/05 21:30
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: GlabL33E)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=37477
【挨拶】
初めまして、ゴマ猫です。
コメディ・ライトで書かせて頂いて、4作品目になります。
これまでずっと短編をちょこちょこ書きながら、長編を書き溜めていました。なんとか長編の目処がついたので、ようやくといった感じでアップできます。「またか」と思われる方も居るかと思いますが、今回もジャンルはラブコメです。はい。
コメ返信や拝読など出来ないまま、長らく経ってしまいましたが、これから少しずつやっていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。
上記URLは、同じ板で書いている短編集です。「長い物語はちょっと」というお客様は、よろしければこちらをどうぞ。
〜あらすじ〜
「ごめんなさい、あなたとは付き合えません」
想いを寄せていた相手、秋野沙夜に告白してフラれた逢坂優斗は停滞していた。
季節は夏へと移り変わろうとする中、激しい雨が降る日に一匹の猫と出会う。偶然にも捨てられた猫を見つけてしまった逢坂優斗は、飼い主探しをする事に。初めての出来事に戸惑いながらも奔走する毎日。
停滞していた日々が少しずつ変化していく。
【お客様】
立山桜様
織原ひな様
詩織様
てるてる522様
河童様
【目次】
プロローグ>>1
一話〜三話
>>2-4
四話 五話〜七話
>>7 >>10-12
八話〜十話
>>15-17
十一話〜十二話>>21-22
十三話〜十五話>>25-27
【Side View】>>28
- Re: 雨と野良猫 ( No.6 )
- 日時: 2016/08/06 21:06
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: xV3zxjLd)
>>5 立山桜さん
コメントありがとうございます。
気が向いた時にでも、また覗いてやって下さいませ。
- 四話 ( No.7 )
- 日時: 2016/08/06 21:12
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: xV3zxjLd)
世間は意外と狭いものだ。スーパーで偶然出会った女の子、霧咲 雨音という名前らしい。家の近所——などというレベルではなく、驚く事に家のお隣さんだったのだ。しかも、俺と同い年。絶対年下だと思ったんだけど、容姿のせいもあるんだろうな。背低いし、顔もどこか幼いし。
ともあれ、霧咲さんは親切にも俺に猫用の哺乳器と、実際に猫の世話の仕方なんかを道中で丁寧に教えてくれた。霧咲さんも猫を飼っていた事があるらしい。
「今日は色々ありがとな。今度何かでお返しする」
「別に気にしなくていい。お隣さんのよしみ」
玄関先で話していると、霧咲さんはグッと親指を立ててそんな事を言う。
彼女のおかげで、俺一人じゃどうにもできなかった問題も解決した。
「また猫の事で困った事があったら聞いて」
それだけ言うと、霧咲さんは踵を返して家の隣にある自宅へと戻っていった。その後ろ姿が見えなくなるまで見送ってから気付く。今日は久しぶりに喋った、と。
いつもは親父とばっかりで、学校に友達なんて居ない俺は、基本的に話すという事をしない。
秋野さんと話していた時は、それこそ幸せな気持ちというか、満たされた気持ちになっていたけど、この間フラれてしまってからそれも無くなっていた。そのせいなのか、霧咲さんと話せて自分の胸の中に温かなものが広がっていたのを感じていた。
***
「おう、優斗。すまねぇが明日は用があって、一日居ないからよろしくな」
家に入るなり、親父がリビングから顔を出してそんな事を言う。
「珍しいな。仕事?」
「野暮用だよ、昔の知り合いと会うんだ」
親父は奥歯に物が挟まったような物言いで頬を掻く。
野暮用、昔の知り合い、理由を言いづらそうな親父……まさか、新しい恋人でもできたのか? って、そんな訳ねーか。母さんが亡くなってから随分と経つのに、毎日仏壇で手を合わせて「行ってきます」と「ただいま」は絶対言う真面目な親父だ。あり得ない。
ちなみに母さんは俺が生まれてすぐに亡くなってしまった。とても優しくて、最高の妻だったと、小さい頃は親父からよく聞かされたものだ。病弱だったらしく、体調を崩して入院してからはあっという間だったらしい。
思い出なんて何もないけど、親父を見ていると少し羨ましく思う時もある。好きな人と両想いになれるってどんな気分なんだろうか? きっと、毎日が幸せに違いない。
「分かった、ゆっくりしてきてくれ」
「ゆっくりも何も、用が済んだらすぐ帰るからな。次の日から仕事だからよ」
少し面倒そうに言う所を見ると、気は進まないのか? ますます理由が気になる……おっと、親父に構ってる場合じゃない。買ってきたミルクやんねーと。
***
「ほら、ゆっくり飲むんだぞ」
ひと肌よりほんの少しだけ温めたミルクを哺乳器に注いで、ゆっくりと飲ます。この知識はネットと霧咲さんから教えてもらった。始めは匂いを嗅いで警戒していたのだが、やがてゆっくりと飲み始めて安堵する。
「はぁ、ミッションコンプリートだな」
安心したせいか、どっと疲れが出てきた。飲ませたらもう寝ちまうか。明日もこいつの飼い主を捜さなきゃいけないしな。本当、早く見つかるといいんだけどな。
無邪気にミルクを飲む猫を見ていると、頑張らなくては! という使命感が湧いてくる。人間でも動物でも、小さくて弱い生き物には見ていると庇護欲みたいなものが自然と湧くと聞いた事があるが、それだろうか。
「もう少しだけ我慢してくれな?」
空いている左手で子猫の頭を撫でる。ふわふわとした毛触りが心地いい。
子猫は、お腹いっぱいになったのか飲むのをやめた。それを確認して俺も睡魔が急激に襲ってくる。俺はミルクを床に置いて、部屋にあるベットに背を預けた。
まだ自分の夕食を食べてなかったので少し仮眠するつもりだったのだが、結局そのまま朝まで深い眠りへと落ちてしまったのだった。
***
「な、なんじゃこりゃ……!?」
翌朝、目が覚めると座っている場所のカーペットに出来ていた謎の水溜り。
慌てて自分の下着を確認する。いや、もちろん高校生にもなって粗相なんてする訳もないのだが、一応念のために。
「……ふう、焦った」
自分ではない事を確認して一息。
だとすると、これは一体? アンモニアの臭いが部屋に充満してしまっていたので、窓を開けて喚起する。カーテンを開けると、曇天の空から今日も小雨が降っていた。俺じゃないとすると、犯人は一人——いや、一匹しか居ないな。部屋の隅に丸まって眠る子猫を見る。
「トイレの問題もあったんだよな……」
うっかりしていたけど、ちゃんとトイレの場所も作っておかないとな。昨日買っておいたのに忘れてた。毎日部屋のどこかにされちゃたまらん。俺はとりあえずカーペットを剥ぎ取ると、自室の二階からリビングへと降りる。そこから洗濯機がある洗面所へと移動。
今日は親父も朝から居ないって言ってたし、食事やら洗濯は自分でやらなくちゃいけない。親父は俺に似て厳つい顔(自称ロマンスグレー)だが、家事なんかも器用にこなす。
時間がある時なんかは俺の弁当も作ってくれたりする事もあったりして、俺としてはありがたいのだが、そのせいか俺は家事の類は得意ではない。親父が居ない時、飯なんかは外で買って来たりして済ましている事がほとんどだ。
「よし、これでいいだろ」
汚れたカーペットを、お湯で少しだけ洗って洗濯機に放り込む。今は時間が無いから帰ってきたら洗濯して乾かせばいいだろう。生憎の天気で外には干せそうにないけど。
リビングに戻ると、木製のダイニングテーブルの上にメモと藍色のつつみが置いてあり、なんだろうと確認してみる。
「おっ、親父弁当作ってくれたのか。助かる」
メモには『弁当作ったから持ってけ』と、豪快な文字で簡素なメッセージが書いてあった。これで今日の昼食問題は解決した。後は朝飯とあいつの飯だがどうしたものか。
壁掛け時計に目をやると、少し急がないとマズイ時間。決断は早めにしなくてはならない。そもそも家に置いていって大丈夫だろうか? 俺が帰ってこれるのは早くても夕方になってしまう。それまで放置というのはどうなのだろうか? 昨日はミルクを飲んでいたが、半日居ればお腹も空くだろう。
「よし」
少し考えてから俺は二階へと上がった。
- Re: 雨と野良猫 ( No.8 )
- 日時: 2016/08/07 18:32
- 名前: 織原ひな (ID: Qz56zXDk)
ゴマさんお久しぶりです
紗悠だった人だけど覚えているでしょうか……
今日カキコに復帰しました
やっぱりさすがの描写ですね……おみそれします
独特の先がとても気になる感じとても好きです
更新頑張ってください!
あと小説活動も復帰したので「溺死桜」ってやついつか見に来てくださいな!
- Re: 雨と野良猫 ( No.9 )
- 日時: 2016/08/08 01:18
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: EM5V5iBd)
>>8 織原ひなさん
おぉ、紗悠さんお久しぶりですね。一年ぶりくらいですかね?
もちろん覚えてますよ。絡ませて頂いた方は全員覚えております。
お帰りなさい、と言っても、自分もカキコは少しご無沙汰でしたが(汗)
わざわざ読んで頂いて、感想までありがとうございます。
まだまだ拙い文章ですが、そう言って頂けると嬉しいです。
結構長いので展開はゆっくりめですが、またお暇な時にでも読んでやって下さいませ。
ひなさんも(この呼び方でいいのでしょうか)新作書きはじめたのですね。
はい、是非読ませて頂きますね。
- 五話 ( No.10 )
- 日時: 2016/08/10 23:08
- 名前: ゴマ猫 ◆js8UTVrmmA (ID: rBo/LDwv)
「少しの間、大人しくしていてくれよ」
俺は周囲に聞こえないくらいの小声で子猫に言い聞かせる。
ちなみに今は授業中、先生がこちらに背を向けて黒板にチョークを走らせている。
当然だが校内に動物を持ってきてはいけない。子猫が鳴いたりしたら一発アウトという自分でもかなりスリリングな事をしていると思う。けど、こいつを家に置いて何かあったら困るという気持ちの方が最終的に勝った。
猫はというと、親父が持っている大き目なエコバッグに適当なタオルを敷いてたその中で寝ている。机の横のフックに引っかけているが、幸いにも鳴くどころかスース—と静かな寝息を立てていた。
「——で、ある。じゃあ、次のページを……逢坂、読んでみて」
「はい」
俺は先生に促されて立ち上がると、エコバックの中で眠る猫を一瞥してから、教科書に視線を戻す。
「我々は群衆の中にいた。群衆はいずれも嬉しそうな顔をしていた。そこを通り抜けて、花も人も見えない森の中に来るまでは——」
「ニャウン」
……音読している途中で、普通なら出るはずのない声が出た。いや、もちろん俺じゃない。エコバックの中に居るコイツ(猫)だ。シンと静まり返った教室の中では、その鳴き声は異質なもので、皆の視線が俺に集中する。
「逢坂、何をふざけているんだ?」
「す、すいません」
先生は眉間に皺を寄せ、俺を訝しげな表情で見つめながらそう言った。
あぶねぇ、どうやらまだセーフみたいだ。周囲の視線で疑いは晴れていない事は感じているが、先生に咎められない以上はセーフ判定だろう。気を取り直して、俺は教科書に視線を戻した。
「そこを通り抜けて、花も人も見えない森の中にくるまでは、同じ問題を口にする機会がなか——」
「ニャッニャー」
またも途中で猫の鳴き声がして、再びざわめき始める教室。
「……逢坂、お前はふざけないと気が済まんのか?」
古臭い丸眼鏡を指先でクイクイっと直しながら、先生は不機嫌さを露わにする。授業の進行を俺が止めているのだから当然と言えば当然なのだが、実際に鳴いているのはコイツ(猫)なので理不尽な気もする。「俺じゃないんです」と言いたいが、連れてきたのは俺なので、そんな事は言えずに言葉を呑み込む。
「すいません、集中できてませんでした」
「……もういい。じゃあ前田、次の段落から」
先生は深い溜め息を吐き、呆れたような口調でそう言った。俺は静かに座ると、エコバックに入った猫に目をやる。今のはさすがに肝が冷えた。
もう少し何か対策を考えないと、毎回こんな事はしてられないな。
***
「やぁ、逢坂優斗。先程は危ないところだったな」
チャイムが鳴ると、後ろの席に居た前田が話しかけてきた。前田 憲之俺とは違う意味で浮いた存在。男子にも女子にも敬遠されているが、それは彼が別の意味で近寄りがたいからだ。その独特な性格と容姿で人を寄せ付けない。
細見の体躯、顔の半分くらいは覆うのではないかという大きい眼鏡で素顔を隠し、ワックスを大量にでもつけたのか、全体がテカテカの髪の毛、それをサイドから流していて、いわゆる七三分けの髪型になっている。
それにしても、まるで頭から油でもかぶったかのようなテカり具合だな、おい。
「何の話だ?」
「とぼけるな、その手提げに入っているモンスターの事だ」
すっとぼけてみるが、前田は言い逃れなどさせないとばかりに顔を近づけてくる。ちなみに同じクラスだから名前と顔は知っているが、まともに話したのは初めてだった。
どんな性格か分からない以上、迂闊に本当の事を話す訳にはいかない。
ってか、モンスターってなんだよ。どう聞いても猫の鳴き声だったろうと言いたいが、ここはグッと堪える。
「モンスターって何の事だ? 窓の下に野良猫でも居て、そいつが鳴いたのを聞き間違えたんじゃないか?」
「何を聞き間違えたと言うのだ? 僕はまだ猫などと一言も言ってないぞ?」
前田は意地悪そうな笑みを浮かべて、さらににじり寄ってくる。
しまった、言わなくいい情報をつい口走ってしまった。
「どうやら、語るに落ちたな。案ずるな、誰にも言わない」
前田は接近していた身体を離すと「フッ」と、芝居がかったような仕草で笑う。
「……本当か?」
「あぁ、それどころか、いいものを見せてやる」
「いいもの?」
***
昼休み、俺は前田に連れられて別棟にある部室棟の方までやって来ると、空き教室に案内された。中はいつも使っている教室と同じ配置だが、机や椅子など物が無い。カーテンは閉め切られていて、今日の空模様も相まって中は薄暗く感じる。
ここは一体何なんだ? 前田はいいものと言っていたけど。ちなみに猫はまだ寝ている。あの後は変に鳴く事もなかったので、怪しまれる事はなかった。と、言いたいが、クラスの何人かは俺を見ながらひそひそ話していたので、おそらく怪しまれてはいるんだろうな。
「さぁ、遠慮せず入りたまえ」
「あ、あぁ」
言われるがまま足を踏み入れるが、やはり何も無い。こんな場所で一体何をしようと言うのか? 疑問に思っていると、前田が室内の真ん中辺りで屈んで床を触っている。
「何してるんだ?」
「静かに。誰かに見られたら大変だ」
キョロキョロと辺りを見回し、ポケットから出した銀色の小さな鍵を床に差し込んだ。すると、床だと思っていた場所の一部分が、ギギギッと鈍い音を立てながら上へと開いていく。
例えるなら床下収納のような、隠し扉のようなそんな感じ。人が一人余裕で通れるくらいの大きさだ。
「さ、中へどうぞ」
底が見えないような暗闇、ご丁寧に脚立があって、そこから下へと行けるらしい。
恐る恐る脚立に脚を掛けて、ゆっくりと下へ降りていく。やがて地面に足がつくと、上から前田も降りてきた。前田は暗闇の中だというのに、まるで見えているかのような動きで明かりを点ける。チカチカと数秒点滅してから蛍光灯が辺りを照らす。
「お、おぉ……」
「驚いたか? 僕の秘密基地さ」
前田は少し得意気に鼻を鳴らして、そう言う。
広さは六畳くらい。本などが床に積み上がっていて少し雑然としている気はするが、他に物が無いせいか意外に広く、部屋の周りは壁になっていて出入口は降りてきた上の扉しかない。前田の言う秘密基地という言葉はピッタリだと思った。
「半年前に偶々、僕がここを発見してね。以来、ここを部室として使っているんだ」
「部室?」
「あぁ、人間観察研究部。略して人研だ」
前田の口から意外な言葉が飛び出すが、いまいち状況が掴めない俺は反応に困ってしまう。ここを俺に見せてどうしようというんだ?
「ふふふ、不思議そうな顔をしてるな。ここは君のモンスターを隠すのに絶好の場所だと思わないかい?」
「だからモンスターじゃな——」
……待てよ。もしこの場所を使えるなら、授業中にビクビクする事もないじゃないか。登校したらここに預けて、休み時間に様子を見に来る。んで、帰りは連れて帰る。もし猫を実際に見てみたいとか、触ってみたいなんて人が現れたらすぐにでも対応出来るし、良い事尽くしじゃないか。
「な、なぁ、相談なんだが、ここに猫を預けてもいいか? 俺が授業出てる間だけでいいんだ」
「ふふ、構わないよ。ただし、条件がある」
俺が頭を下げると、前田はテカテカに光った髪をかき上げながら——
「うちの部に入ってもらいたい」
その条件を提示した。
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