コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 短編集 ( No.11 )
- 日時: 2016/04/24 21:04
- 名前: 納豆 (ID: D2NnH/3T)
 「39.4度。かなり高熱だな」
 体温計を見て、苦笑を浮かべる彼。
 体が燃えるように熱くて、妙に息苦しい。
 息が荒い私に彼は布団を掛け直した。
 かすかに開く目に映ったのは、彼が笑顔を浮かべたあとリビングに向かおうとしている背中。
 「えっ…ちょっと待って、行かないの…?」
 やっとの思いで出た私の声は掠れていて、のどに強い刺激を与えられて酷く咳き込んだ。
 彼は手に銀紙に包まれた風邪薬と、水の入ったコップを持ってきてくれた。
 「いや、そんなに咳き込んでるし行ける状態じゃないだろ」
 私の背中に手を回し上体を起こさせた。
 彼は薬を銀紙から押し出して、私の口に近づけた。
 私が薬を口に含むと、
 「ほれ」
 とコップを私の手に持たせた。
 私は少し情けない気持ちでコップの中の水を口に放り込んだ。
 座っているだけなのに身体が重い。
 久々に発症した風邪が重症なものだと思い知った。
 「…今日は…2年目の…」
 『記念日』。
 そう言い終わらないうちに彼は、
 「ほんっと。何でこんな時に風邪ひくのかなー。茜っていつもタイミング悪いよなぁ」
 と嫌味ったらしく笑った。
 そう。今日は、私と相馬が付き合って2年目の記念日である。
 しかし、まだ記念日をまともに祝えたことがない。
 去年の1年目の記念日も、私が感染症にかかって家から出られなかった。
 今日も本来は遊園地に行くつもりだったのだが、私が風邪を拗らせて高熱を出してしまった。
 だから相馬に嫌味っぽく言われるのは仕方がない事なのだが、やはり少しだけ悔しい。
 「ま、今日は大人しく寝とくんだな」
 相馬は薬が入っていた銀紙をゴミ箱に放り投げ、コップを持ってリビングへと行ってしまった。
 「…」
 上体を寝かせ、手のひらを額に当てた。
 自分の身体も熱いせいか、額は特に熱いこともなかった。
 しばらくボーッとしていると、キッチンの方から水の音が聞こえてきた。
 「…え、相馬、なにして…」
 相馬は私の家の物なのにも関わらず、流し台に溜まった食器を洗ってくれていた。
 「え…いいよ、やんなくて。看病してもらってるんだし…」
 「いや、でもすごい食器の量だったし」
 そうだ…私はかなり面倒臭がりな上に、昨日から熱っぽくて家事を全て放ったらかしにしていたのである。
 昨日まで流し台に溢れるくらい食器が溜まっていた状況を思い出すと、あまりの情けなさに苦笑いを浮かべた。
 「なんか…すみません…」
 「こういう日があってもいいんじゃない?というか去年もだったけど。
 まぁ茜が熱出してる時、俺にしかわからない楽しみがあるからね」
 怪しい笑みを浮かべる相馬。
 私はその相馬の言葉の意味がわからなくてキョトンとしていると、
 「あー無意識なのかな?茜が寝てる時、かなり素直なとこあるよ?
 寝言で俺の名前呼んでたり?俺が移動しようとすると手掴んできたりね」
 相馬はクスクスと笑いながら食器を洗っている。
 その時込み上げた原因不明の腹立ちと、妙に身体と顔が熱くなったのは、風邪のせいにしておこう。
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 "風邪"
 岩澤 茜 Akane Iwasawa (23)
 本城 相馬 Souma Honjou (23)
 久々の更新です。
 相馬みたいな家事してくれる彼氏ほしいなぁ
