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- 秘密
- 日時: 2020/07/02 17:37
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
- ここは皆の秘密基地。 
 そこに響く彼女の歌声。
 これは彼女と彼女を取り巻く皆の物語———————
 〜・目次・〜
 序章
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 136章
 >>644->>647
 137章
 >>648->>651
 138章
 >>652->>655
 作者の言葉
 >>401
 作者の言葉 2020.7.2
 >>656
 *参照10000 有難うございます*
 これは自分の案を組み合わせて作ったオリジナルストーリーです。
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- Re: 秘密 ( No.647 )
- 日時: 2017/02/01 14:21
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
- 「馬鹿みたいだ。」 
 長く続いた話が、佳境に差し掛かった。
 溜め息をつくように、呆れたように。
 小さくこぼす。
 「私が必死にやってきたことは、自分の首を絞め続けるだけだった。」
 周りを傷つけ。
 自分も傷つき。
 やっと手に入ったと思ったものは。
 残酷な現実だった。
 「私はもう充分だよ。」
 精一杯頑張れた。
 圭の世界の中心にいられた。
 同じ場所で笑いあえた。
 苦しくても。
 確かに、私がやってのけたことなんだ。
 「リンやマリーのお母さんたちを見て、手放そうって決心したんだ。
 残酷な優しさを発揮して、例え圭が傷ついても構わないって。」
 あー…
 最後の最後まで、私はどこまでも自分勝手で救いようがない。
 「我が儘に付き合わせて、ごめんね。」
- Re: 秘密 ( No.648 )
- 日時: 2017/02/14 23:06
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
- 〜・137章 違う道を歩いて・〜 
 「それを言うなら…僕だって充分我が儘を言ったよ。」
 アリスの傍にいたいって。
 傍にいて、気付かぬうちに傷つけていたんだから。
 アリスにとっては、自分と一緒にいることは辛いことだったのかもしれない。
 どう見ても違う価値観。
 世界そのものの見方が違う。
 一緒にいると、アリスが自身のことを嫌いになってしまうんじゃないかって。
 それくらいのことは、考えたことがある。
 だからこそ。
 「アリスが自分のこと、好きになっても良いんだって。
 そう思えるくらい、アリスの分までアリスを好きでいようって思ったんだ。」
 いつだってアリスのことを考えて。
 それはとても贅沢なほど、至福な時間で。
 アリスさえいればって、何度も思った。
 「でもね、アリスのこと。
 10年前にかけられた言葉だけで、好きになった訳じゃないんだよ。」
 ・・・人間らしさを誇って・・・
 その言葉だけじゃない。
 10年前の言葉だけじゃない。
 「…そうだよね。
 圭は昔の私だけじゃなくて、今の私もずっと見ててくれてたもんね。」
 小さくアリスも言葉を返す。
 へへっ、と照れたように笑った。
 「でも、不安にさせたのは僕の過失だから。
 無茶させたのも、諦めたのも、疑わせたのも、全部。」
 ううん、ってアリスは隣で首を横に振る。
 金色の髪が、小さく揺れた。
 「きっと圭がどれだけ想ってくれていても、変わらない。
 もし不安にもならず、無茶せず、諦めず、疑わずにいられたら。
 今よりずっと弱くなってたと思うし、そんな万能な圭を好きにはならなかったと思う。」
 ああ。
 確かにそうかもしれない。
 不思議だ。
 まるで懺悔する様に、お互いの過ちを吐露しているのに。
 気持ちはひどく、穏やかだ。
 お互いの気持ちを曝け出して、傷つけたことにも気付けたのに。
 気分は良い。
 「そんな万能な圭だったら、きっと恐れ多かったよ。」
 アリスも軽口を返した。
 彼女の顔も、笑っていた。
 穏やかに、幸せそうに。
 「圭のこと好きになったのは、きっと不完全な所もあったからだよ。
 色々あったけどさ。圭のこと好きで大事だったってところも、忘れないでね。」
 気分は穏やかだ。
 彼女を傷つけ、傷つけられた。
 なのに。
 「だから、もう良いよね。」
 うん、と静かに返す。
 その先の言葉は、なんとなく分かった。
 「違う道を歩こう。」
- Re: 秘密 ( No.649 )
- 日時: 2017/02/19 17:30
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
- 圭のことが、好きだった。 
 エリスから聞いていた話でも、一番多く出てきた名前で。
 始まりの男の子、なんてふざけて言っていたっけ。
 圭と出会ってから私は変わったと。
 初めてエリスが、圭の話をした時。
 それは私が膝を抱えながら、公園で時間が過ぎるのを待っていた時だった。
 隣に腰掛ける人がいて、ふっと視線をやるとエリスが艶やかに笑っていた。
 小学校高学年の頃だったかな。
 普段は静かに笑いながら、用件だけを告げに来ていた。
 最後の最後に、体には気を付けろよとだけ言っていたのを覚えている。
 それがこの時は、用件を切り出すこともなくただ隣に座っていた。
 家に帰るのが嫌で、外でただ歩いたり、疲れたら座ったり。
 気ままに、それなりに気晴らしになった。
 でも、外でいかに楽しく過ごしても。
 いつかは家に帰らなくてはいけない。
 それが辛くて、少しでも家にいる時間を減らそうと仮眠も外でとった。
 幾つの時からだったろう。
 気付いたら、そんな生活だった。
 丁度その日は、前日の夜に家の人に酷い八つ当たりをされて。
 ただ帰りたくないと、死にたいと、心の底から呪っていた。
 だから、用件を告げないエリスを不審に思いながら。
 死ぬことも許されないのかと、思ったことを覚えている。
 エリスがいれば、私は死ねない。
 「…去年のことなんだけどね。アリス、覚えてる?」
 出だしはそんなものだったと思う。
 私はその頃は幼い頃のことしか覚えていなくて。
 アニエスでのことは覚えていたけど。
 圭たちのことだけがすっぽり抜けている状態だった。
 気付いたら、10だか11歳になっていた。
 戸惑いはしたけど、知識の点で困らなかったし。
 そういうものだと思っていた。
 「…覚えてないよ。知ってるでしょ。」
 気付いたらアニエスからここに来ていて、学校に行っている。
 辛いことが多かったけど、それでも人と感覚が違ったのか。
 仕方ないことだ、と冷めた目で見ていた。
 食事を抜かれるのは慣れていたし、基本は家の外で過ごしていたから。
 家の中で殴られたり、無理矢理酒を飲まされなければ良い方だった。
 「あのね、いいこと教えてあげる。あんたには好きな人がいたんだよ。
 しかも4、5歳の時からずっと。すっごい一途で初々しかった。」
 「…なにそれ、意味分かんない。」
 本をたくさん読んで、でも私には共感できないことが多かった。
 感情というものを表現する術を身につけるタイミングを逸したのだ。
 痛い、辛い、嫌だ、とは思っても。
 人が持つような温かな気持ちは分からなかったし。
 自分が持つことはないと思っていた。
 私の心は穏やかで、いつも何かを諦めていて。
 いつ死んでも構わないと言わんばかりに、どこか投げやりだった。
 「ほんとなんだよね〜、これが。
 私も目を疑っちゃったし。でも、すっごい幸せそうだった。」
 そんな自分を、想像できない。
 エリスの性質の悪い冗談だと思った。
 「出逢ったのは、4年前かな。4年間ずーっと一緒にいたんだ。
 会ったのはお屋敷で…相手の男の子が窓から飛び込んできた所から。」
 「…窓から?」
 「すっごいお転婆さんでしょ?
 今のあんたみたいにお腹をすかせてて、食べ物を探していたの。」
 その男の子と遊ぶようになった、という所まで話すと。
 エリスは席を立って、からかう様な笑みを浮かべて帰っていった。
 続きはまた今度ね、と後から電話で告げられた。
 それからエリスは来る度に、少しだけ“ケイ”と言う男の子の話をした。
 エリスが来るのは大抵私の携帯が壊れた時だった。
 アニエスから支給された携帯で、家に帰る前と出た後。
 電話する様に言われていた。
 単なる生存確認で、涼風に来てからずっと続く習慣だった。
 でも、家人は乱暴な人が多かったので壊されることもよくあった。
 だからエリスは月に1度か2度。
 多ければ週に2回。
 携帯を新調しに来ていたのだ。
 会うたびに話をせがむようになった。
 輝くような物語に、耳を傾け。
 家に帰ってからもずっと反芻していた。
 エリスの話は抽象的で、彼らが今どこにいるのか。
 一緒にいる時にどんな会話をしたのかも結構曖昧で。
 伝わってきたのは、彼らは優しい人で。
 私自身もその時幸せそうだったことだけ。
 エリスの作り話かもしれないと思っていたけれど。
 それでも、本当にいたらってずっと夢を見ていたんだ。
 生まれて初めて見た夢だった。
 その夢は私は励まし、圭たちに再会するまでずっと続いた。
- Re: 秘密 ( No.650 )
- 日時: 2017/02/23 23:29
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
- 「圭のこと、本当に好きだった。 
 でも、苦しくても…逃げた先に圭といられる喜びが合っても。
 私はここにいたい。確かにそう願ったんだ。」
 これはきっと、本当の言葉だ。
 今のアリスが考えた、偽りのない言葉だ。
 「僕もきっと、アリスに恋をしていた。
 子供みたいに幼くて、不器用で、恋に酔っていた所もあったけど。」
 「「それでも」」
 言葉が、重なる。
 顔を見合わせて、笑う。
 「「きっと恋をしていたんだよ」」
 胸の中は穏やかな気持ちで満たされている。
 温かくて、静かで、後悔も迷いも存在しない素直な気持ちが。
 口から空気を震わせ、紡がれている。
 「「君に恋をして良かった」」
 同じことを想いながら。
 くすくすと微笑みながら。
 「ありがとう」
 彼女が告げる。
 「ありがとう」
 それに応える様に、僕も告げる。
 幼くて、未熟な恋でも。
 とても大事な思い出だ。
 アリスに恋をしなければ、母とのことも、姉とのことも。
 一生、背負いながら生きて行くしかなかった。
 アリスの言葉で、それがとても軽いものに感じられた。
 感謝も、愛しいと思ったことも。
 触れたいと、願ったことも。
 全て本当。
 彼女のことを、全然知ることが出来なかった。
 子供の様に駄々をこねて、相手のことを心から慮ることが出来なかった。
 そんな子供みたいな恋だけど。
 して良かったと思える、そんな恋だった。
 後悔も未練もない。
 彼女も、自分の言葉で背負うものが軽くなったと。
 そうやって、自分に偽りの恋をした。
 笑顔で駆け寄ってきてくれた彼女も。
 圭、と呼ぶ彼女の声と笑顔に。
 本当に恋をしていたんだ。
 お互いの顔を見る度に、嬉しくて幸せな気持ちにさせてくれた。
 だから。
 今度は。
 「今度こそ、一緒に生きていきたい。」
 いきなり恋人とかは無理だと思う。
 気持ちの整理も出来ない。
 ニセモノの恋は自分たちを幸せにしてくれた。
 温かな気持ちを授けてくれた。
 もう、沢山貰った。
 「好きになる所から、始めさせてください。」
 今度こそ、本当の恋人になりたい。
 相手のことも、自分のこともちゃんと分かって。
 弱さも醜さも、強さも温かさも抱きしめて。
 それでも、迷いなく好きだと答えられる様に。
 「喜んで」
 幸せで堪らないという様な、朗らかな笑顔で。
 彼女は返してくれた。
- Re: 秘密 ( No.651 )
- 日時: 2017/04/05 13:26
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
- 「私はここで、アニエスを助けるよ。」 
 「僕は涼風に戻って、夢を見つける所から始めるよ。」
 お互いの小指を絡ませ、微笑みあう。
 少し距離を置こう。
 お互いのことだけでなく、周りもちゃんと見えるように。
 もう理想で誰かを傷つけないように。
 「もし、恋人になれなくても良い友人くらいにはあり続けたい。」
 好きになれてよかった。
 こんなこと、聞いてくれるのは圭だけだったと思うから。
 「そうだね。傍にはいたい。」
 こうやって微笑み返してくれるのは、圭だけだと思うから。
 「今度会った時は、お互いが見てきた色んな話をしよう。」
 「きっと、楽しいだろうなぁ。」
 くすくすと笑い合う。
 今までは笑いあっていても、心地よさの中にチクチクとした痛みが潜んでいた。
 痛みは圭と別れた後に、じわじわと増していって何時も私を苦しめていた。
 「私の本心を知った時、どう思った?」
 少し、興味がある。
 圭のことだから馬鹿正直にショックを受けて、自己嫌悪に陥っていそうだ。
 見ただけでも、数日で体重をかなり落としてるみたいだし。
 「アリスがいないと、こんなに駄目なんだと思った。
 アリスがいない未来を生きている自分を想像できなかった。」
 ストレートな言葉に、素直に恥ずかしくなる。
 そうだ。
 最初から隠さずに話していたら。
 誰も傷つかなかったのかもしれない。
 でも、今は傷が愛おしい。
 言葉の1つ1つがくすぐったくて、自分の中に温かく降り積もっていく感覚がある。
 「…なら、これからも頑張れる。」
 私の力だけで、圭の大事な人になれた。
 結果が最悪なものだったとしても。
 私の存在を、確かに刻みつけることが出来た。
 「…ちょっと意外だった。
 私が望んでやったことだけど、ここまでとは思わなかった。」
 「自分でも驚いた。でも、なにもかもがアリスの思惑通りだと思わないでね。
 素のアリスだって、少しは見てきたし。自分で意思で、好きだったんだから。」
 照れくさそうに、子供みたいに。
 頬を掻きながら笑っている圭を見ている。
 ちょっとだけ私より高い背丈。
 いつも軽く見上げて、すると直ぐに目が合う。
 「圭はいつも驚かせてくれる。圭の偉大さを、今になって思い知ったよ。」
 救ってくれないことばかりを嘆いていたけど。
 人を助けるって言うのは凄く大変なことなんだ。
 「偉大でも何でもないよ。ただ、馬鹿だっただけ。」
 目が合うと決まって圭は笑ってくれて。
 私も自然と笑みが零れる。
 「なら、私も圭みたいな馬鹿になりたいよ。」
 「貶してる?」
 「褒めてはないけど…貶すってほどでもないよ。感心しただけ。」
 「結局どっちなんだか…」
 未来の約束をした。
 それはきっとこれから先、自分たちを縛り、苦しめることもあるだろう。
 でも。
 この約束があれば。
 圭と何時でも繋がっていられる。
 頑張れる。
 きっと。
 幸せになる為の、力になる。
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