コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 同居人は、旦那様。
- 日時: 2015/09/16 16:44
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
 皆様、初めまして*
 以前は違うサイトで小説を執筆させて頂いてました、悠。と申します。
 今回こちらの方で活動させて頂くのは初めてで、とても緊張してます(
 精一杯頑張らせて頂きますので、宜しくお願いしますっ*
 *、ご注意
 誠に勝手ながら、荒らしや成りすましは勿論の事パクリなども禁止させて頂きますがご理解下さい。
 また、主は呼び捨てやタメOKですので気軽に声を掛けて下さいね!
 更新はスローペースですが、温かく見てやって下さい(*´`*)
 *、あらすじ
 世界的に有名な会社のお嬢様と、これまた有名会社の跡取り息子。
 そんな二人に訪れた、「政略結婚」という名の奇跡——!?
 私なりに頑張るので、宜しくお願いします!
 アドバイスなど、随時受付中なので是非どうぞ。
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- Re: 同居人は、旦那様。 ( No.26 )
- 日時: 2015/09/23 10:45
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
 【 第十一話 】
 赤くなった目尻を押さえて、教室の扉に手を掛けた。
 相変わらず私に視線は集中しているけれど、気にしないフリをする。
 席に着いて、スクールバッグから教科書やノートを取り出す。
 机の上でとんとんと叩いて、机の中にしまい込む。
 教室内には、私に向けられた刃のような噂話がこだましている。
 本当は誰と結婚したのかとか、実は理事長の娘なんじゃないのかとか。
 根拠がないから、腹も立たないし悔しくもない。
 ただ頭を巡るのは理人の事だけで、胸を嫌な感情が渦巻いてくる。
 「はい、皆さん席に着いて」
 担任の先生の声がして、皆私の方を見ながら席に着く。
 授業のチャイムが鳴って、机から数学の教科書を引っ張り出した。
 でも、授業なんかには集中できる筈がなくて。
 いつでも、どんな時でも考えてしまうのは理人の事で。
 下を向いて、堪えていないと零れそうになる涙は酷く冷たいもの。
 聞いたばかりの声を探して、見たばかりの顔を思い浮かべて。
 ——また、哀しくなる。
 愛しく思ったのが、遅過ぎて。
 こんなにも相手を大事に、思えた筈だったのに。
 もう本当は、気づいていたのに。
 ただの゛恥ずかしさ ゛で、堪えたりなんかして。
 こんな私を、理人はずっと、待っててくれていたのに。
 
 「理人……っ」
 教室に響く雑音に紛れて絞った声は、前に言わなければいけなかった。
 この言葉は絶対に、届いたのに。
 授業が終わって、私は教室を飛び出していた。
 長く続く廊下を走って、理人のいる芸能科まで。
 早く、この想いを貴方へ伝えたくて。
 今すぐにでも、伝えられなかった言葉を口に出して。
 芸能科の楠色の重苦しい扉に手を掛け、窓から覗いた。
 理人の姿を探すと、すぐに目線の先にいた。
 「理人くんって、本当格好いいよねえ」
 「彼女とかいるの? あ、普通科の二条院さん?」
 「えっ、私幼馴染って聞いたんだけど」
 沢山の、モデルのように手足も長くお人形のように可愛い子に囲まれ。
 腰には腕まで回されて、何だか微笑んでいる理人がいた。
 女の子達も、手の平を唇に当てながら微笑んでいて。
 理人の周りにいない女の子達でさえも、じっと理人の事を見ていた。
 足が、ぶるぶると震えだす。
 背筋を冷や汗が伝うのが分かって、その場から離れる。
 走って、走って、走って。
 教室から鞄を掴みとり、気がつくと靴箱の前に来ていた。
 頬をはらはらと伝い落ちていく涙を、拭うこともせず。
 靴に履き替えて、足のスピードをぐっと速めて走り出した。
 誰もいないと思っていた、あのアパートへと。
- Re: 同居人は、旦那様。 ( No.27 )
- 日時: 2015/09/23 12:02
- 名前: 村雨 ◆nRqo9c/.Kg (ID: HTruCSoB)
- こんにちは、悠。さま(・ω・) 
 先日は私の小説にコメント頂きありがとうございました。
 まずタイトルが印象的で、一気に心掴まれました(
 内容もきゅんきゅんする台詞が多くて、にやけながら読ませて頂きました←
 翼くんのツンケンした感じは好みですね!
 実はカレー作りが上手かったり、他の女の人のことが気にかかっていたりというギャップがまた魅力的です+*
 でも、茉彩ちゃんには理人くんとよりを戻して欲しいような気もしますが……
 彼女がどちらを選ぶのか、とても気になります(^ω^*)
 更新頑張って下さい!
- Re: 同居人は、旦那様。 ( No.28 )
- 日時: 2015/09/23 12:57
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
 【 第十二話 】
 坂道を登って、息を切らしながらあのアパートまで足を進める。
 制服から、部屋の鍵を取り出し不意に目の前を見たその瞬間(とき)。
 部屋の前に佇む、女の子が一人そこに立っていた。
 肩まで伸びた艶のある黒髪に、陶器のような白い肌に並ぶ大きな瞳。
 高い鼻筋に、妖艶にゆるく円を描くような唇。
 身長は私と同じくらいの高さで、制服は聖明学園のものではなかった。
 「……えっと、何か御用でしょうか」
 「あ、あの私——鳳 古都(おおとり こと)って、いいます……」
 頭の中で、絡まる記憶。
 確かこの前の夜中、翼さんが私に言ってきた名前だ。
 誰なのかと聞いても、決して答えてはくれなかった名前。
 彼女はこてんと首を傾げて、何だか困っているような顔をした。
 取り敢えず部屋のドアを開いて、古都さんを中へと通した。
 古都さんは中をきょろきょろと見回して、たまに溜め息を吐いた。
 「あの、翼さんの……彼女さんとかですか」
 「そ、その……前は、そういう感じでした」
 何だか気恥ずかしそうに話す彼女は、誰が見ても美しいと思える。
 この人が元カノだなんて、本当にお似合いだったろう。
 でも良く考えてみれば、可笑しな状況である。
 今、形だけでも私は翼さんの妻な訳だし、多分私に良い気はしない。
 有りがちな展開で、別れてとでも言われたらどうすれば良いんだろう。
 断ったら刺されるのだろうか、ああ、きっと大事になってしまう。
 「翼って、何時に帰ってきますか?」
 「へ? あの、それが分からなくて……」
 そうですか、と頷く古都さんはそれまで此処にいていいか聞いてきた。
 私も頷き、小さな机の元へと案内した。
 翼さんが帰ってきたのは、七時を回った頃の事だった。
 がちゃりと鈍い音が部屋に響いて、扉がゆっくりと開いた。
 扉の隙間から見えた顔はいつも通りだったけど、古都さんを見て歪み。
 古都さんも苦しそうに、でも無理矢理に笑った。
 (何が、あったんだろ_____________?)
 私は翼さんと古都さんを二人にする為に部屋を出た。
 近くのコンビニまで行こうと、曲がり角を曲横切ると誰かとぶつかる。
 星が煌めく夜、甘栗色の髪が月夜のヒカリに反射して。
 私よりも高い身長を屈めて、驚いた顔で私を見つめてきた。
 「……っ、理人」
 「茉彩、」
 こんなにも苦しそうな理人の顔なんて、見た事がなくて。
 胸がどうしようもなく波打って、会いたくて堪らない思いが溢れる。
 気がつくと、理人の黒いTシャツを握り締めてしまっていた。
 黒い服の生地に、ぱらぱらと私の涙が散らばる。
 ずっと堪えてきた筈だったのに、会っただけで涙が零れ落ちる。
 暫くそうしていると、理人の方から腕を離された。
 顔を上げると、理人はさっきよりも辛そうな顔をしていた。
 「もう、近づかないからさ」
 「違っ……理人、待ってよ——!」
 いつだって私が呼べば、振り向いてくれた。
 いつだって私が転べば、待っていてくれた。
 もう、姿が見えない。
- Re: 同居人は、旦那様。 ( No.29 )
- 日時: 2015/09/23 13:06
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
 *、林雨 さま
 わわわ……!そんなご丁寧にありがとうございます(*^_^*)
 心掴まれるだなんて、にやけるだなんてえええ((
 翼の人気が多いですねえ、くっ……腹黒なくせに←
 ギャップは良いですけどね、でも料理は上手だなんて、女子力(
 どちらを選んでもイケメンだなんて、もうそこ代わって茉彩!←
 更新、精一杯頑張らせて頂きますね*
- Re: 同居人は、旦那様。 ( No.30 )
- 日時: 2015/09/23 15:33
- 名前: 悠。 (ID: 0a987INq)
 【 第十三話 】
 アパートに着くと、古都さんはもう帰って翼さんだけがいた。
 部屋に入ると、もう夕飯の用意がされていていい匂いが鼻を擽った。
 でも翼さんはいつものように毒を吐く事も、冷たくする事もなく。
 ただ黙って、食事の支度をしていた。
 「……あの、大丈夫でしたか」
 「関係ないだろ」
 勿論、話し掛ければいつものような毒が返ってくる。
 脳裏に刻み込まれた、さっきの古都さんの辛そうな顔が残っている。
 どうしても、忘れられなくて。
 模索したくはないけれど、色々重なってまた泣きそうになる。
 夕飯を食べ終えると、翼さんはお風呂場へ行った。
 洗いものをしようとソファを立った時、彼の携帯が鳴った。
 「_____新着メール……古都、?」
 こころでは、駄目だと分かっている。
 でも、携帯を持つ手が小刻みに震えだして。
 気がつくと指で画面を追っていて。
 受信ボックスに走らした人差し指を、滑らした。
 その内容を読もうとした、瞬間だった。
 不意に扉が開いて、翼さんが隙間から顔を出した。
 頭が、真っ白になる。
 案の定、翼さんも驚いた顔をした。
 
 「……古都は、元カノで鳳 孝英(おおとり たかひで)の一人娘」
 「凄い、家系ですね」
 鳳 孝英というのは有名な国会議員で、支持率も高い。
 子供がいるのは知っていたけれど、まさか古都さんとは思わなかった。
 私が呆気にとられていると、翼さんはまた話を続けた。
 古都さんの事を話す彼の姿は、嬉しそうだったのに悲しそうだった。
 お風呂から出たばかりで濡れた彼の黒髪に、いいシャンプーの匂い。
 あまり私に見せた事のない顔で、少しどきりと胸が鳴った。
 
 「一年前、俺たちは政略結婚した」
 「えっ……?」
 「俺は、古都が本当に好きだった」
 「好き゛だった ゛———?」
 私が首を傾げていると、翼さんは顔を歪めて話し出した。
 とても辛そうに、私と会う前の事を。
 月夜のヒカリが美しく、彼の白い顔を綺麗に照らした。
 また、私の胸は煩く鳴りやまず。
 でも胸の奥底では相変わらず、理人の事を考えている自分がいて。
 そんな自分が最低に思えて、また涙が零れそうになる。
 さっきの理人の顔や声を思い出すだけで。
 どうしようもなく苦しくなって、翼さんの顔を見れなくなる。
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