コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ゴーストヘルパーズ
- 日時: 2016/03/20 03:32
- 名前: 北風 (ID: baOn2Ld/)
- 初めまして北風と申します。 
 ここに小説をあげるのは初めてです。
 この小説はもともと別のチャットサイトにあげていたものです。
 それを少し修正し書き直したものがこの作品です。
 初心者だし、初めて書いた小説なのでグダグダな所もありますが、どうか見限らずに読み続けてくれるとありがたいです^^
 あと、コメントやアドバイスは これでもかー!ってくらい欲しいです!誰かに褒められていないとやる気がすぐに無くなる面倒な人間なので(笑)
 少し辛口なアドバイスでも喜んで受け取らせて頂きます。
 気が向いたら何か書いて下さると有り難いです。
 まだまだ未熟ですが、私の小説で少しでも多くの方に楽しんでいただければ幸いです^^
 この小説は基本真面目に見せかけたコメディーです!
 どうぞ軽い気持ちで読んで下さい!
 ≪プロローグ≫
 俺は幼い頃から、幽霊が見えた。
 3歳くらいの頃から何も無い所に向かって喋りだすようになり、お蔭で幼稚園では馴染めず、仲間外れにされていた。当時の俺には普通の人間と幽霊の見分けが付かず、どうしてみんな遊んでくれないのか理解できずにいた。両親にも気味悪がられ、俺の唯一の理解者は9つ歳の離れた姉だった。
 「宗哉が見ている人たちは、可哀そうな人たちなんだよ。」
 「宗哉にだけ見えるのは、優しい心をもっているから。」
 「その優しい心で、可哀そうな人たちを助けてあげて。」
 優しい姉だった。
 本当に、優しい姉だった。
 そんな姉と暮らしていたのだから、俺はとてもとても穏やかな性格に…
 なってもよかった
 なるはずだった
 ならなかった
 まあ、つまり、端的に言うと、
 …グレたのだ。
 ※
 俺、小森宗哉は中2で完全にグレた。
 いくら姉が優しかったとはいえ、俺に異常なまでの霊感がある事は変わらない。幼稚園から小学校、中学校まで進学しても、俺には一切友達ができなかった。それどころか、中学生になってからはいじめられ始めたのだ。「幽霊男」「近づくと呪われる」などと陰口を叩かれ、ついには教科書を盗まれたり、靴を隠されたりした。
 中1の冬、鞄を池に投げ込まれた時、とうとう俺の怒りが爆発した。俺をいじめていたグループのリーダーを、思いっきり殴ったのだ。予想外にそいつは吹っ飛び、俺は両親の呼び出しと担任の説教をくらった。でもその事がきっかけとなり、なんといじめられなくなったのだ。
 それ以降、俺は強くなった。売られた喧嘩はすべて買い、他校の生徒ともやりあった。そしていつしか俺は町中の中学で最強の男になっていた。
 ※
 この春、そんな俺もとうとう高校生になる。そして上京し、1人暮らしをすることになったのだ。
 勿論勉強する気などさらさら無い。喧嘩する為に東京に来たのだ。入学先はゴリゴリの不良校。その学校のトップに立つつもりだ。
 その時は。
 まだそんな事を思っていた。
 あの現実を
 見るまでは。
 
 
 ≪プロローグ・完≫
Page:1 2
- ゴーストヘルパーズ 四話 ( No.6 )
- 日時: 2016/03/18 08:55
- 名前: 北風 (ID: baOn2Ld/)
- ≪4話≫ 
 この少女は今、何と言った?
 見えるの、と言ったよな。
 私が見えるの、と。
 この質問に答えるならば、イエスだ。
 ばっちり見えるし、やや一方的だが触れる事だって出来た。
 俺はしっからと少女に顔を向け、全身を隈なく観察した。
 うん、見える。ちゃんと見える。
 だが恐らく、
 俺だけだ。
 見えているのは。
 ………。
 少女との間に、長い沈黙が落ちた。
 先に口を開いたのは少女の方だった。
 「……やっぱり見えてるんだね」
 少女は嬉しそうな顔で俺を見つめた。
 「お前は……幽霊、なのか?」
 色々と聞きたい事や言いたい事があったが、俺の口から出てきたのはその一言だった。
 少女は一瞬ハッとして、その後少し寂しそうな顔をした。
 「そういう言い方もできるんだけどね…」
 ※
 少女は沖花桃菜と名乗った。
 彼女はやはりこの世の人間では無かった。
 だが、幽霊と呼ばれるのも嫌っていた。
 いきなり人生が終わって、どこにも行く事が出来ずにいたら急に異形扱いされるのだ。
 生きているか死んでいるかの差があるだけで、彼女もれっきとした人間だ。
 幽霊などと呼ばれて嬉しい分けが無い。
 あの泣き声はこの子のものだったのか……。
 何故か俺はそう確信できた。
 ……………………ん?
 なんーーか引っ掛かるものがあるぞ?
 あ。
 「お、おいお前…」
 「お前なんて呼び方はやめてよ。桃菜って呼んで」
 恋人か。
 「えーーと、桃菜……。桃菜の姿は普通見えないんだよな?」
 「うん」
 「じゃあ、触る事って普通はできる物なのか?」
 「うん。できるよ」
 「………さっき桃菜は俺にタックルかましてきたよな」
 「うん」
 「その時はまだ俺が霊感ある事を知らなかったんだよな……?」
 「うん!だって私、私のこと見えない人に対してもタックルしてるよ?」
 「……………何のために?」
 「ストレス発散!」
 怖いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 都会やっぱ怖いよおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 老若男女生死問わず怖いよおおおおおおおおおおおおお!
 俺が声も出せずに硬直していると、桃菜はずいっと距離を詰めてきた。
 「今まで誰も私に気づいてくれなかったの!ねえ、ここは何かの縁だと思ってさ!ちょっと相談に乗ってくれる?」
 …………………………………。
 …えーーーー。
 やだーーーーー。
 というのが俺の本心だ。
 だってこの子性格悪そうだし。
 つか十中八九悪いし。
 ……でも、
 泣いてたしなあ。
 ……………………………。
 「あー………聞くだけ聞いてやるよ」
 ※
 桃菜は去年の冬、事故で死んだらしい。
 その事自体には悔いはなく、完全に桃菜本人の不注意が原因だったそうだ。
 ただ一つ桃菜には心残りがあった。
 それは4つ歳の離れた兄だ。名前は春という。
 今年から高校生になるその兄は、優しいけど気が弱く、桃菜は高校で苛められないか心配していた。
 桃菜は自分が死んだあとも春の事を見守り続けたらしい。
 だが高校生になった春は初日から苛められ始めたという。
 「………その苛めをやめさせればいいのか?」
 てっきりそういう事だと思い、俺は桃菜の説明に口を挟んだ。
 だが桃菜は複雑な表情を浮かべた。
 「うん……それもあるんだけどね…」
 「他にも何かあるのか?」
 「………お守り」
 「?」
 「私がお兄ちゃんに作ったお守りが、苛めっこに取られちゃったの。どこに隠したか私にも分からなくて…」
 「取り返してきて欲しいのか?」
 桃菜は無言で頷いた。
 …………こいつ、結構可愛いとこあるな…。
 兄の為の手作りお守りか……。
 「……分かった。俺が取り返して来てやる」
 俺がそう言った途端、桃菜の顔が一気に輝いた。
 「良いの!?ありがとう!えーっとね、お兄ちゃんの学校は白前高等学校ってとこでね……」
 ≪4話・完≫
- Re: ゴーストヘルパーズ ( No.7 )
- 日時: 2016/03/18 08:59
- 名前: 北風 (ID: baOn2Ld/)
- ≪5話≫ 
 次の日の終礼後。
 俺は雪と一緒に隣のクラスを覗き込んでいた。
 「んん〜?沖花ってどれだ〜?」
 俺は桃菜から聞いた沖花春の特徴を思い出しながら目を細めた。
 「沖花って………どんな…奴……?……」
 雪が訊ねてくる。
 「確か、身長155cm前後…茶色でやや天パの髪に…童顔で中性的な顔立ち…だそうだ」
 教室中を見回してもそれらしい人物はいない。
 「今日は休みなのか?」
 「………そうなの、かも……」
 俺達は踵を返し、自教室に戻ろうとした。
 だが、ふと視界の端に小柄な人影が写っている事に気づく。
 「……?…あ!」
 教室の扉の影に隠れておどおどしているその人物は、桃菜が教えてくれた沖花春の特徴を兼ね揃えていた。
 「おい、雪。もしかしてあいつかな?」
 雪に問いかけようと隣を見ると、そこには雪の姿は無かった。
 「え?……あれ…雪?」
 キョロキョロと辺りを見渡すと、いつの間にか雪は沖花春(?)の前に立っていた。
 「………おい……お前が、沖花…春…か……?……」
 いきなり声をかけられた彼は一瞬びくんと身を震わせると、ゆっくり雪を見上げた。
 「ひっ!」
 そして小さく悲鳴を上げると、何を思ったか急にその場で土下座した。
 「すいません!何か知らないけどごめんなさい!命だけは!どうか命だけはああああああああ!!!」
 唖然。
 こいつとんっでもねーへタレだ。
 しかしこの状況どっかで見た事あるな……。あれは確か数日前………
 俺が入学初日のできれば忘れたい想い出に思いを馳せていると、雪の困惑した声が聞こえてきた。
 「……え…ええっ?……な、…なんで……なんで、土下座……?」
 雪がオロオロしていると、沖花春は突然起き上がりダッシュで逃げ出した。
 「「えっ!?」」
 流石にこの行動は俺も雪も予想外だった。
 俺達は走り去っていく彼の後姿をしばし呆然と眺めていた。
 ……ええ〜〜〜…何あいつ〜〜……
 ビビり過ぎだろ〜〜
 悪の組織にでも追われてんの〜〜?
 ………って!じゃなくて!!
 「そ、雪!あいつ何か勘違いしてねーか!?」
 「あ、…う、うん!…みたい、だな………ちょっと追いかけてくる…!」
 そう言って駆け出す雪。
 ……いや、「駆け出す」と言うより「発射する」の方がしっくりきた。
 雪は20mはど離れていた相手にものの数秒で追い付き、減速できずにそのまま激突した。
 「ぐはあっ!」
 叫び声を上げて吹っ飛ぶ沖花春(?)。
 …………あいつ、内臓出たんじゃないかな…………。
 ※
 俺は昨日、桃菜と別れた後雪に連絡をとった。
 引き受けてしまったのは俺だが、相手は苛めっこだ。悔しいが俺1人で太刀打ちできるとは思えない。
 で、雪に助けてもらおうという結論に至ったのだ。
 電話口で聞いた雪の声は未だかつて無い程興奮していた。
 そりゃあ、幽霊の悩みを解決するなんてオカルト好きにとっては垂涎ものの出来事だ。
 本当に楽しみだったらしく、今朝俺が雪の家に行くと雪は玄関で正座して待っていた。
 俺がどんだけびっくりしたか分かってんのかあの野郎。
 ………まあ、その事は今は良い。
 とりあえず置いといて………だ。
 今は、俺達の目の前で蛇に睨まれた蛙みたいになっているこの少年をどうするか…が問題だ。
 ……どうしよう……。
 ビビらせた上、思いっきりぶつかって余計怖がらせちゃったよ……。
 この携帯のバイブ機能レベルで震えている少年の心をどう開こう………。
 いや、開けるのか?そもそも。もう無理なんじゃないか?これ。
 ………………………ネガティブになっちゃ駄目だ。やっと接触できたんだから。
 ……まずは俺達に敵意は無いという事を伝えなくては。
 「あ、あの〜〜〜」
 「ひぃぃっっ!」
 「お、落ち着け!別に俺達はお前に危害を加えるつもりは無いんだ!」
 「ふぇぇ………?」
 およそ男子とは思えないような情けない声を出して、彼は涙目でこちらを見上げてくる。
 「ま、まず俺達の話を聞いてくれないか?」
 ※
 彼はやはり沖花春だった。
 桃菜から気が弱いとは聞いていたが、彼は世間一般でいう「気が弱い」のレベルを超越したビビりだった。
 そのため俺達は沖花に話をちゃんと聞いてもらえるまでに一時間もの時間を要した。
 だが努力の甲斐あって、沖花はやっと心を開いてくれた。
 「えっと……つ、つまり死んだ僕の妹が幽霊になって小森さんに相談してきたわけですね?僕のお守りを取り返して欲しいって……」
 「…改めて纏めてみると信じられない話だとは思うが真実なんだ……」
 沖花はぽかんとした顔でこちらを見つめてきた。
 ……まあ、普通は信じないだろうな、こんな話………。
 「うん、信じてくれなくてかまわない。でもとりあえず、お前に言っておきたくてな……」
 「信じます」
 「えっ!?……あぁ…ん、ええっっ?!」
 あまりにあっさり言い切られたので、俺は少し動揺する。
 「信じますよ、小森さんの話」
 俺のそんな反応を見て、沖花はもう一度はっきりと言った。
 「え……?信じるの?あの、俺が言うのもなんだけど、何で?」
 「僕が妹に貰ったお守りを取られたなんて、面識の無い小森さんが知ってる分け無いじゃないですか。それに、小森さんは僕のお守りを取り返して来てくれるんですよね?そんな良い人を疑うなんて出来ません」
 そう言って微笑む沖花。
 —この子が女子だったらモテただろうになぁ—
 俺はそう思わずにはいられなかった。
 「………宗也…………」
 背後から唐突に声がした。
 振り向くと雪が鞄を持って立っていた。
 「………もう、5時過ぎだ………そろそろ帰ろう……」
 —こいつ、居たんだ………。
 ずっと何も話さないから存在を忘れていた。
 俺は腕時計に目を落とす。最終下校時刻の5時半まで後20分程しか無い。
 気が付けば周りに人は居なくなっていた。もう生徒は全員帰ったのだろう。
 「よし、じゃあ帰るか」
 そう言って俺が帰り支度を始めると、
 「待ってください!僕も一緒に帰りたいです」
 慌てて沖花も鞄を手に取った。
 だがバランスを崩してしまったようで、少しふらつく沖花。
 転びそうだったので手を取ってやると恥ずかしそうな笑みを浮かべつつ、
 「ありがとうございます」
 と礼を言ってきた。
 —この子が女子だったらモテただろうになぁ—
 ≪5話・完≫
- ゴーストヘルパーズ 六話 ( No.8 )
- 日時: 2016/03/18 09:01
- 名前: 北風 (ID: baOn2Ld/)
- ≪6話≫ 
 次の日、俺達は昼休みに屋上で作戦会議をすることにした。
 弁当を持って屋上に行くと、無人だった。
 まだ4月だ。冷えるので誰も屋上で飯など食わないのだろう。
 俺達にとってはその方がやり易い。なんせ苛めっこへの逆襲の計画を話し合うのだ。部外者はいないに越したことは無い。
 「確か2人は購買で買ってくるんだったな……」
 雪は俺と同じ一人暮らしで、ほぼ毎朝寝坊しているので弁当は持って来ていない。
 沖花は両親が共働きで、まだ小学生の妹の世話で忙しいらしく、同じく弁当は無い。
 弁当派は俺だけだ。
 雪達が来るまで、俺は屋上のフェンスにもたれかかって今後の事を考えていた。
 —まずは相手の情報が欲しいな……。顔も名前も知らないし。クラスは多分沖花と同じクラスだな。ん?
 ちょっと待てよ?苛めっこは一人とは限らないんじゃないか?
 普通苛めは多対一で行われるものだ。桃菜が言っていた「苛めっこ」が一人である可能性は低い。
 2人組みとかならばまだましだが、もし相手がグループだったらいくら雪がついてるとはいえ少しきつい。
 ……あれ?以外と難しいかもしれないぞ?本当に上手くいくのか?これ。
 何だか不安になってきて、俺はその場に座り込み溜息を吐いた。
 その時、屋上の入口のドアが開けられ、沖花が現れた。
 どうやら購買から帰ってきたようだ。
 ………ん?
 よく見ると沖花は財布を持ってるだけで後は何も持って無い。
 「おーい!沖花ー」
 手を振って声をかけてみるが、沖花はドアの前で立ち尽くしたままだ。
 「………?」
 俺は不思議に思い、沖花の元へ走り寄って訊ねた。
 「お前何で食い物持ってないんだ?購買行って来たんじゃないのか?」
 「………………弱肉強食」
 会話が成立しない。
 「沖花?何が弱肉強食なんだよ?」
 「…あそこはいくさばです…………」
 戦場。
 「………購買のことか?」
 沖花は無言で頷いた。
 ※
 基本的に高校の購買は昼休みに賑わうものだろう。
 だがうちの学校の購買の混み様は「賑わう」という言葉で表現出来ないレベルのものだ。
 通勤ラッシュ時の新宿駅と同等、又はそれ以上のものがある。
 恐らく沖花は購買の人口密度に負けて飯を買い損ねてしまったのだろう。
 しょんぼりと肩を落とす沖花に俺はそっと弁当に入っていたおにぎりを差し出した。
 一瞬躊躇したがおにぎりを受け取り、代わりに俺の手の上に100円玉を置く沖花。
 ギブ&テイク。
 なんて律儀な奴なんだろう。
 「……………強く生きろよ、沖花」
 沖花を励ましたつもりがなんか今生の別れみたいになってしまった。
 「はい…………どっかで聞いたことのあるセリフですが、ありがとうございます…」
 そう言って沖花はもぐもぐとおにぎりを食し始めた。
 と、屋上の扉が開く音がした。
 目を向けてみると、雪が入ってきたようだった。
 「よう、雪。沖花は購買で買えなかったらしいがお前はどうだっ……………」
 俺は言葉の途中で絶句した。
 「…………………あ……二人とも、来てたんだ………よお………」
 雪は呑気に挨拶をしてきたが、俺と沖花は彼の手元を凝視していた。
 「雪……………一応聞くが、それは購買で買ったんだよな?全部」
 「………?……うん……………」
 不思議そうに頷く雪。
 「あのなぁ、…………だったらその量はおかしいだろぉ!!」
 雪は両手に抱えきれない程のパンやおにぎりを持っていた。
 「……………え?……おかしいか?…ど、どこが?」
 こいつ、本当に自分がした事を分かっていない。
 「………うん。もういいから、とりあえずこっち来い」
 俺が雪に手招きすると雪はとことことやって来て、俺の隣に腰を下ろした。
 そしてもぐもぐと食べ始める。
 …………こいつの何が凄いって精神力だよな。
 沖花のような買えなかった奴らが居るというのに、平然とこの量買えるっていう精神力。
 「雪」
 「?」
 「うん…………俺は良いと思う………」
 「…………?あ、ありがとう………?」
 とりあえずフォローしておいた。
 雪は不思議そうな顔をしていたが、数秒で興味は食べ物に移ったらしく、またもぐもぐし始めた。
 結局その日は時間が無くなり、作戦会議が進む事は無かった。
 俺は自宅に帰り、鞄を玄関に投げ出してソファーに寝転がった。
 ……………難航しそうだな。色んな意味で………。
 そう考えると、何だか気力が抜けて眠くなってきた。
 まあ良いか………明日休みだし。
 俺はそのまま睡魔に身を委ねる事にした。
 ≪6話・完≫
- ゴーストヘルパーズ 七話 ( No.9 )
- 日時: 2016/03/19 02:58
- 名前: 北風 (ID: baOn2Ld/)
- ≪7話≫ 
 「ん…………」
 目を開けると視界に天井が広がった。
 どうやら昨日はあのままソファーで寝てしまったらしい。
 「……あ…あああ…………」
 無気力に声を発してみる。
 晩飯を食べていないせいか無性に腹が減った。
 学生たるもの飯はしっかり食べなくては。
 俺の成長期はまだまだこれからだ。
 「……う……よっ…と」
 俺は反動をつけてソファーから起き上がり、冷蔵庫の扉を開けた。
 みりんと、ソースと、味噌、あとポン酢が入っていた。
 わぁお、調味料オンリー。
 「……仕方ない、買い出し行くか」
 そう呟いてカーテンを開くと窓ガラスが結露していた。
 右手で軽く水滴を拭って空を見上げる。
 どんよりとした雲に覆われた空からは、しとしとと静かに雨が降っていた。
 「……ぅぁ……」
 俺は思わず顔を顰めた。
 こういう日は、よく「出る」んだよなあー。
 なるべくなら外に行きたくないが、背に腹は変えられない。
 俺は適当に身支度を整えて傘を片手に家を出た。
 ※
 コンビニへの道のりを歩いていると、前方にビニール傘をさした雪が立っているのが見えた。
 「おい雪ー」
 声をかけたが雪は無反応だ。
 「おーい、そーそぎー!」
 更に声を張り上げて呼びかけると、雪はやっと気づいた様子でこちらを見た。
 「………あ…………宗哉…………」
 「何やってんだ?こんなとこで」
 俺が尋ねると雪は道の向こうを指差した。
 道路の真ん中に緑のレインコートを着た子供が立っていた。
 住宅街で車の通りが比較的少ないとはいえ、いつ車が来るか分からない様な所で、その子は一人ただ俯いていた。
 「あそこで…………あのこ……もう10分も、ああしてるんだ……」
 「え?お前、10分間ずっとここで見てたのか?」
 「……?…うん……」
 …………せめてさあ、もっとこう、声かけるとか無いの?
 俺は一瞬そうツッコもうかと思ったが止めておいた。言うだけ時間の無駄だ。
 まあその話は置いておくとして、10分もああしてるって流石にちょっとおかしいな……。
 「雪、俺ちょっと話しかけてくる」
 「………あ………僕も行く…」
 俺達は子供を警戒させないよう、正面からゆっくりと近づいていった。
 だがどんなに距離が詰まろうと、その子は下を向いたまま微動だにしなかった。
 とうとう俺達との距離は50cm程になった。それでもまだ反応は無い。
 顔ははっきりとは見えないが、髪形からこの子は女の子だという事が分かった。
 「…………おい」
 話しかけてみると、その子は顔を上げてこちらを見た。
 「………………!!」
 俺はその顔を見て思わず絶句した。
 見覚えのある顔だったからだ。しかも、つい最近見た顔だ。
 「……も………桃菜……!?」
 「え……?」
 雪が驚いた表情で俺を見て来たが、俺はとっさに何も言えなかった。
 そして気づいた。
 違う。この子は桃菜ではない。
 桃菜の身長は大体140cmくらいだった。
 だがこの子は145cm程身長がある。
 顔も桃菜より僅かに大人びている。
 そして何より、目が、違う。
 この子は年相応のあどけないキラキラした目ではなく、感情が全く籠っていない無機物のような目をしていた。
 俺が何も言えずに立ち尽くしていると、
 「あれ?小森さんに白樺さん?何してるんですか?」
 背後から声をかけられた。
 振り向くとそこには笑顔の沖花が居た。
 「あ……お、沖花………」
 「……………………」
 「あれ?二人ともどうしたんですか?」
 俺と雪の様子に沖花は首を傾げた。
 そして俺達の前に立つ子供に目線を移す。
 子供の顔を見た途端、沖花は目を見開いた。
 「杏菜!ここにいたんだ!」
 「!?…し、知り合い?」
 俺が驚いて尋ねると、沖花は頷いて答えた。
 「この子は沖花杏菜。桃菜の……双子の妹です」
 ≪7話・完≫
- 著者コメント 3 ( No.10 )
- 日時: 2016/03/19 03:01
- 名前: 北風 (ID: baOn2Ld/)
- 沖花 春(オキハナ シュン) 
 沖花 桃菜(オキハナ モモナ)
 沖花 杏菜(オキハナ アンナ)
 です。
 遅れてすいません<(_ _)>
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