コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 金色の絆 ( No.11 )
日時: 2010/01/11 22:26
名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952

              〜10〜

  「どういうことだよ、笹川っ!」
  またか…俺は実君の声を聞きながら思った。
  「どういうことかって?…だから、さっきから言ってるじゃないか。寿由梨と…」
  「そういうことじゃない!どうしてそれでお前の口から苺の名前が出てくるか、それが聞きたいん
  だ!」
  ふぅ…過保護すぎだろ、いくらなんでも。別に俺が苺ちゃん、というどこがいけないんだろう。
  「今、純が帰ってきたんだよ。いくらなんでも遅いから叱ったんだけど、そのときに全部話してく
  れてさぁ。まぁ、内容は君も知っての通り、あの二人のことさ。それプラス、苺ちゃんが純に面倒
  なことを押しつけたって寿由梨が言っていたってことさ」
  「…押し付けた…か」
  なんだ。変に冷静だな。もっと騒ぐかと思ったのに。意外だ。
  「苺は普段、人と会話しない分、優しく遠まわしに言うってことをしなくなったせいかも知れねー
  な…」
  実君は小さな声で言ったつもりだろうけど、電話だから聞こえた。俺は頭を働かせた。やっぱり
  この兄妹なにかあったんだな。クラスがこの兄妹をいじめてるってわけではなさそうだけど…
  「ねぇ、実君。君たち、まだクラスに馴染めてないよね?何で?」
  「…馴染んでないわけじゃなくて、馴染まねーんだよ。まぁ、こんなことは、お前に関係ないけど
  な」
  「教えてよ」
  俺はストレートに聞いた。実君は思ったとおり、
  「やだよ。お前に言う意味がないからな」
  「ふーん?じゃあいいや。明日苺ちゃんに聞こうっと」
  「…お前、何が目的だ…」
  俺はくくっと笑った。
  「目的?別にそんなものないよ。ただ、知りたいだけ」
  「…無理だ。何を言われようと、言わない」
  「ふーん?苺ちゃんに明日聞くよ?」
  「聞けばいい。もし、苺があの約束を覚えているなら、絶対言わない。俺は苺を裏切らない」
  意外だった。苺ちゃんの名前を出せば、話すかと思ったのに…それだけ兄妹の絆が深いって
  ことか…俺は笑った。でも、それは馬鹿にした様な笑いではなく、心からの羨ましいという気持
  ちだった。
  「実君。俺は君たちが羨ましいよ。」
  自然と声が優しくなっていた。実君はいきなり何が起こったかわからなくなって困惑してるんじゃ
  ない?
  「俺と純はそんなに絆が深いわけじゃない。仲良くもない。それ以前に、俺は純がそんなに好き
  じゃない。」
  いきなり実君が叫んだ。
  「…たった二人の兄妹だろ!?同じ日に生まれて、今まで一緒に育ってきて…これは偶然じゃ
  なくて運命だって、思わなかったのかよ!?」
  俺はびっくりした。だってそうだろ?今まで冷静だったやつがいきなり大声出すんだぜ?でも…
  「俺らには、大きな溝があるからな…」
  「…は?」
  「いいよ、きにしないで。それじゃ、また明日。おやすみ。」
  「…笹川…」
  実君が小さな声で言った。
  「ありがとう、でも俺はお前らが羨ましいよ…」
  「え…?」
  実君は電話を切ってしまった。どういう意味だったのだろう?ありがとう?何に対しての…?羨
  ましい?俺らのどこが…?
  俺は考え込んだがなにも浮かばなかった。しょうがない…そうおもって俺は自分の部屋へあがっ
  ていった。