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Re: 金色の絆 ( No.15 )
日時: 2010/01/11 22:31
名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952

     〜14〜

  「あ、もしもし? 実君? 」
  笹川から電話がかかってきたのは、六時過ぎぐらいだった。ちょうど、苺が帰ってこなくて心配し
  ていたところだった。
  「……笹川、葵? 」
  「そうそう!よく分かったね」
  分からないわけがない。『実君』と呼ぶのは知り合いの中で少ないからね。
  「……で? 何の用? 」
  笹川が黙っているので、僕のほうから聞いた。
  「……苺ちゃん……まだ帰ってきてないでしょ? 」
  まさか……
  「……お前、まさかっ……! 」
  「やだなぁ。別に誘拐はしてないよ。ただ……君の家が分かんなかっただけ」
  「……は? 」
  何を言っているんだ? 僕の家がわかんなかった? なぜ知る必要がある? 理由は……いや、
  それ以前に……
  「苺は、お前のところにいるんだな? 」
  「……うん、まぁね。何なら声聞く? 」
  「あぁ」
  冗談だったら……許さない……
  「わかったよ。そんなに怒んないで? 俺にも理由はあるんだからさ。……今かわるよ」
  奥のほうで、「実君だよー、声聞かせろってさー」という声が聞こえた。それからしばらくして小さ
  な声が聞こえた。
  「……実? 」
  「っ苺!! 大丈夫なのかっ? 何にもされてないかっ? 」
  「だ、大丈夫だよ。別になんでもないから! さ、笹川君にかわるねっ! 」
  苺は早口に言って、笹川にかわった。
  「どう? 苺ちゃんでしょ? 」
  「あぁ、そうらしいな」
  「それでね、電話した理由なんだけど……苺ちゃんを迎えに来てくれない? 」
  「僕は君の家を知らない」
  「教える。だから、早く来てあげて? 早くしないと、純が帰ってくる」
  純が帰ってくる……? それは別に普通だろ? でも……悪い予感がする……
  「……分かった。すぐ行く。場所を教えろ」
  「あぁ……はやく、来いよ」
  そういって笹川は住所を言った。意外と近くだった。僕は、走った。足が鉛みたいに重くて、早
  く行かなくちゃって、思っているのに、体は思い通りに動かなくて。なんて、間抜けなんだろう?
  大切な子に何かが起こっているような気がするのに、僕は何もできない。何も、出来ない……
  隣にいることだけでも……って思っていたのに。それが僕の使命なのに……それすらも、出来
  ないんだ……もっと早く……彼女の元へ……

  僕は、涙をこらえながら走った。僕の役目を果たすために。
  別に、まだ『あのこと』を気にしているわけじゃない。でも、僕の使命。それなら分かる。守るんだ。
  彼女を。僕は走り続ける。
                                         大切な子…苺の元へ___