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Re: 金色の絆 ( No.16 )
日時: 2010/01/11 22:31
名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952

         〜15〜

  「じゃね、純!」
  「じゃーね〜」
  そういって友達とは別れた。あの作戦はうまくいったらしい。
  『内ノ宮 苺の立場がどこだか私たちで教えてあげましょ? 調子乗ってんじゃないわよ』
  略して U.W.Cの会だ。由梨は私の大切な友人。その子を傷つけるのは許せない。
  「……明日はどうやって可愛がってあげようかしら?」
  そういって私は笑った。きっと、とても醜いのだろう。そんなことは分かってる。
  でも、それが私なんだ。だから変わらなくても、今と同じありのままの自分でいようと思うのだ。
  みんな、そういうではないか。本でも、先生でも。自分に素直になりなさいってね。
  私は、明日彼女に行うコトを考えながらくすくすと笑っていた。
  幸い、周りに人はいなかったので、誰にも見られることはなかった。
  あと数百メートルで家だ、というところで誰かがぶつかってきた。少年だった。
  ちょうどそこは曲がり角で、死角だったし、私も自分の世界に入ってたから、気が付かなかった
  のだ。私はすぐに謝ろうと思ったが、声が出なかった。
  「……あ、ごめん。ぶつかったね。わざとじゃないんだ」
  先に少年のほうが謝った。
  「あ、いえ、あの、えっと、あの……」
  自分のタイプの男性を見ると緊張してうまくしゃべれない癖、まだ直ってなかったんだっ!
  うわ、最悪。早く謝んなきゃ……!
  焦れば焦るほど言葉が出てこない。
  「あの、す、すみませんでした! ちょ、ちょっとぼーーーっとしてて、あの……」
  私は一生懸命に説明した。少年は少し笑っていった。
  「あぁ、良いよ。別に。僕のほうも悪かったしね」
  ストライクっっっっっっっっ!!!!!!!! やばいやばいっ! 超好み!
  「あれ……?」
  少年は急に思い出したように言った。
  「君、同じ学校なんだね。僕のこと知ってるかな?」
  「あ、えと……昨日転校してきたばっかりで……」
  「あ、そうなんだ。ぼくはね……」
  「かいちょぉぉぉぉぉぉう!! 天堂会長!!」
  「あーぁ。もう見つかったか……それじゃあね。えっと……」
  「さ、笹川です!! 笹川純!」
  「それじゃあ、笹川さん。またね」
  「は、はいっ!!」
  少年……そういえばさっき『天堂』とよばれてたっけ……天堂君はさっさと行ってしまった。
  その後を小柄な少年が一生懸命に追いかけている。
  もう、天堂君が見えなくなったころ、私は無意識のうちに声に出していた。
  「天、堂君……また、会えるかな……」
  どうやら私は天堂君に恋してしまったらしい。
  こんなふわふわした気持ちで家へ向かった。

  「え……?」
  私は家の10メートルぐらい手前でとまった。玄関のところに誰かいる。
  私はゆっくりと近づいていった。
  「苺っ! 大丈夫か?」
  「安心しなよ。実君。俺は何もしてない」
  「……苺、本当に大丈夫か?」
  「うん……平気、だよ?」
  「そうか……」
  家まであと5メートルという地点まで来ると、声まで聞こえる。
  あそこにいるのは、内ノ宮 苺、内ノ宮 実だ。
  何故?
  何故ここにいる?
  しばらくすると2人は帰っていった。こっちに向かってきたときはどうしようかと思ったが、
  物陰に隠れて見つからなかった。
  「……葵」
  「あぁ、純。遅かったね」
  心のはいっていない声で言う。私の心はさっきとは逆に冷めていた。
  「ねぇ。なんであの二人が家の近くにいたの?」
  「……別に話す義理はない」
  「……」
  葵はいつもそう。私と葵は兄妹なのに何も言わない。
  でもどうしようもないんだ。葵は親との記憶がある。私にはない。
  そのことがきっと、大きな溝を作ってしまったんだ。
  でも、いまさらどうする気もない。
  どうしようもないんだ。
  そう考えながら、私は自分の部屋に入った。