コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 金色の絆 ( No.17 )
日時: 2010/01/11 22:33
名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952

                  〜16〜

  それからも、いじめは続いた。
  私が初めて叩かれた日、いじめが始まった日から一週間たった日の放課後、事件が起きた。
  「……?」
  朝、私が登校し、下駄箱をあけると中に一枚の手紙が入っていた。
  勿論、いつも私の周りには『見張り』がいる。
  実と一緒にいるときは何もしてこない。きっと恐れているんだ。
  もし、あの人に伝わったら……って。
  それは好きな人かもしれないし、友人かもしれない。
  私にとってはどうでも良いが、少なくとも実のいない所だけでやってくれるのはありがたい。
  実には余計な心配をかけたくないのだ。
  「……誰からだろう……?」
  私は小声でつぶやいた。実がこちらをチラッと見たが、何も言わなかった。
  もしかしたら、知ってるのかもしれない。私がいじめられていることを。
  すべて知っていて、外から見守ってくれているのかもしれない。
  私が全てを話すまで待っていてくれてるのかな。
  ううん、待っててくれてるんだ。
  でもね? 実。私は、もう人を信じられなくなっちゃってるよ? それでも待っててくれる?
  話を聞いてくれる? こんなに心が冷たくさめてしまった私でも、実、あなたは

                    待っててくれる?

  それにね、実。きっと、私は罪を犯したんだ。その罪は一体何なんだろう。
  それは分からないけど、また人を傷つけてしまったんだ。
  人と関わらない様にしたのに、駄目だった。
  だから、私はこうやって罰を受けてるんだ。
  ねぇ、罪を犯した、こんな私でも、あなたは待っててくれる?

                     許してくれる?

  「苺? 行くよ? どうかした?」
  「う、うん」
  「……本当に、どうしたの? 泣きそうな顔してるよ」
  「……なんでもないの。本当に。大丈夫」
  「そう。耐えられなくなったら言ってね。僕は苺の味方だよ」
  あぁ、やっぱり分かってたんだね。実、私、弱虫になったみたい。
  すぐに泣いちゃうよ……
  「おはよう、実君、苺ちゃん」
  「……笹川」
  「何? 実君」
  「……っ」
  「どうしたの?」
  「……何でも、ない。お早う」
  「う、うん、お早う……」
  笹川君は、実が『お早う』といったことにとても驚いていた。
  私も驚いた。実がクラスの人たちに挨拶したのをここ数年は見ていなかった。
  でも、それ以上に、実が笹川君に対して、少し苦々しい表情をしたことが気になった。
  きっと、あの日のことだ。
  笹川君に泣いてるところを見られた日。
  実にはあの日のことを話してない。
  勿論おおよそわかっているのだろうが、それを笹川君まで知っているのか、とか、気になるとこ
  ろは多いはずだ。でも、実は聞けないんだ。
  私が実に話してないから。
  実にあんな顔させたのも私だ。私は大罪を犯してしまったのだ。
  実にまであんな顔をさせて。
  私は一体、何をしてしまったのだろう。
  どこで間違えたんだろう。
  ごめん、ごめんね、実。
  私が実を傷つけて、苦しめた。
  神様、私はどうすればいいんですか? 私は何をすれば許されますか?
  「……苺ちゃん」
  笹川君の声で我に返った。
  「涙」
  「あ……」
  私は目にたくさんの涙を溜めていた。俯いていたから笹川君以外にはばれてないと思う。
  「……まだ実君に言ってないの?」
  私は袖で涙を拭いながら頷いた。
  「そう。泣きたくなったら俺の家おいで。純は6時前に帰ってこないから」
  私は驚いて顔を上げた。もうその時には笹川君は実の所で一緒に話してた。
  「……どんだけ足速いのさ……」
  私は少し笑いながらつぶやいた。また目が涙でいっぱいになった。
  優しくされるのは、慣れてないよ。
  優しくされると、甘えちゃうから……だから、優しくしないで?
  そうじゃないと、本当に頼ってしまうから。
  「あ」
  そういえば靴箱に入っていた手紙。結局誰からだろう?
  すっかり忘れていた。封筒には名前が書いてなかったので、ゆっくりと封を切った。
  「……え?」
  私は危うく手紙を落とすところだった。
  なんで? 何でこの人から手紙が来たの?
  私は固まってしばらく動けなかった。
  「苺、行くよ」
  「う、うん」
  苺はゆっくりと歩き出した。
  実に悟られないように、できるだけいつも通りでいることを心がけた。
  でも、きっと気が付いてる。実だけじゃない。笹川君も。
  それでも、私はなぜあの人から手紙が来たのかを一生懸命考えていた。