コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の絆 ( No.19 )
- 日時: 2010/01/11 22:36
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952
〜18〜
わたしは、神から罰を受けました。
神はわたしの希望。
でも、神はわたしを見捨てたのです。
神はときに残酷です。
「い……つき……?」
「お前ら何やってんの?」
心が……
わたしの心が崩れていく。
「え……じょ、冗談でしょ? 五木……」
周りの子が驚いて聞く。
「……何が? 俺が内ノ宮のことを好きなこと? それとも……」
五木は周りを見渡しながらいった。
「これを見てたこと?」
そういって、携帯電話を見せた。
その画面は、さっきまでの私達と内ノ宮さんのやりとりがうつっていた。
「え……ちょ、やめてよ! 五木! 消して!」
「何で? お前らがやったんだろ? あ。これ動画だから、明日声だけでも放送で流そうかな」
「五木!」
まわりが悲鳴にも近いような声を上げた。
わたしは五木の顔を真正面から見れなかった。
「五木はさ、内ノ宮さんが……好きなの?」
周りの叫び声の中、小さな声で聞いた。
聞こえるか聞こえないかも分からないぐらいの小さな声で。
「うん」
五木は答えてくれた。
あのときみたいに。
わたし、五木のことが大好きなんだよ……
わたしの声を聞いてくれるのは五木だけだったから……
どんどん想いが膨れ上がっていく。
風船みたいに。
気が付いたら、想いを口にしてた。
「……好き……だったよ……」
蚊の鳴くような声で。
涙を我慢して。
五木……聞こえた?
わたしの声。
「……それってさ、冗談か何か?」
わたしは首を横に振った。
「でもさ、本当なの? そういう風には見えないよ?」
五木にわたしの声は届いてた。
でも……想いは届かなかったんだ……
「冗談に、見える?」
静かな声がした。
私は顔を上げた。
五木は驚いたようにいった。
「内ノ宮……」
「冗談に見えるんですか? 貴方には」
「…………」
「貴方が一番分かってるはずですよ? 彼女のこと」
「うん……知ってたよ。寿が俺のことが好きなんじゃないかってことは。噂でね」
「……そうなんだ」
「……うん。知ってた。でも、俺は内ノ宮のことが好きだったから……」
「五木が内ノ宮さんのことが好きな理由ってさ、13秒台だから?」
五木はゆっくりといった。
「……違うよ。それはほとんど関係ない」
……うん、知ってたよ。
五木はそんな単純な理由で人を好きになるとは思わないから。
「じゃあ、なんで?」
「……一緒にいて心地よいから」
「……うん」
なんとなく分かるよ。
内ノ宮さんは人と一緒にいないけど、とても心が綺麗で、いい人だって思える。
一度話して、分かった気がする。
彼女は、心に深い闇を抱えてる。
それでも……ううん、それゆえに彼女はきれいなんだ。
「ねぇ、五木」
「なに?」
「きちんと告白してもいい?」
「え?」
「へんじもわかってるけど……でも、きちんとしたいの」
「……うん」
周りはとても静かだった。
さっきまでのやり取りが嘘のように。
「五木……好きです」
一瞬の沈黙。
「……ありがとう」
五木はそういって笑ってくれた。
「……わたしさ、あきらめないよ?」
「報われないかもしれないけど」
「それでも、好きでいさせて」
「……寿もさ、もっと良いやつを好きになればよかったのにな。寿自身が良いやつなんだからさ」
涙があふれた。
自分のことをそうやって言ってくれる。
やっぱり五木のこと、大好きだよ……
「えっ……や、あの……」
五木はわたしがいきなり泣いたことにびっくりしたらしい。
おろおろしながら言い訳を探してる。
わたしは自然と笑っていた。
「いいの……五木のせいじゃないから」
「えっと……」
五木はまだ困惑中らしい。
泣いたり笑ったり、面倒くさいやつだ、とか思ってんのかな……
そういえば……
「内ノ宮さん?」
帰ろうとしていた彼女に声をかける。
「……はい?」
「あ、あのさ……」
「はい?」
ゆっくりと内ノ宮さんに近寄る。
「友達に……なってください」
「……は?」
そりゃ、は?っていいたくなるよね。
仮にもライバルがそんなこと言い出したらわたしだって動揺するし。
「五木は内ノ宮さんのことが好きなんだけど、わたしも内ノ宮さんのこと好きなんだよね」
涙は止まっていた。
「……」
「だめ……かな?」
「由梨!!」
周りがうるさい。わたしは彼女と話しをしてるのに。
わたしは周りの人を睨んだ。
「っ……」
周りは静かになった。
彼女はゆっくりと口を開いた。
「私は嫌です」
そう一言言った彼女の目には強い決意があって、わたしは少し困ってしまった。
彼女はわたしの顔を見ている。
凛とした目で。
「それでも……それでもわたしは……諦めませんから」
「……」
彼女は何かをいおうとしたが言えなかった。
彼女が口を開こうとしたときに、扉を叩く音がしたからだ。
みんなの視線がそっちに集まる。
「第一下校時間は過ぎています。用のない生徒は残ってはいけないはずですが?」
「ご、ごめんなさい!!!」
生徒会長だ……生徒会長の天堂鏡介。
生徒会長は、ある意味校長よりも力を持っている。
しかも生徒会長はとても強い。
この学校の中で一番。
生徒会長に逆らったら、終わり。
この学校ではもうやっていけない。
でも、まさに今、わたしたちに終わりが近づいてる。
ここでは規律を破るなんて死に等しい。
優しそうな笑顔で話しかけてきた。
「貴方たち、知ってますよね?規律を破った人が……」
「天堂君」
内ノ宮さんが生徒会長の名を呼んだ。
彼の名を呼ぶなんてただの命知らず……
って、そんなことを考えてる場合じゃない!
「内……」
「! い……」
生徒会長が内ノ宮さんをみて驚いたように口を開いた。
「何でここに……」
独り言のように小さい声だった。
普段の生徒会長とは違う雰囲気みたいに見える。
まぁ、普段一緒にいるわけじゃないし、話すのも初めてだけど……
さっきまでの雰囲気とは明らかに違う。
「あぁ……もう。予定が狂いすぎてる。でも、まぁ仕方がないな」
生徒会長はちらっと内ノ宮さんをみてから言った。
「君がいるなら見逃してあげるよ。以後気をつけなよ」
周りはとても静か。
生徒会長は少しいらっとしたように言った。
「返事は?」
「はい!!!」
その場にいた、内ノ宮さん以外の人が声を合わせていった。
殺されなかった……
今日のことは他言できない。
だから、生徒会長が恐いって言うのは噂となる。
普段は優しいから、噂を聞いてもたいていの人は信じない。
でも、こういうのをみると信じざるを得なくなる。
生徒会長は仕事を終えたとでも言うように教室から出て行った。
内ノ宮さんが数秒後に帰っていった。
わたしは彼女に話すことがあったのに呼び止めることができなかった。
どうして彼女は彼のことを止められたのか。
その疑問だけがわたしの頭の中を占領していた。
「ゆ、由梨……? 帰ろう……? 一緒に帰っていい?」
「あぁ、うん。もう二度とあんなことしないでね? わたしは頼んでないんだから」
「あ、う、うん……」
「早く帰んないと今度は殺られるよ?」
「そ、そうだね!」
「早く帰ろう!」
みんなが教室を出て行った。五木も教室から出て行った。
教室は夕陽で茜色に染まっていた。
とても綺麗だった。
でも、その様子が少し寂しそうに見えて、内ノ宮さんと重なった。
彼女のことは全然知らないけれど、これから知っていくから。
だから、決して一人だと思わないでほしい。
よく分からないけれど、心のそこからそう願っていた。