コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の絆 ( No.20 )
- 日時: 2010/01/11 22:37
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952
〜19〜
「ただいま」
苺が帰ってきた。
「おかえり、苺」
靴を脱いでリビングに歩いてくるのが分かる。
その足取りはどこか軽いような気がする。
きっと問題が解決したのだろう。
「実?」
笑いながらリビングに入ってきた。
笑いながらきたってことは予想は当たっていたらしい。
「何? 苺。何か良いことあった?」
「んーとね、厄介ごとがひとつなくなった!」
「そうなんだ」
僕は笑って頷いた。
よかったな、って思う。
苺は僕が17年間大切に育ててきたんだ。
いわば僕の宝。命よりも大切だ。
その『僕の宝』に傷をつけられたら困るし、傷をつけた人を殺しに行くと思う。
それほど僕には大切なのだ。苺が。
今までだっていじめられそうになったことはある。
ただ、僕がその芽をひとつずつ丁寧に摘み取っていたから大事にはならなかった。
苺も知らなかったし……
でも、今回のは違う。
苺も17歳、高校二年生だ。
自分の問題は自分で解決できるようになった。
僕がするべきことは、そのことに誰よりも早く気づき、見守ってあげることだ。
手を差し伸べることだけが大切にしているって意味じゃないことを僕は知っている。
勿論、僕だって心配だ。
もし苺に何かあったら……そう思うと助けてあげたくなる。
助けることが苺にとって一番酷な事なのに。
これから先も、必ず僕が守ってあげられるわけじゃない。
だから、苺も知らなくちゃいけないんだ。
世の中はこんなにも汚くて澱んでいる事を。
「そうそう、実」
苺が突然思い出したようにいった。
「あのね、今日、会長に会ったよ」
会長……? もしかして……
「天堂……鏡介……」
「うん。学校で会うのは久しぶりかな……」
「何にもされなかったか!? 鏡介のやつ、苺に何かしたんじゃ……」
「実、鏡介って呼んでたの?」
あ……またやってしまった……
「昔の癖で……な」
「そっかぁ、そういえば三年たったんだねぇ……あの日から」
「あぁ、三年もたってたんだ」
三年。
そんなにも長い時間が経過していたんだ。
中学二年生のときから。
あいつにとってこの三年はどんなものだったのだろう。
正直、気にしてはいけないんだろうけど、やっぱり気になる。
そりゃあ、元とはいえ『親友』だったんだから、仕方がないだろう?
僕らにとっては親友なんて数えるほどしかいないんだ。
多分三人。
内一人は天堂鏡介。
中学二年生になって三度目の転校先にいた。
残りの二人も。
あの時は助かった。感謝してる。
素直にそう思えるのもあいつらだけだ。
勿論苺にとっても。
まぁ、鏡介にはあのあと、……まぁ、一種のライバル心を燃やされていたのだが、
今もそのままだろうな。
そのまま放っておいたから。
勿論、あいつの気持ちが変わってなかったら、だけどな。
「実ー? なんか変だよ?」
「いや、別に変じゃないけど……」
「そ? なら良いんだけどね」
「苺。お腹すいたでしょ?」
「うん!」
「ご飯、食べようか」
「はーい!」
苺はニコニコしながら食卓の席に着いた。
僕はその様子を見ながら、『あの時』をこえたからこそ、
今の苺があるんだと思えた。
まぁ、何はともあれ、苺が無事で本当によかったって、
心のそこから思った。
