コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 金色の絆 ( No.23 )
日時: 2010/01/11 22:42
名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952

                 〜22〜

  五木と寿と笹川と……
  苺と僕は絶対一緒として、また面倒なメンバーだなぁ……
  そういや、笹川妹はどうするんだろう?
っていないし……
  ほんと、厄介だなぁ……
  まぁ、そんなこと言ったら苺が悲しむから言わないけどね。
  「み〜の〜る〜?」
  苺が僕の顔を覗き込んだ。
  昼休み、クラスに人が友人と話しているというのに苺は僕のところに来ていた。
  心配そうにしている。
  「どうしたの? なんかあった?」
  僕は笑って聞いた。
  もちろん、苺を安心させるためだったのだが、苺は僕が嘘をついているのだと思ったらしい。
  「実、なんか嫌なことあったの? 大丈夫?」
  いや、苺…本当に何もないんだけどな……
  たいしたこと考えてたわけじゃないし……
  「や、本当になんでもないよ?」
  「ならいいんだけど……」
  苺はいまいち煮え切らないような感じだったが、僕が笑ったから安心できたらしい。
  「ねーねー♪」
  「何ですか」
  ……僕と苺の時間を邪魔してほしくないんだけど。
  なんて、苺の前ではいえないから、いっくらうざくても、少しは話しを聞いてあげる。
  苺の、おそらく友達になるであろう人に嫌われては意味がないのでね。
  僕も大変だなぁ……って、時々思う。
  自分でね。
  たまにはいたわって欲しいよ、まったく。
  まぁ、僕のご褒美といえば、苺が僕だけに向けてくる笑顔かな。
  苺が笑顔ならいいや、みたいな感じ。
  まぁ、僕だけ、とは言ったものの、後三人苺を笑顔にさせられるやつがいるんだけど。
  苺の親友だからね。
  そこは百歩くらい譲ってやってもいい。
  僕の親友でもあるからな。
  んで、その親友は___
  「ちょっとぉ……聞いてる〜? 内ノ宮君っ!」
  「あーはいはい。聞いてましたよ」
  実際は聞いてないけど、面倒だから別にいいよね。
  それにこんな言い方したって、馬鹿だから気が付かないという……
  その頭の中、お日さまでぽかぽかなんじゃないの?
  「ふ〜ん? 聞いてたんなら別にいいんだけどさぁ?」
  ふぅ……
  そりゃ、ため息だって出るさ、まったく。
  あー……
  面倒くさい……
  そして、また寿は話し出した。
  みんな……というよりかは五木に。
  しばらくはこっちをみないはず……
  と、思ったのだが、急にクラスの一部から笑い声や話し声が消えて、代わりにひそひそ話す声
  や、きゃー、という声が聞こえた。
  はやくない?
  ってか、クラスが少し静かになった気がするし?
  おかしい気がするんだけど……?
  そう思って、苺を見ると、苺は驚いたようにドアを見ていた。
  「ん?」
  僕もつられてそっちをみる。
  そして、絶句した。
  「あ、いた。君ら、本当に自分のクラスでないんだね」
  …………天堂鏡介?
  何でこのクラスに?
  「とりあえず、借りてくね? 内ノ宮兄妹」
  クラスの人は何も言わない。
  なかには状況が読めていない人もいるらしい。
  笹川もその中の一人だ。
  転校生だし、生徒会長ってことしか知らないのかもしれない。
  僕はやっとのことで声を出した。
  「鏡介……苺、行こう。あいつのことだ。行かなかったらずっと待ってるだろうからね」
  「うんっ」
  苺は嬉しいらしい。
  たしかに、僕と鏡介の仲がちょっと悪くなったころから、苺はあいつと話しているのを見かけなく
  なった。
  だから、嬉しいんだろうな。
  誰だって、親友と話すのは楽しいだろうから。
  まぁ、僕らには三人しかいないわけだから、はっきりとはわかんないけどね。
  苺は元気よく席を立って、鏡介のところへ行った。
  僕はその後ろをゆっくりと歩いていった。
  苺は鏡介に対して笑っていた。
  相当嬉しいんだなぁ……とか何とか思っていると、
  その光景が飼い主を見つけて尻尾を思いっきり振っているように見えてきて笑ってしまった。
  「何笑ってんだよ、実」
  鏡介が僕の名を呼んだことに、クラス中の人が驚いたのがわかった。
  そりゃ、当たり前っちゃ当たり前か。
  鏡介は人を下の名前で呼ばないからな。
  よく一緒にいる生徒会の人でも苗字が普通だ。
  いや、もしかしたら、僕と苺とあの二人だけかもしれない。
  ”かもしれない”じゃない。
  四人だけだ。
  「ねぇ、実。ここじゃ何だし、場所移らない?」
  僕は周りを見渡した。
  みんなが僕たちのことをみている。
  正直、僕も苺も目立つのは好きじゃないから、確かに嫌だった。
  まぁ、苺はそれどころじゃないけど。
  「あー……場所移るか……でも、どこ行くんだよ?」
  「大丈夫。僕についてきなよ。……苺もね」
  苺はこくんと頷いて笑った。
  最近名前呼ばれてなかったからだろう……
  って、久しぶりだからって無防備すぎだぞ、苺……
  鏡介もほんのり赤くなんなよっ!
  って、僕、ツッコミだっけ?
  はぁ……
  「実? おいてくよ」
  鏡介は苺と歩き出していた。
  僕は後を追った。
  僕らの移動は大して何も話すこともなく静かに流れていった。
  僕的にも、この時間は好きだ。
  苺も。
  ひとつ、廊下にいる人にこっちを見られたこと以外は。
  まぁ、僕らは鏡介のあとをついていくだけだったし、楽だったけど、
  鏡介は道行く人に笑いかけていた。
  仕事用の笑顔で。
  僕は大変だな、と思いながら鏡介を見ていた。
  そして、生徒会のみが入ることを許される屋上に着いた。
  さっきまで大雨だったのに、今はもう晴れている。
  天気予報は外れたな……
  と、僕が思っていると
  「とりあえず、時間はまだあるし、少し空でも見てようか?」
  「うんっ」
  苺が元気よく言ったので、僕らは空を見ることになった。
  僕らの周りだけゆったりとした時間が流れているように感じた。
  僕はゆったりとした時間の中で一緒にいる二人を見てあることを思い出した。
  それは、僕と苺と親友三人と……そう、あいつらと一緒におんなじ空を見た気がする。
  こんな風に時間のゆったりした空間だった。
  僕はあのころと、今を重ねながら頭上に広がる青い空を見上げていた。
  青空は何年過ぎても変わらないんだ……
  分かっていたはずなのに、そうかんじてしまう。
           ______青空が僕たちを包んでくれている、そんな気がした。