コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の絆 ( No.73 )
- 日時: 2010/06/26 00:04
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: Fn07flnU)
「苺……風邪かな?」
苺が熱を出すなんて久しぶりだな……
何か悪いことの予兆なんじゃ……
「ん?」
電話? 誰から……?
僕の家の電話番号を知っているやつなんてそう多くはない。
笹川がなぜ知っていたのかは僕にも分からないのだ。
……まぁ、鏡介あたりからの電話だろうけど…
「…もしもし? 内ノみ……」
「もしもし、実ー?」
…………え?
「あれ? 実じゃなかった? えーっと…すみません、内ノ宮さんのお宅ですか?」
「……内ノ宮実ですが……」
この声……いや、でもまさか…
「実っ!? うっわ、久しぶりっ! 俺のこと、覚えてる?」
電話越しに覚えてる、っていわれても……
でも、この声はやっぱり……
聞き間違えるはずがない。
「あ、俺、空理だよ。実、わかんなかった?」
やっぱりそうだ。
「分かってたよ、僕がお前を覚えていないわけないし、そもそも、僕を呼び捨てにするのはお前
も含めて四人だけだよ」
空理と天理と鏡介と、それから苺。
その四人だけ。
今も、昔も、ね。
それよりも、今は何で空理が電話をかけてきたか、のほうが大切だ。
「何かあったの?」
「ん? あぁ、いや? 何かあったかって聞かれたらあったけどさ……」
「……まさか、お前、まだあれが……?」
「ん〜、流石だね。正解!」
遠江空理。
これで、トオトウミ クウリと読む。
空理は僕らの親友の一人。
まぁ、名前を呼び捨てで呼び合う時点でそうだと分かるけれど…
鏡介と同じく、中学のときに知り合った。
そんな空理はひとつの「特技」を持っていた。
「特技」とは呼べないのかもしれないけどね。
空理はゆっくりと、口を開いた。
「……苺に、近々悪いことが起こるよ」
空理の「特技」は「予知」。
空理には「予知能力」が備わっている。
どうしてだとか、そんなのは一切分からない。
でも、それは空理が本当に大切に思っている人のことしか分からないみたいだ。
それも、これから起こる悪いことのみで。
「やっぱりそうなのか……」
「ん〜……」
空理は言葉を濁す。
何かを考えているようだ。
「あのさ、実……」
迷っている様な空理の声。
「……何?」
僕はゆっくりと聞き返した。
少しでも多くの時間を空理に与えて、ゆっくりと考えて欲しかったからだ。
空理は考えが甘い。
僕がすぐに答えてしまえば、空理は要らないことまで話すと思うし、それ以前に、何時間あって
も話が終わらない。
話の中心までいくのに本当に時間がかかる。
「……最近さ、鏡介と関わったり……した?」
……なるほどね。
僕と鏡介は中学のときにあんまりよくないかんじで別れたから聞いていいか、判断がつきにくい
ところなんだろう。
「ん、まぁ、関わった……かな」
「通りすがったとか、そんなのはなしだよ?」
空理が再度確かめてくる。
でも、実際はすれ違ったどころか、話だってしたし、結構中学の状況に近くなっている…気が
する。
「通りすがったどころじゃないよ。一緒に話もした」
「……あー……あのさ、もう一個質問」
なぜか少し迷ってからもうひとつ質問してきた。
迷うようなことなのか?
「鏡介の近くに、女の子とか、いなかった? 例えば…鏡介に好意をもっていて、結構身近な
人、とかさ」
鏡介の……仲のいい人?
……苺……?
いや、そんなはずはない。
だって、きっとその人が元凶になるだろうから。
この、嫌な事件の、さ。
それはそうと、鏡介に好意を持ってるような人は山ほどいるけどな……
身近な人……身近な人……
どこまでが身近な人だろう……
鏡介と話したときに一緒にいた人……
……いた。
一人だけ、いた。
僕と苺と鏡介と話していたときに、一人やってきたじゃないか。
「……中城知念」
そうだ、彼女だ。
彼女は身近な人かもしれない。
生徒会の会長と副会長。
遠くはない役柄じゃないか?
「うん、その子っぽいね」
空理は少し間をおいて肯定した。
きっと、何か見えたんだろうな。