コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 最強次元師!! ( No.4 )
日時: 2011/02/04 22:44
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jQHjVWGa)
参照: 紅兎です(>ω<。)

第003次元 わがまま皇女様Ⅰ

 「皆ぁぁーッ!!またあの怪物だぁー!!」
 
 1人の男の声で、町中の人々が咄嗟に隠れる。
 小さな子供の声までするが、その親は唇に指をあてて静かにするよう言い聞かせていた。

 「レト!!元魔だよッ!!」
 「分かってる。一気に決めるぞ!!」
 
 2人は本部から離れ、全速力で元魔の元へと向かった。
 ここから約20分。
 漸く辿り付いた2人の息は上がっていたが、そんなのはものともしない。
 
 「出がったな、元魔の野郎。俺が相手だッ!!」
 「いや・・・俺達、が正しいね」
 
 目の前にいたのは怪物や機械兵器を連想させる巨体たる“元魔”。
 まるで今にでも喰らいつくかのように2人を睨みつけ、その牙が口から覗いていた。
 そこでふと、女性のような声が聞こえた。

 「きゃぁーーッ!!誰か助けてーーッ!!!」
 
 元魔の右腕にしっかりと掴まれた女性。
 彼女はじたばたとなんとか元魔から逃げられるように暴れるが、びくともしない。
 どうやら囮にされたらしい。

 「ち・・・っ。人間を囮にするとはな」
 「ガルルルルル・・・・」
 
 元魔は、レトやロクが目の前にいるのにも関わらずくるりと振り返った。
 驚いた2人はすぐに後についていく。
 その先は深い緑色や淡い黄緑の色をした森林の中。
 大きな木がまるで2人を見下ろすかのように聳え、太陽の光を妨げていた。
 
 「・・・?どこ行きやがった・・・」
 「・・・あ・・・・!!レト後ろ!!!」
 
 ロクが叫んだ時には、既に遅かった。
 レトの背後には一瞬の内に伸びてきた大きな爪が突如現れ、レトの背中に直撃した。

 「ぐぁぁ!!?」
 「レト!!」
 
 ロクが驚いてすぐに駆け寄ったが、レトの出血は尋常ではない。
 深く刻まれた爪の痕が残っていて、応急処置も間に合わない。
 
 「元魔の奴・・・ッ!!・・・レト、怪我大丈夫?」
 「まぁな・・・これでもだてに次元師やってねぇよ」
 「そか・・・良かった」
 「それよりお前は元魔を追え」
 「え・・・、そんなの・・・!!」
 「それが仕事だろ・・・、それに、一般人は巻き込んじゃいけねぇ」
 「・・・分かった、あたし行ってくる!!」
 「無茶したら・・・ぶっ殺すぞ」
 「了解———ッ!!」
 
 元魔を探して森林の中を駆け回るロク。
 そこで、ロクは誰かが木に凭れかかっているのを見つけた。
 良く見ると、先程元魔に捕えられていたあの女性だ。
 
 「だ、大丈夫!?け、怪我は・・・?」
 「まぁ・・・平気よ。だって私、死ぬわけにはいかないんだもの」
 「・・・?」
 「・・・こっちの話よ。・・・ったくあの怪物は何なの・・・」
 「あれは元魔。・・・まぁ、怪物って言ったら怪物だけど」
 「・・・ふーん・・・・」
 「あたし、今からそいつを倒しに行くから、動いちゃだめだよ?」
 「え・・・倒しに、行くの?」
 「うんっ、次元師ですから!!」
 
 と、笑顔で微笑んだロクを見て、彼女は少し驚いた。
 だがロクは彼女を置いてさっさと元魔を探しに行ってしまった。
 走り続けて、森林の中央まで来たロク。
 その少しの空間に・・・元魔は佇んでいた。
  
 「あ・・・!!やっと見つけた!!」
 
 ロクの声と同時に、元魔が振り返る。
 その巨体をぐるりと回して、ロクを見下ろす元魔。
 少しだけにやりと笑う元魔。
 ロクと戦うつもりだ。

 「ほほぉ・・・・んじゃあ行きますか——ッ!!」

 ロクは右手を大きく空に向かって伸ばした。
 左手で右手の手首を掴んで、思い切り。
 
 「第五次元発動—————」
 
 そして、元魔の方に振り翳す。
 狙いを定めて、雷が掌に集まるのを感じたロクは、
 そのまま一気に雷を打ち放つ。
 
 「雷撃ィィーーーッ!!!」
 
 その雷で見事元魔を捉えたロクは、たった少しだけ勝利の確信を得ていた。
 苦しそうに足掻いていた元魔も、地面の砂煙を上げて倒れた。
 
 だが。


 「・・・え・・・・・?」


 グググググ・・・とでも言うかのように、
 元魔は再び立ち上がってきた。
 その大きな体を持ち上げて、雷を受けた筈の腹部を抑えもせずに、
 またロクの目の前で立ち塞がった。

 「まだ立てる程体力あったなんて・・・!!」
  
 ロクが一瞬頬に汗を流し、後ろに1歩下がった瞬間、
 
 元魔の太い腕の先の手の爪が、ロクの目の前にまで迫っていた。
 
 「しま———————ッ!!?」
 
 見事右肩に大きく鋭い爪を食い込まされたロクは、肩を抑えて倒れこんだ。
 出血が止まらない。それでも、
 またロクは立ち上がる。

 「あたしだって・・・死ぬ訳にはいかない・・・・」
 「・・・・・」
 「あんた達みたいな元魔を全員ぶっ倒して—————」
 
 ロクは出血の痛さにも耐え、必死に走りながら、次元昌を唱える。
 その勇敢で恐怖をも味わわせる表情に、元魔の真っ白な目も見開いた。
 
 「そして・・・神族を倒してみせる——————ッ!!!!」
  
 ロクが地面に手をついた。
 砂埃が宙を舞い、ロクの姿がはっきりと見えた瞬間、

 「第六次元発動————————」

 ロクの右手の中からまたも金色の光が零れ、その凄まじい光に、元魔は目を晦ませた。

 「雷柱———————ッ!!!」
 
 突如、元魔の下の地面から大きく、太い柱のような雷が現れる。
 その雷の柱に包まれて、元魔は輪郭までもぶらされて焼かれるようになっていた。
 その姿はまるで、火に焼かれた蛙のよう。
 
 ・・・そして、今度こそやったと思った。
 だが元魔は再度、また立ち上がってきた。
 なんてしぶとい元魔だ、とロクは呟いた。 
  
 なんと、元魔は近くの大きな木に凭れかかっていた、

 あの女性の体を掴みとったのだ。
 
 「———————!!?」
 「な・・・った、助けて・・・!!お願い・・・ッ!!!」
   
 ロクはその現状を見て、静かに手を下ろす。
 まるで、勝手にすればいいとでも言うように。
 
 「逃げて!!私は誰一人として傷つけちゃいけないのッ!!!」
 「・・・・」
 「逃げて—————!!!」
 
 彼女の注意にも耳を傾けず、ロクはただ佇んでいた。
 元魔の目の前に立っていたロクを容赦なく痛めつける。
 次第にロクは口から血まで吐いていた。

 それでも立ち続ける、それでも一切逃げない。
 その勇士に、彼女は一筋だけ滴を流した————。