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- Re: 最強次元師!! ( No.5 )
- 日時: 2011/08/16 21:47
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: DxRBq1FF)
第004次元 わがまま皇女様Ⅱ
「やめてよッ!!貴方次元師でしょ!!どうして攻撃しないのよ…!!なん、で……っ」
女性は崩れるように泣き始めた。
勇ましくも健気で、1人の少女の姿を目の当たりにして。
ロクは掠れながらにも、ゆっくりと口を開いて言葉を発した。
「あたし…は……、人間を…誰も傷つけたく、ないの…。貴方と…同じなんだよ…」
「でも……ッ!!!」
「だから…攻撃なんてできな——————」
と、ロクがそう言葉を言った瞬間。
ロクの台詞を遮るように、元魔の腹部は寛大な血飛沫を散らした。
その元魔の腹部に突き刺さったのは、紅蓮に装飾された“双剣”だった。
「…——————俺の義妹を傷つけるとは良い度胸だな?元魔さんよ?」
そう、レトヴェールことレトの次元技————、“双斬”だった。
元魔は大きな口からも多量の血液を吐き出し、恨みに満ちた目でレトを睨んだ。
「ん、な……!?貴様…倒れたのではない、のか……!!」
「バーカ、あれくらいで倒れるわけねぇだろ」
元魔は少し後ずさりをし、レトから距離をとる。
然しレトはそれを責めるように元魔に近づき、追い詰めた。
「俺、今調子良いからなぁ…、遊んでやるよ」
レトはふっと笑ってそういうと、双剣を太陽に捧げるかのように振り上げて、
「第六次元発動——————」
そう唱えて、元魔に剣を向ける。
「八斬切りィィ——————ッ!!!」
深く足を土にめり込ませ、低姿勢で勢いをつけたところ、元魔に向かい走り出した。
元魔はその速さに追いつく事のできない自分の巨体を、初めて恨んだだろう。
レトは遠慮もなく、目にも止まらぬ速さで元魔の体に8回、斬り込んだ。
「ぐ…、あぁぁぁああ!!!!おの…れェェ…次元師ィィィ——————ッ!!!!」
元魔は大きい声を上げ、激しい爆発音と共に、煙に紛れて消えていった。
取り敢えず安堵の溜息をついたロクはぺたりとその場に座り込む。
それを見て、レトは咄嗟に駆けつけた。
「ロク!?お前平気よ…!?て、てかこの出血…」
「平気平気っ。慣れてるよ」
ロクの安心に満ちた声を聞いて、レトも少し安心した。
そしてレトは双斬を消し、そっとロクに手を伸ばした。
「義理の妹でも、なんか助けたくなっちまうな」
ロクはその言葉を聞いたと同時に、レトの手を借りて立ち上がった。
そしてレトとロクの会話を近くで聞いていた女性は、静かに2人に近寄る。
「……貴方達って凄いのね、有難う」
「そんな事ないさっ、でも褒めてくれて有難うーっ」
「…あ、あとであたしのお屋敷に来なさいよ!!絶対だからっ!!」
頬を赤らめてそう言った女性は止まる事なくせっせと歩く。
が然し、ふいに足を止めて、くるりと振り返った。
「…あたしの名前はレイス・トールザっていうわ。お、覚えておきなさいよっ」
今度こそ本当に最後の言葉らしく、もうレイスの背中は消えていた。
レトとロクはきょとんとしたままだったが、数秒後に互いに顔を見合わせて、
「とりあえず行くか」
「そだね」
と一言言葉を交わして笑い合った。
レトは怪我したロクを背中におぶり、街へと歩き出した。
騒がしい程の賑やかさを誇るの街中。
その騒がしくも見蕩れる光景を過ぎて、奥へと突き進む2人。
レイスの家、というのは物凄く大きな建物だった為、直ぐに見つかった。
「す、すげぇ…」
「でかさが半端じゃないね……この家」
その城の大きさは蛇梅隊本部が4つ入るくらいだった。
計算した2人は、後に計算しなければ良かったと挫折する。
差が違い過ぎたのだ。
「異常じゃねぇか」
「だねー…」
「…!?貴様等屋敷の前で何やってるんだぁーッ!!?」
2人で途方に暮れている時、ふと後方から大きな声がした。
ちらっと後ろを振り向くと、そこには息を切らした兵士が1人。
「え、とー…レイスって女に招待されたん…だけど?」
「そうそうっ」
兵士はじろりとレトとロクを見続け、
「その手で城に入ろうとしているのか?全く無理な要望だな」
「だーかーらぁー…俺達は本当に——————」
「成敗致す——————ッ!!!」
「…——————って人の話聞けよ!!!」
腰に剣を構えた兵士はその剣をレト達に向かって振り上げる。
流石に無罪な人を次元技では攻撃できない2人はその場であたふたしていると、
「待ちなさいッ!!その人達は客人よっ!!」
何処かで聞いた事のある、鋭くも凛とした声が3人の耳を過ぎった。
声の主の方を振り返る3人は同時に声を上げた。
「お、お嬢様!?ほ…本当なのですか…?」
「嘘つく訳ないでしょ…ったく」
「し、失礼しましたァーッ!!」
兵士は深々と頭を下げる。
その行動にレトもロクも申し訳なさそうにその場で佇む。
「ごめんなさいね、兵士が迷惑かけたみたいで」
「い、いやぁ…」
「流石この街のお金持ちだなぁ。兵士ってどのくらい雇ってんの?」
「ん?ざっと2万人?」
「「2…2万!?」」
声を重ねた事に寧ろ驚いたレイスは呆れ顔で溜息を吐く。
未だ驚いているレトとロクは指で必死に2万という数字を数えようとしていた。
「やば…。に、2万人ってちょっと……」
「蛇梅隊の援助部隊より遥かより多いじゃねぇか」
「まぁ、トールザ家だからね」
トールザ家。
それはラブーン財閥の次にお金持ちの家であり、大きな企業である。
この世界の営業関連の殆どはトールザ家が関わっていると言っても可笑しくはないだろう。
兎にも角にも、ロク達は城の中に入る事となった。
細かく繊細な絵画。
神々しい光を放つシャンデリア。
燃えるように真っ赤なカーぺット。
目につく物はどれも高級品ばかりだ。
「ほうほう…君達が我娘を助けた恩人じゃな」
「い、いえっ、それ程の事は…っ」
「お礼を言わせてくれ。ありがとう…」
広間に入った途端、レイスの父と顔合わせする事となった。
顎鬚の多いその顔は何故かサンタを思わせる。
「そこで、君達にもう一つ頼みがある」
「へ?何ですか?」
唐突の質問に、思わず素っ頓狂な声を出すロク。
「それは、先程のような退治だ」
「胎児?」
「違う」
「…ねぇ、そんなに速く突っ込まないでよ」
「いや、何となく」
2人の兄妹コントが終わったと同時に、彼は話始める。
「先程のような奴が山の麓に沢山いるらしい。だから早いとこ退治して欲しいのだ」
「これが依頼…か」
「分かりましたっすぐに行ってきますよ」
「然し、お気を付け下さい。そ奴等はユウゴウされてるとか言っていたのでな」
「ゆ、融合…!?」
「厄介だなぁー…融合物体は久しぶりだ」
融合物体とは、あらゆる元魔が力を望んで仲間と融合した姿の事。
あまり見かける事のない、珍しい元魔の一種だ。
「でも行くっきゃないでしょっ!!あたし達の仕事だしねっ」
「そうだな」
「言ってきます、レイスのお父様っ」
「健闘を祈る」
「言ってらっしゃい。まぁ精々頑張ってくるのね」
「レイス!!そんな言い方…!!」
「うん、精々頑張ってくるよ」
ロクとレトは2人で一緒にこの城を出て行った。
残されたレイスと父の親子は、ゆっくりと口を開き、
「死なないといいがね…」
「そう、ね……」
そう、案じるように呟いた。