コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.10 )
- 日時: 2010/02/16 18:35
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: hap96gvm)
- 参照: 紅兎です(>ω<。)
第009次元 幼馴染『キールア・シーホリー』
大樹に付いている濃い緑色の葉が風に大きく揺らされていた。
そこで、ロクが大きい声を出すために自然の美味しい空気を思いっきり吸い始めた。
「ただいまーーーッ!レイチェルーーーッッ!!」
「・・・・何やってんの?」
「見ての通り、挨拶」
「・・・・・・」
レトは一つ大きなため息を吐いた。
ロクは、気の遠くなりそうな長い坂道を両手を広げながら走りながら下っていった。
その姿は、何処かの映画に出てきそうなやんちゃな幼い女の子を想像させる。
屋根が燃えるような真っ赤な色で、壁がクリーム色になっている大きな一軒家に、辿り着いた。
「キールアーー!来たよーーーッッ!」
その家から出てきたのは、真っ白なワンピースを着込んでいる金髪の少女だった。
「おかえり、ロク、レト」
「うん!ただいま」
「ただいま」
彼女の名は、『キールア・シーホリー』である。
紫色のゴムで二つ結びにしている。
だが、ツインテールではない。
上の方で小さく二つに結んでいるだけだ。
医者の娘であり、見習いの医者だ。
この家で暮らすために、こんなにも若い時から働きに出ているのだ。
「キールアー!二階で遊んでいいー!?」
「うん。でも、あんまり散らかさないでね」
「あいあいさぁーッ!」
ロクがバタバタと階段を上がっていった。
レトが頭を動かして家の中をきょろきょろ見渡した。
「この家も久しぶりだな」
「疲れたでしょ?紅茶淹れてあげる」
「あぁ、すまねぇな」
「だっていつもの事だったじゃん」
レトとキールアが必要最低限の会話をし終わると、キールアがエプロンを着て、何かを作り始めた。
「ねぇ、レト」
「何だ?」
「来るなら来ると、連絡頂戴よね」
「まぁ、それはミスという事で」
「あんた、あたしがどれだけ苦労してくるか、知らないでしょ?」
キールアが少し怒ったように言った。
無理もない。
大変な仕事をしているのだから。
「あぁ、知らねぇな」
衝撃の一言。
しかも半分笑顔を見せている。
その言葉を聞いたキールアは、頭で何かが切れる音が鳴った。
そして、白衣の内ポケットから薬品の入った試験管を取り出し、思いっきりレトに投げつけた。
パリーンッッ!というガラスの音と共にレトが椅子からひっくり返る。
レトは、額から流れる血を抑えながら起き上がった。
「・・・・ッッ!てめぇキールア何しやがる!!」
「何?あんた医者の大変さを知らないわけ?」
「知らねぇよ・・・」
「なのにそんな軽い口叩かないの!!」
・・・・これが本来のキールアの性格だ。
一見、清楚な感じが漂うのだが、怒らせるとものすごく怖いという。
レトは、キールアを怒らせると怖い、という事を知っておきながら逆らったのだ。無理はない。
「でも、元気そうで良かったわ」
「あの薬、なくなったから欲しいんだけど」
「いきなり言ってもないから、作ってからになるよ」
「それでもいい」
「・・・・そう」
キールアは、何かを乗せたトレーを持ってきた。
「はい、あんたアップルパイ大好きでしょ?」
「おぉ!俺ちょうど腹減ってたんだよ」
「ロクも呼んでくる」
「待った。ロクを呼んだら俺の分がなくなる」
・・・・そこまでロクを信用してないのか。
キールアは心の中でそっと呟いた。
「レト」
「何だよ」
「ロクはやっぱり・・・・」
キールアが何か言いかけた。
だが、その顔は、何故か悲しそうだった。
「やっぱり、何でもないや」
「ロクには、何も言わないつもりだよ」
「そっか」
キールアは顔を隠しながら台所に向かった。
「・・・・心配か?」
キールアは、その言葉に、少し笑顔を見せた。
「ううん。そんな事ない。大丈夫、あたし、信じてるもん」
「信じてるって?」
「あたしの知ってるエポール義兄妹はそんなに弱い奴じゃない。そう、信じてる」
「そうかい。でも信じてもらうのって結構プレッシャーなんだぜ?」
「ははは。そっか」
「もうすぐロクの誕生日じゃない?」
「でも、あいつの誕生日、俺知らないし」
「そう、だけどさ・・・」
ロクの誕生日は、実は皆知らないのだ。
そう、ロクはクリスマスの日に拾われた捨て子だったから________。
ロクは、クリスマスの日にレトのお母さんに拾われ、レトと義兄妹になった。
でも、ロクとレトは本当の兄妹のように、お互いを信じあい、思いあっていた。
「ロク、下りてこないのかな」
「あいつ、久しぶりで、遊びまくってんじゃねぇの?この頃任務続きだったし」
「そうかもね」
キールアの家に泊まる事になったレトとロクは、お風呂に入り、すぐに安眠についた。
キールアはその時何を思っただろう。
この二人の義兄妹の見て、何を感じたのだろう。
キールアが自分の部屋に戻ろうとした瞬間、
彼女の背後に、誰かの姿が見えた。