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Re: 最強次元師!! ( No.71 )
日時: 2010/07/28 12:35
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: mwHMOji8)

第030次元 約束の朱い蛇Ⅵ

 「な、まさかお前!!」
 「・・・・この光り、まさか・・・」
 「ロク・・・」

 そして、ロクの体の光りは消えた。 
 だが、ロクの脳内に流れてきたのは・・・。

 「班長、新呪文だ!!」
 「本当か、ロク!?」
 「うん、間違えない」
 「こんな時に・・・」
 「なんて悪運が強いの?」

 ロクは一旦地面に膝を付いた。
 その後ろでは精一杯に掘り続けるフィラ副班の姿が見える。

 「そこをどけ!!」
 「どかないなぁ!!」
 「さぁあたしの新呪文を見せてやる!!」

 ロクは左手を相手に向けた。
 だが、まだどんな呪文かも分からない。
 それでもロクは、希望がある限り相手に隙を見せなかった。
 
 「————————、雷弾ッッ!!」
 「な、来るぞ、リリアン!!」

 雷弾と言われたその術は、ロクの左手の掌から無数の雷の塊が飛んだ。
 そして、一直線に相手に当たる。

 「ぐあああああッ!!」
 「雷の・・・塊、がぁ・・・」
 「すごいな・・・」
 「うっしゃぁッ!!」

 ロクはガッツポーズをした。
 だが、さっきの攻撃が強かったのか、少し体がよろける。

 「大丈夫か?ロク」
 「うん、これくらい・・・」
 
 フィラ副班は、荒い息を整えながら掘り続けた。
 でも、どうしても蛇梅は出てこない。
 
 「やっぱ・・・蛇梅は・・・」
 「諦めるなフィラ!!お前の友達だろう?仲間だろう!?」
 「でも・・・・」
 「最後まで諦めるな!!お前と蛇梅の約束はそんなにもろいものだったのか!!」
 
 班長が振り向かずにフィラ副班に大声で伝える。
 ロクは軽く微笑み、また立ちはだかる。
 
 「っくそ・・・なめやがって・・・」
 「まだまだ、やれるんだからね!!」
 「場所を変えよう班長」
 「あぁ、ここじゃ危険だ」

 ロクはきょろきょろと見回し、息を吸い、思い切り走った。
 
 「な、何を・・・・!?」
 「へっへーんだ、ついてこれるもんならついてきな!」
 「調子乗りやがって・・・!」
 「いいわよ、あんたなんか抜かしてあげる!!」
 
 ロクは俊足の速さで走り続ける。
 リリアンとリリエンはロクのあとを必死に追いかける。

 「あいつ・・・速い、なぁ・・・」
 「でも、速さだけじゃあたし達には勝てない!!」

 フィラ副班は、最後に土を触った。
 その時、違う感触がフィラ副班の手に感じた。
 
 (あ、れ・・・?)
 
 そして、もっと探してみると、思わぬ光景を目にする。
  
 「蛇・・・梅・・・・」

 フィラ副班は朱く、川のような模様に見とれた。
 この模様は、何処かで見た事のあるものだった。

 「ごめんね・・・・・?あたしが、遅かったから・・・・・」

 とうとう目からは涙が零れ落ち、朱い体に伝っていく。
 フィラ副班が蛇梅に触れると、何処からか、声がした。

 (フィ・・・ラ・・・名前・・を・・・呼・・・・んで・・・?)
 「え・・・・?」
 (いいから・・・・『朱梅』と・・・・呼んで・・・・・?)
 「ええ・・・・貴方のためなら・・・・!!」

 フィラ副班が蛇梅に触れ、大きな光りが放たれる。
 その姿にこの場にいた全員の顔がフィラ副班の方向へ向けられた。

 「次元の扉、発動___________」
 「なッ!?あいつ、いつの間に!?」
 「あたし達、こんなにあいつから離れて!?」
 「そう、これが目的____!!」
 「よく頭を使ったな、ロク」

 ロクはわざとこいつらとフィラ副班を引き離すために走っていたのだ。
 こういうところで悪知恵を働かすロクをすごいとこの時だけ思った。

 フィラ副班が決意を決めた目であいつらを睨む。

 「朱梅————————ッ!!」

 フィラ副班がそう叫んだ瞬間、蛇梅は拾った時と同じような大きさになった。
 そして、鋭い歯を向け、真っ赤な目を輝かせた。

 「14年も待たせてごめんね・・・?これからはずっと一緒にいよう?蛇梅」
 
 蛇梅が頷いたように見えた。
 フィラ副班は蛇梅と一緒に顔を頷き合わせ、今までとは違う生き生きした顔を見せた。

 「第八次元発動!!」
 「八次元だと!?あんなしょっぱなからあんな術が・・・!!」
 「朱溶毒!!」

 蛇梅はあの二人に向かって口から赤い毒を放った。
 そして、二人の体にべっとりとつき、下に流れていく。

 「な、なんだこれは!?」
 「ドロドロする・・・いや!!」
 
 そして、二人の武器がどろどろに解けていく。
 ロクも班長も唖然としていた。

 「い、いやあああああッッ!!」
 「なんでだ!?どうしてだぁ!!」

 リリアンは青ざめていて、もう身動きさえ取れない。
 でも、必死に毒をどかそうとする。
 
 「謝ってくれるのかしら?」
 「くそ・・・・!何故こんな奴らに・・・!!」
 「す、すご・・・・」
 「蛇梅恐るべしだな・・・」
 
 蛇梅はフィラ副班の肩に乗り、二人を見下ろしていた。
 フィラ副班はもう勝ち誇った笑みを浮かべている。

 「負けるか!!こんな、こんな奴らに!!」
 「まぁ残念ね・・・。第九次元発動!!」
 
 蛇梅もフィラ副班も、今再開を果たしたのに、二人はもう繋がれていた。
 絆という、強く太い糸で。

 「歯切朱連ッッ!!」
 「もう九次元を!?」

 蛇梅は大きく口あけ、二人の体を噛み続けた。
 蛇梅の歯は次第に赤く染まっていく。 
 二人は大きな声をあげたが、蛇梅はそれでもなお二人の腕や足を噛み続ける。
 
 「ご・・・めん・・なさい・・・・」
 「許してくれ・・・もう、戦えない・・・・」
 「そう、いい子ね」
 「動物大事にしないと、天罰下るよー?」
 「お前・・・、に言われたく・・・」
 「動物も生き物、あたし達も生き物。殺す理由なんて、1つもない」
 「・・・・」
 「あたしはあんた達が悪い人には見えないよ。誰かに言われてたんでしょ?」
 「そんなの・・・、言わないわよ」
 「言わなくていい、いい。あたし、信じてるからね?あんた達が変わってくれる事」
 「・・・・」
 
 リリエンとリリアンは黙り込んでしまった。
 その様子から、どうやら反省はしてくれたらしいが。

 フィラ副班は藍色の髪の毛を風に靡かせ、蛇梅を肩に乗せて颯爽と歩いた。
 班長はまだ唖然としていた。

 「何してるの?行くわよ?」
 「うんっ」
 「そうだな・・・」
 
 フィラ副班は蛇梅を見て笑った。
 こんな幸せそうな笑顔を見たのは久しぶりすぎて、班長とロクも笑った。
 ただロクと班長は、
 これからはフィラ副班を怒らせないでいようと思った。