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Re: 最強次元師!! ( No.82 )
日時: 2010/03/03 22:26
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 9H03YzTC)

第034次元 時を纏いし紅の少女Ⅳ
 
 「・・・代々私の一家は殺し屋。時を操り人を殺してきた。でもある日、私達は滅んだ」

 ———ある戦争によって。

 「それが、クリストラ殲滅戦。私達一家は今は無きクリストラの住人だった」

 クリストラと名を聞いた瞬間、ラミアもティリも青ざめた。
 どうやら二人は知っているらしい。

 「クリストラ、だと・・・!?」
 「あの滅んだ町が・・・・。クリストラ殲滅戦って大分昔の話のはずよ?」
 「そうだ。そこで幼児だった私は一人この世界に取り残され、今もなお町を壊し続けている」
 
 少女が言った言葉に嘘はなかった。
 『クリストラ殲滅戦』。
 昔戦争の場となった国の名だ。
 クリストラには殺し屋一家がいた。
 それがこの少女の親たちなのだろう。

 「私は誰も知らないこの世界で一人彷徨い続けた。私の姿を見る度に暴力を振るう奴もいた」
 「でもクリストラの戦争でクリストラの住人は誰一人として生きて帰ってこなかったんだぞ!?」
 「どうして貴方が今更この時代に?」

 クリストラ殲滅戦は今からおよそ122年前。
 とても少女が生きていられる年には見えない。

 「私はとっくに156歳だ。私の一家は長年生きていられる」
 「あぁ・・・そうだったな」
 「確か殺し屋の一家は長年生きる事のできる超人の体だったわね。どうりで」

 少女はまた手を構える。
 ラミアもティリも少し後ずさりをして構えた。

 「これで分かったでしょ。さぁ、死になさい」
 「また来るぞ!!」
 
 少女が目を閉じた。
 すると、ティリも目を閉じ始めた。

 「第六次元発動!!」
 「・・・・第七次元発動」
 
 少女が初めて次元唱を唱えた。
 ティリはまだ技を出そうとしない。

 「水柱ーーー!!」 
 「時技停止」

 少女が呪文を唱えた瞬間。
 ラミアの水柱が止まった。

 「な・・・なんだと!?」
 「私はまだ、本気じゃない」

 少女の持っていた短剣がラミアの腹を貫いた。
 そんな状況にも関わらずただ目を閉じ続けているのはティリだけだった。

 「ティリ・・・おま・・え・・・」
 「待って。まだ終わってない」
 「・・・・?」
 「この男は終わらせた。次はお前だ」
 「・・・・やるならやればいい。貴方に私は殺せない」
 
 ティリが少女にそう告げた。
 思いも寄らぬ言葉にラミアも目を丸くする。

 「良い度胸だ。いいだろう、お前も殺してやろう」
 「・・・・・・第三次元発動」
 
 ティリが小さく呟いた。
 でも三次元は最も弱い一次元に近い数。
 どう考えても今のあの少女には勝てない。

 「時の恐ろしさを知れ、小娘」
 「・・・・・・霊時移動」

 少女が時を止め始めた。
 ティリもラミアも止まっている。

 「・・・やはりな。これで終わりだな小娘」
 
 少女が短剣を抜き取り、思い切りティリに刺そうとした。
 思い切りティリに突き刺さる。ティリの体からは血が流れ、心臓も貫いた。
 少女が笑みを浮かべた————、その時。

 「あら、終わりじゃないけど?」

 少女の後ろからティリの声が響いた。
 少女は素早く振り向いた。

 「・・・・・!?お前、生きて・・・!!」
 「さっきのは霊。あたしの霊を操る能力をなめるんじゃないわね」
 「霊、だと・・・」
 「第八次元発動___!!」

 ティリが発動しようと手を構えた時、少女は時間停止をやめようとした。
 だが、少女の手は動かない。

 「あたしの霊は色々な事ができる。例えば時間移動、とかね」
 「まさか時間を移動させ、私の時間停止能力を封じたというのか!?」
 「霊操縛連!!」

 ティリが手を強く握りしめ、少女の周りに集まった霊が爆発していく。
 少女が倒れる頃にはとっくに時間は進み始めていた。
 
 「何故・・・・私の時間停止の中に・・・入る、とは・・・」
 「それは私が霊使いだから。時間停止なんてバカな事をするのが悪い」
 「・・・・ティリ・・・」

 ティリと少女の戦闘が終わったと同時にラミアとルイル、ガネストも起き上がった。

 「あら、しぶとい人達なのね」
 「おいティリ、もうちょっと言い方はないのか」
 「・・・生きてて真にめでたいわね」
 「感情こもってないだろ・・・」
 「でも良かったぁー!ね、ガネスト」

 ガネストは少し悲しい表情を浮かべた。
 ガネストはゆっくりと少女に歩み寄った。

 「ねぇ君、名前ないんだってね」
 「そうだ。私には・・・名前などない・・・。でももう死ぬのだ、悔いはない」
 「じゃあさ、僕が君に名前をつけてもいいかな?」

 少女の顔が変わった。
 でもガネストは真剣な眼差しを見せている。

 「『アルア』、これでどうかな・・・」
 「ア、ルア・・・・?」
 「いいねアルア!可愛い〜!」
 「似合うじゃん」
 「・・・ま、そうね」
 「私に・・・名をくれるというのか・・・・?」
 「あぁ、君はアルアだ」

 ガネストとルイル、ラミア、ティリ、そしてアルア。
 この五人はさっきまで激しい戦闘を行っていたのに、今ではもう仲間になっていた。

 「ほほぉ、もう任務は終わってたのか」
 「ずっるーい!あたしもやりたかったー!!」

 聞き覚えのある声がして振り向いたガネストは途端に笑顔になった。
 そこに立っていたのは金髪の髪と黄緑色の髪を持つ義兄妹。
 そう、エポール兄妹のレトとロクだ。

 「ロク、レト、来てたのか」
 「あぁ、ちょっと心配でな」
 「あーあ、あたしもやりたかったのにー」
 「何でお前は戦闘を楽しむんだ・・・」
 「見て見てロク!新しい仲間のアルアだよぉ♪」
 「え、本当!?、やった———」

 ロクがそういいかけた瞬間。
 いや、瞬間的な出来事だった。
 アルアは、自分の体に大きな爪が貫いたのを感じた。
 その場にいた皆の顔が青褪めた。
 そして、ルイルがその状況に耐え切れずに大声を張り上げる。

 「い、いやあああああああッッ!!」