コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.234 )
- 日時: 2010/03/29 22:02
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 9H03YzTC)
第053次元 昔の記憶
その後。
キールアが本部に連絡し、救助を頼んだ。
ロクは、あの中で一番動ける体だったため、本来目的の囚人を、捕まえに行った。
病室には、レト、ロク、ミルがいた。
ミルは応急処置をしていて、手術室にこもっていた。
「お前ら・・・、また戦ったのか?」
「俺らは、戦いたくなかったんすけどね」
「でも、逃げられなかったんだろ?」
「・・・・」
「いいや、逃げなかったのか」
班長がレトのベットの横でコーヒーを飲みながらレトに語りかけた。
まさか任務先で神族に出会うなど、ありえないと思ったのだろう。
「それにしても・・・・、この頃はよく神族が出るな」
「何か、狙ってるんじゃねぇの」
「・・・・レト、情報は何かあったんだろう」
「まぁ色々と」
「今度、会議を開くからその時に今知っている全ての事をここにいる全員の次元師に伝える」
「・・・・・」
レトは黙り込んでしまった。
流石に、神族を負けた事を悔やんでいるようだ。
「そんなに、落ち込まなくてもいいだろ、レト」
「・・・・・でも」
「でもじゃない。時には負ける事だってあるだろう。しかも相手は神族二体だ。勝てないよ」
「でも・・・、負けたんだ・・・」
「いいじゃないか敗北なんて。生きてただけで十分だよ」
いつもロリコン的なキャラしか見せない班長も、今回は少し真面目だった。
優しい言葉を、レトに投げかけ、必死にレトを励まそうとしている。
「でもなぁ、レト」
「何だよ」
「一つだけ、叱ってもいいか?」
「いい、ですけど」
「何でお前は・・・、今回・・・・」
班長が下を向いた。
両手の拳を膝の上で震わせている。
そして、素早く上を向いたかと思うと。
「どうして今回は可愛い女の子を三人も連れて行き、そして男が一人なんだよぉぉぉぉ!!」
(あぁ、そういうこと・・・・)
「お前なぁ!一人でハーレムでもしてたんじゃないのか!!キールアちゃんなんか新入りじゃないか!」
「えーと・・・」
「今回の件については少し厳しく怒るぞ、お前は男一人でしかも女三人と任務に行ったんだからなぁ!」
「はいはい・・・」
やはりそういう事だ。
班長が一番怒りたかったのは、やはりそういう事。
レトは脱力したのか班長の言葉を無視した。
「あ、あれほどいちゃいちゃするなと言ったのにーーーー!」
「何でそこにこだわる・・・・」
レトがため息をつくと、窓側の方ではロクが遠くを見つめていた。
その顔は、今までにない悲愴感のようなもので、何故かいつもの雰囲気を失わせた。
(ロク・・・・)
ロクは、一人で遠い空を見つめながら空に羽ばたく小さな小鳥を見送った。
(あの時の言葉は誰の言葉だろう・・・・、知ってるような・・・、知らないような・・・)
ロクが戦闘中に聞いた言葉。
『裏切り者』。
その言葉に今戸惑っていた。
聞き覚えのある優しい声。
その声がロクの頭の中で響いたという事は、誰かがロクに話しかけているという事なのだろうか。
それとも、ロクの昔の記憶なのか。
(そうだよ、あたし元々五歳までの記憶、ないじゃんか———)
ロクがレトのお母さんに拾われたのは五歳の時。
その時、ロクは自分が誰で名前が何か、さっぱり記憶を失っていた。
ロクの昔の記憶というのも考えられるが、それはまた、難しい問題だった。
(考えるのはやめよう、今、すっごく疲れてる)
ロクは、閉ざされた右目をそっと触った。
そして、左の大きな黄緑色の瞳をゆっくりと閉ざしていった。