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Re: 最強次元師!! ( No.338 )
日時: 2010/04/13 22:25
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 9H03YzTC)

第065次元 歌姫

 町の狭い道。
 そこでキラーは腕を抱えて壁にもたれかかった。
 ポケットから何やら発信機のような物を取り出した。
 
 「・・・キラー、例の件、どうなった」
 「はい。今実行中で、この町にいます」
 「そうか。なるべく早くだ。あの時の屈辱を晴らす」
 「分かってます。今回のは意外と簡単なので」
 「それだけだ。何かあったら言えよ、キラー」
 「はい」

 キラーは電話を切った。
 あの低い声の主は誰なのか。
 キラーは、誰と連絡をとっていたのだろう。

 「あの任務だけは——————————、必ず果たす」

                 *

 「レトー」
 「んだよ」
 「お腹すいた」
 「今日で何回目だよ」
 「多分、6回目・・・」
 「お前の食事代にどれだけかかると思ってんだよ」
 
 任務の帰り道。
 ロクのお腹はもう限界。
 お腹はもう大きな音をたて、空腹の知らせを伝えていた。
 その音は、誰をも困らせる魔の音だった。

 「そろそろ本部につくから我慢しろ」
 「えぇー!?遠いよー」
 「・・・しょうがねぇなぁ、ちょっと町でも見回るか?」
 「うんうん!そうする!」
 「・・・決まりだな」

 レトとロクは方向を変え、商店街の方で歩いていった。
 そこでリンゴやら少し少ないものを買おうと思ったらこの娘。
 ロクはリンゴをいきなり200個も頼んだ。
 そんなの店員さんも困るに決まっている。

 「えぇー、なんで200個はだめなの?」
 「常識を考えろバカ。いきなり200個なんて店員さんの困り果てた顔をお前も見ただろう」
 「だって・・・、お腹すいたぁ」
 「うるさい。とりあえず2個だ」
 「1個ずつ・・・?」
 「当たり前だろ」

 空腹のロクにはきつかっただろうが、普通のレトには十分だった。
 リンゴを食べながら町を歩いてる途中、ふとレトがこんな事言い出した。

 「あのさぁ」
 「ん?」
 「そういえばフェリーの本さ」
 「フェリーって第一図書館の?」
 「あぁ、その本に1つフェリーの呼び名があったそうなんだが」
 「へぇ、何?」
 「『歌姫』だとよ」
 「歌姫?」
 「あぁ、フェリーの暮らしてた町ではそう呼ばれてたらしいぞ」
 「歌姫、ねぇ・・・」
 「町一番の歌唱力の持ち主。1回聴いてみたいねぇ」
 「あたしだって歌なら負けないもん!」
 「お前も昔から歌大好きだもんな」
 「歌いながら歩いてもいいよ?」
 「勘弁してくれ」
 「うわ・・・・、早い・・・」
 
 町の中、笑顔でロクは歌いながら歩いた。
 フェリーは歌姫だった。
 その言葉が聞き捨てならなかったのだろう。
 ロクは小さい頃から歌が大好きで、よく母の前でも歌っていた。

 「お前なぁ、町の中だぞ」
 
 ロクはレトの言う事も聞かずに歩き進めた。
 だが、その歌声はまるで天使。
 透き通った汚れのない、清き声で歌い続けた。

 「いつかまた花開く、遠い遠い夢を探してー」
 「その歌、結構好きだなお前」
 「うん、大好き。題名は『遠い夢』」
 「お前は歌だけがとりえだよな」
 「黙らっしゃい」
 「はいはい」

 ロクの歌が終わる頃、ちょうど蛇梅隊に帰って来れた。
 班長に報告し、急いで食堂に向かう。
 レトはまたため息をついて、ロクの隣の椅子に腰をかけた。

 

 (必ずあの娘は俺が殺す———————)

 キラーは落ちていた紙を踏み、腕をまくり歩き始めた。
 キラー、剣闘族の今のターゲットのその娘とは、一体誰の事なのか。
 ただ、キラーはその娘を探して町を密かに歩いた。