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Re: 最強次元師!! ( No.370 )
日時: 2010/05/17 20:06
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 7hsLkTT7)

第075次元 青き謎の師Ⅱ

 レトとロクは、何も知らずにルノス・レヴィンという男の家に着いた。
 辺りを見回すと、そこはやはり普通の家だった。
 青く爽やかなカーテン。
 白いレースのシーツのかかった机。
 綺麗に整った台所。
 絨毯は薄い茶色の軟らかい素材のもので、
 オレンジ色に仄かに光る明かりが照らしている。

 「綺麗な家ですね」
 「まぁな」
 「恋人でもいたんですか」
 「ば、馬鹿かお前は。1人暮らしだよ」 
 「「へぇー・・・」」

 確かに綺麗になっていてまめに掃除しているようだ。
 とても男性の1人暮らしとしては綺麗すぎる。
 清潔な性格なのか。
 それとも綺麗好きなのか。

 「んで、何するんですか」
 「まぁまぁ、そうせかすな。ちょっと待て」
 「はーい」

 ルノスは冷蔵庫を漁り始めた。
 何かやっているのだろうか。
 
 「まぁ、飲め」

 ルノスはレトとロクの前にオレンジのジュースを差し出した。

 「?」
 「やった!ちょうど喉渇いてたんだよねーっ」
 
 ロクはぐいぐい飲み始めた。
 会社にいるおっさんのようにぱぁーッと一息つき、飲み干してしまった。

 「どうしたの?レト。飲んでないけど?」
 「ばーか、俺のジュースはねぇよ」
 「へ?あるじゃん」
 「これは幻覚だ。だろ?師匠」
  
 レトはコップを右手に持って思い切り下に向けた。
 だがコップからジュースは零れ落ちなかった。

 「う、そ・・・」
 「ほぉ、良く分かったな」
 「初っ端からやってくれるねぇ」
 「流石お兄ちゃんだな。ロクのには入れたんだけどな」
 「へぇ、何で分かったの?」
 「だって、このジュースは風が吹き込んで来ても1回も揺れなかった。おかしいだろ?」
 「すごーい!」
 「すごい観察力だな。俺の見込んだ弟子なだけあるな」
 
 レトはコップを戻し、ロクはじろじろとコップを見つめていた。
 幻覚なんて、レトはよく見抜けたものだ。

 「ってことは師匠の次元技は幻覚技ですね?」
 「あぁそうだ。俺は幻覚の技、『幻琉』だ」
 「へぇ、すごーい」
 「じゃあ次はこれだな」
 
 ルノスは本棚かなある本を取り出しレトとロクの前に置いた。
 ただ、1冊だけ出した。

 「これは?」
 「本だよ。さぁ、これはどんな本かなぁ?」
 「えぇー!?そんなの分かんないよー!」 
 「ふーん・・・」
 「ただし、本を触るのは禁止だ」
 
 レトはじろじろと本を見回し、机に手をつけた。
 ロクはもう諦めきった顔でジュースを飲んでいた。

 「中身のお話なんて分かんないよー」
 「いいや、これは小説とかじゃねぇな」
 「へ?何で?」
 「この本、どう考えても薄いだろ?それに・・・」
 「それに?」
 「古いしな・・・、ん?」

 レトが本の表面で何か見つけたようだ。
 そして、確信したように口元を歪ませた。

 「あぁ、そういう事か」
 「ほぉー、もう分かったか」
 「これ、本じゃないだろ」
 「え!?」
 「これは幻覚を使ってるな。この頁の部分、細かくなってないし、何より・・・」
 「何より?」
 「何より表面にすれた傷のあとみたいなのがついてる」
 「いい着眼点だな」
 「これ、本じゃなくて箱だな。この傷はいつも机の上にあって、取るときに傷でもついたんだろ」
 「すごいなぁ、ここまで分かるとは」
 「まぁ、一般論だし」
 「い、一般論・・・・?」

 この本らしき物を箱と見抜いたレトの才能は最早ロクを超えていた。
 触らず、ただ外見を見ただけで判断してしまうとはすごい観察力だろう。

 「お前はすげぇな。科学者にでも育てられたのか?」
 「いいや、親がね」
 「そうか。それじゃ早速修行と行こうか」
 「え、今までのは?」
 「調査。まぁロクは1つも答えてないけど」
 「ぶーっ」

 師匠は少し変わっている性格をしているのか、
 こういう問題は始めてみた。
 だが、その問題を解いたレトはすごいと言えるだろう。
 そして、レトとロクの本修行が、
 ようやく始まろうとしていた。