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Re: 最強次元師!! ( No.383 )
日時: 2010/06/22 19:12
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: mwHMOji8)

第080次元 青き謎の師Ⅶ

 暗く狭い道。
 その先にある小さな小川を乗り越え、レトとロクはやっと辿りついた。
 が。

 「し、師匠ッッ!」
 「何・・・これ・・・・」
 
 レトとロクの目には、師匠が血だらけで倒れこんでいる姿だった。
 師匠の前には大きな男が立っている。
 この状況は現実なのだろうか。
 それとも師匠が見せている幻覚なのだろうか。

 「おい、用はそれだけなのか?ルノス」
 「違うね。さっさと“今日”の事、あいつに謝れよ」
 「あぁ?知らねぇな、今日なんて」
 「師匠ッ!!」
 「!!、レト・・・、ロク・・・ッ!」 
 「何だ、餓鬼まで連れてきたのか、弱いなぁ、お前は」
 「お前ら・・・、此処まできたのか・・・?」
 「うん、でも何なのこの状況はッ!」
 「・・・・、いいだろう、説明してやるからちょっと待ってろ」
 
 師匠がよろける体でやっと立ち、胸の前で手を合わせてすぅっと息を吸った。

 「幻夢想像ッッ!」 
 「なッ!?」

 男の体は一瞬揺れ、紫色のシャボン玉のような物に包まれた。

 「い、今次元唱無しで・・・?」
 「すごい・・・」
 「いいか2人とも、よく聞いとけよ」
 「うん」
 「いつかは話さなくちゃと思ってたんだが、今日になるとは思わなかった」
 「今日・・・、って?」
 「まぁ、いいからよく聞いとけよ」

 ・・・・—————————あれは5年前。

 俺がまだ14の時だ。
 俺は幼い頃から元力を持っているのに、次元技の1つも使えないへタレ次元師だったんだ。
 それで、俺は『次元師育成学園』という所に通うつもりだったんだが、
 なんらかの手違いである研究所に送り込まれてしまった。
 それがメルギース次元師専門研究所だった。
 
 そこでは『人造次元師計画』という酷い実験が何度も繰り返されていたんだ。

 「人造次元師計画?」
 「そうだ。元力を持たない人間に無理やり元力を注ぎ込んで次元技を使わせる酷い計画なんだ」
 
 そこにいた俺は逃げる事もできずにただ研究所にいた。
 元力を無理やり引き出し、強制的な元力を得させようとする実験が何度も続いた。
 苦しくて、帰りたい気持ちでいっぱいだった。
 いっその事、死んでしまいたいくらいに。

 その初日俺は、間違えて隣の実験室に行ったんだ。
 そこで見たのは、1人の少年の姿だった。

 「あーーッ!まさかお前新入りなの?俺と同じ元力の持たない人間なのか!?」
 「い、いや俺は元々あるけど手違いで此処に・・・・」
 「なぁーんだつまんねぇなぁ。お前だけ次元師様様かよ」
 (何なんだこいつ・・・)

 俺の事をきょろきょろと見回して、珍しそうに俺の事を見ていたんだ。
 紺碧の光沢のない髪の毛。
 明るく青白に光る綺麗な瞳。
 そしてなにより溌剌で元気なその性格。

 俺とは真逆だったんだ。

 「俺、ギアスって言うんだ、お前は?」
 「俺ルノス。ルノス・レヴィンだ」
 「そか、ルノス、宜しくなッッ」
 「あぁ、こちらこそ」
 
 此処で知り合ったんだ。
 俺とギアスは。

 「あ、俺の友達紹介するわ。おーいクリナー!」

 クリナと呼ばれたその少女は遠くからこっちに振り向いた。

 「あ、ギアスっ!」
 「新しい奴だ、結構なイケメンだぞ〜?」

 誰がイケメンだ。
 そう突っ込みたくて俺はたまらなかった。

 「わぁホントだ。私クリナ。貴方は?」
 「俺はルノス」
 「かっこいい名前だね、宜しくねルノス君」
 「あー!ルノス、俺のクリナにちょっかい出したら川流しの刑だからなッ!」
 「何だよそれ」
 「こらこらギアス。ちょっと違うでしょ?」
 「何が違うんだよーッ」

 そうやって、俺達3人は仲良くなっていた。
 どんなに辛い実験の日々でも、
 夕方になれば毎日あいつらに会える。
 それだけで俺は嬉しかったんだ。

 そう、あの日にあんな事さえなきゃ、俺達は一生付き合っていけたんだ。