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Re: 最強次元師!! ( No.402 )
日時: 2010/06/30 16:40
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: mwHMOji8)

第086次元 小さな強き約束Ⅰ

 レトとロクは、リルダの言われるがままに、岩で崩れてしまった出口へとたどり着いた。
 リルダはぴたっと止まり、レトもロクも止まった。

 「では、行きますね?」
 「う、うん・・・」

 リルダは手に何も持つ事なく、すぅっと息を吸い始めた。

 「次元の扉、発動—————ッ!!」
 「「えぇーーーッ!?」」

 ロクもレトも、2人同時に驚いた。
 
 「ま、まさか・・・・?」
 「爆落ッ!!」
 
 リルダは、手から突如現れた爆弾を持って、手を構えた。
 
 「第三次元発動、爆連!!」

 リルダが爆弾を払うようにして投げ、大きな岩にぶつけた。
 その衝撃で、岩はいとも簡単に崩れ、外の明かりが零れ込んできた。

 「え・・・」
 「まじ・・、で?」
 「ほら、もう出れますよ」
 
 まさか、自分達の助けた少年が次元師だったなんて、心底思ってなかっただろう。

 「どうする?ロク」
 「どうするって、あたしは蛇梅隊に入れたいけど」
 「だよなー・・・」
 「?、どうしました?」
 「「なんでもないです」」
 「は、はぁ・・・」

 リルダは、きょとんとしたあとに、山の頂上を目指し、泉に向かった。
 泉にはあの村長、ヒュウド・エイテルが待っていた。

 「おじいちゃんっ!」
 「ッ!?」
 「ただいま戻りました、村長」
 「り、リルダ・・・、よく帰ってきたなぁ」
 「うん、この人達が、助けてくれたから・・・」
 「そうか、本当にありがとうな、義兄妹よ」
 「まぁ、任務だし」
 「これくらい昼飯前ですっ!」 
 「朝飯だ、ばか」
 「え、そうだっけ・・・?」
 「・・・ところで村長、例の・・・」
 
 ロクの質問にも無視し、レトは村長に話を切り出した。
  
 「あぁ、神族の情報だったな」
 「あ、あと」
 「?」
 「お孫さんを、蛇梅隊に入隊させてはいけませんでしょうか?」 
 「な、なんと!?」
 「え・・・、えぇ?」
 「俺達は今、次の戦争に備えて戦力を集めています。リルダの次元技をお借りしたいのです」
 「ぬぅ・・・、リルダは、どうじゃ?」 
 「ぼ、僕、無理ですよ・・・っ」
 「・・・じゃあ、本題に入らせてもらいます」
 
 レトが話をしようと思った時、ロクがつんつんとレトの背中を指で触った。

 「ちょっと、いいの?」
 「まぁ、リルダ次第だし。無理言ってもダメだろ?」 
 「まぁ、そうだね・・・」
 「・・・確か、神族の事について、だったな?」
 「あ、はい」
 「神族にはそれぞれ名前があるのは知っておるな?」 
 「え、と・・・」
 「下から順に、ワルド、グリン、アニル、デスニー、フェリー、そして、ゴッドじゃ」
 「ゴ・・・ッド・・・?」
 「一番最強にして最悪の神族、ゴッドじゃ」
 「ゴッドって、神って意味?」
 「まぁなぁ。神の中の神、というべきじゃろう」

 神の中の神。
 それは未だレトとロクの前に現れていないゴッドの正体だった。
 どういう意味を示しているのやら・・・。

 「神の中の、神・・・」
 「村長さん、順番って・・・?」
 「あぁ、神族はそれぞれ全員強いが、やはり神の力の差であって力の強い順番があるそうだ」
 「んで、一番強いのがゴッドか・・・」
 「ゴッドは今、千年前の裏切り者、フェリーを探して世界中をまわってるはずじゃ」
 「へ?なんで?」
 「フェリーは千年前に人間のために死んでいった。それが許せないのじゃろうて」
 「へぇ・・・」
 「今のゴッドは、千年間、1度も死ななかったからのう」 
 「い、1度も・・・?」
 「嘘だろ・・・」
 「まぁわしが知っているのはそれぐらいじゃ。ありがとうな」
 「はい、お手数をおかけしました」
 「ありがとうございます」

 ロクはとレトは深く、丁寧にお辞儀をし、手を振って帰っていった。

 「・・・リルダ、本当にいいのか?」 
 「だって、僕弱いし・・・、戦闘に向いてないというか・・・」
 「・・・そうか、本当にそれがリルダの判断なら、いいんじゃよ」
 「・・・・」

 リルダは、何か思いつめた顔をして、ぎゅっと村長の服の裾に捕まっていた。

 『やーいやーい!』
 『弱虫リルダー、泣き虫リルダー!』
 『うぅ・・・、やめて・・・、よぉ・・・』
 『こら貴方達!いいかげんにやめなさいッ!』
 『げ、リルダの母ちゃんだ』
 『逃げろ逃げろーー!』

 僕はいつも、公園に行ったって、何処へ行ったって、いじめられていたんだ。
 弱いし、泣き虫だったから・・・。
 それで、お母さんにいつも助けてもらってた。
 
 「リルダ、貴方も嫌なら嫌っていいなさい」
 「だって・・・」
 「お母さんはね、リルダに強くなってほしいの。誰にも負けない、強い男の子になってほしいの」
 「んじゃあ、僕が強くなったら、お母さんは喜んでくれる・・・?」
 「ええ、リルダの事、ぎゅーってしてあげるっ!」
 「僕、強くなるよ、お母さんっ!」
 
 大好きなお母さんとの約束。
 いつか、絶対に強くなって、お母さんに抱きしめてもらうんだって。
 僕は、頑張って、強くなろうとした。

 でも、所詮は僕、弱かったんだ。

 「何やってんだよ弱虫リルダー」
 「そんなところで石ころなんか蹴ったりして、遊んでんのー?」
 「ち、違うもん!つ、強く・・、なろうって・・・」
 「ばーか!お前じゃ無理だよ、生まれつき弱いじゃん」
 「この世の中、強い奴がもっと強くなれるって、母ちゃん言ってなかったかー?」
 「そ、そんな・・・」
 「お前じゃ無理無理!」
 「弱虫は弱虫なりに頑張れよー?」
 
 男の子達は、笑いながらそう言って帰っていった。
 やっぱり、僕は弱いまんまなんだ・・・。

 「僕は・・・、弱いんだ・・・」

 泣きたくなるほど、苦しいほどに、
 僕は自分の弱さに痛感した。

 「あ、おかえりリルダ」
 「・・・ただいま」
 「今日の晩御飯何にしようか?シチューかな?それとも・・・」
 「やっぱり、嘘だったじゃないか・・・」
 「え?」
 「やっぱり、つよくなれるなんて、嘘だったじゃないか!!」
 「何言ってるの?リルダ」
 「僕はお母さんを信じて強くなろうとした!でも、強いも弱いも、生まれつき決まってるんだ!!」
 「リルダッ!!」
 
 僕はもう太陽が沈む頃に、思い切り走り出していた。
 家を飛び出して。
 お母さんは嘘つきだ。
 弱いも強いも、生まれつき決まってるんだ。
 それが僕が弱い何よりの証拠・・・。

 「お母さんなんて、大嫌いだ・・・」

 僕は、清く流れ続ける川に向かって石を1つ投げた。
 いっその事、このまま落ちてしまおうか?
 流れ着いた先は、きっと幸せだ。
 こんなに弱い僕を、誰が、誰が信じてくれるの?
 
 もう、僕には耐えられない・・・——————。