コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.480 )
- 日時: 2010/07/30 17:25
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: mwHMOji8)
第111次元 隠せない真実
「ッ!!?」
バッ!!という風にベッドから起きたのはロクだった。
頭を抱え、何か不思議な顔をしていた。
(今・・・、何か聞こえた気が・・・)
そんなわけないか、と呟いたロクがやけに静かな廊下を目の当たりにする。
ロクはこの時、神族が現れていた事すら気付いていなかったのだから。
「・・・そう、いえば」
ロクはぽつりと何か言葉を零した。
「どうしてレト・・・、あたしが神族だって分かったんだろう・・・」
それが1番の問題だった。
もしロクを神族と言うならばそれなりの理由があったはず。
まさか元力だけで決め付けるとは思えない。
「神族って、確か神章があったような・・・」
神章、それは神族の証である消す事のできない永遠の傷。
アニルにもグリンにもワルドにも、確か神章はあったはず。
(お風呂とかに入っていればあたし自身も気付くはずなのに・・・、
誰にも気付かれず、また本人にも気付かれる事のない場所なんて・・・)
ロクが必死になって考えていると、手に持っていたくしを、いきなり落としてしまった。
(いや・・・、まさかね、でもあそこ以外に皆にバレずに人族としてやっていける所はない・・・)
ロクは恐る恐る鏡の前に立ち、自分の顔を忌々しく見つめた。
顔には神章はなく、だがロクは気付いてしまったのだろう。
自分の神章の場所、を。
ロクはごくりと喉を鳴らし、なんと首に巻いてあった紐のチョーカーを解き始めた。
このチョーカーはレトからも、お義母さんからも取ってはいけないと言いつけられていた。
だが真実のため、ロクは結び目を解き、長い髪を左に集めた。
そして、後ろに鏡をまわした時———————、
「・・・——————ッ!!?」
ロクの予想は的中した。
その衝撃のせいで、床に鏡がすとんと落ちてしまった。
「やっぱり・・・、神章はここだったんだね・・・」
(あたし自身も気付けるはずがない・・・、だって項にあったんだもん・・・)
そう、ロクの神章は項に刻まれていた。
首の後ろ、つまり丁度チョーカーの真ん中の黄緑の鉄板がついているところ。
だからだった、ロクが数年神章に気付かず、また回りも気付く事ができなかったのが。
ロクは長い髪の毛を持っているため、首の後ろが絶対に隠れる。
それにチョーカーは外してはいけない約束になっていたため、取る事はできなかった。
これが決定的な証拠、神族である証だった。
「・・・そういえば外が騒がしいな・・・」
ロクは窓のカーテンを開け、外の景色を見た。
「・・・・・ッ!!?」
そこには思いがけぬ最低最悪の光景。
蛇梅隊次元師が倒れていて、レトがただ1人、血に塗れながらも立っていた事。
だがレトももう立っているのも、呼吸するのも精一杯なせいかその剣を掴んでいる手は震えていた。
「助けに行かなくちゃ・・・————————ッ!!!」
ロクは自室から駆け出し、1階の大きな扉の前に来た。
ロクは扉を開けようとする。
だがロクの心自身、それを許しちゃいなかった。
(そうだ・・・、だってあたし、神族なんだ。もし人族を助ければこの世の掟に反する。
でも、そんな事を言ってるうちに皆が・・・、いや、でも事実は隠せない・・・)
何度も悩み、何度も扉を開けようとする。
だがその手は幾度動かそうとも全く動かない。
躊躇するその手で、ロクはガンッ!!と扉を叩き、崩れるように床に座り込んでしまった。
自分は何もできないのか、裏切り者にしかならないのか、と誰よりも大きな悩みを抱えながら。
ロクはいつの間にか扉の前で座っていて、ただ目の前の現実を避け、隠せぬ真実に囚われていた。
「へぇー・・・、まだ起きるんだ?」
アニルがレトに一言告げた。
レトは先ほどの攻撃を喰らってなお、立ち上がったのだから。
「しぶといねぇー、やっぱ“運命”が認めただけあるわ」
「その名で呼ぶと分かりにくい」
「そだね、っていうかレトヴェールは殺しちゃいけない決まりだし、どうしようーか?」
「デスニーの気に障る直前まで痛みつければ?」
「・・まぁそうかもねー、あ、そういえば・・・」
「・・・?」
「妹、いるよね?ロクアンズ」
「—————ッ!!?」
「あの子、なぁーんか握ってそうなんだよねぇー」
「何かって?」
「僕達も知らない、ひ・み・つ、とかぁ?」
(こんなところでロクの正体は明かせない・・・ッ!!!)
「兄なら、知ってるんじゃないかなぁって」
「し・・・、知らない」
「へぇー?」
「俺は、何も知らないぞ?」
「んじゃあ・・・——————」
アニルが爪を伸ばして、にやりと卑しく微笑んだ瞬間————————、
「今度はちゃーんと殺してあげる、例えダメでもね♪」
グ・・・、シャ————————————ッ!!!!
「ぐ・・・ぁぁぁああああああッ!!!!」
レトの大きな叫び声を聞き、ロクがはッとしたように顔を上げた。
「レ・・・・、ト・・・・・?」
(嫌な予感がする・・・————————ッッ)
ロクは扉に手をかけた。まだその手は震え上がっているにも関わらず、
「例え義理でも兄が大変な時に、神もクソも言ってらんない—————————ッ!!!!」
ロクはそう振り切って、大きな扉を開けた。
その先にいる義兄を助け出すため、また、
自分の現実と向き合うために。