コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.489 )
- 日時: 2010/07/31 21:19
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
第113次元 不思議な歌声
あれから数日。
仲間の意識が徐々に目覚め始めた。
あの場でロクの正体を、皆が知ってしまった事になるのだろうか。
班長は確実に知っているが。
なんとレトも、奇跡の生還を遂げた。
「レト、目覚めた?」
「あ・・・あぁ、もうすっかり」
「ロク・・・、のことなんだけどね」
「?」
「ロク、やっぱり知ってたみたい。自分が神族だって」
「ッ!?」
「戦ってる時、偶然にもあたし聞いちゃったの。それにロクは自覚してた」
「そうか・・・、いつかは言わなきゃって、思ってたんだけど」
「ロクにとって、最悪の誕生日になっちゃったね」
そう、わずか数日前、
あの日はロクの誕生日である12月25日だった。
最悪最低の誕生日を迎えてしまったロクは、未だ目を覚まさない。
「もう他の奴らにもバレたの・・・かな」
「いや、皆あの時は気絶してたし。それより今はその大きな傷、治しなさいよー?」
「あぁ・・・、もう本当に動けないんだなぁ、俺」
「神族って、あんなに強かったんだね・・・」
「まぁたった6人でこの世の人間滅ぼそうとしてるだけの事はあるな」
レトはあの日以来1歩も動けず、体中が痛すぎて腕も脚も動かせないらしい。
キールアは一言元力がなくなるわ、と文句を放って次の患者の元へ歩いていった。
「あ・・・、ルイル」
「キールアちゃん、ありがとー」
「ううん、これもあたしの仕事だし」
「あの・・・さ」
「ん?」
「ロクちゃんって、神族だった・・・、の?」
「・・・・」
「あたし、ちょっと分からなかったけど、でもあれロクちゃんだよね?首に神章もあったし」
「うん・・・、そう、だね」
「衝撃的だなぁ・・・、まさか敵だったなんて。これからどうすればいいんだろうー・・・」
「あたしも分かんない。あの時はびっくりしたし」
「だーよねー・・・」
ルイルも見ていたのだろう。
怒り狂い、周りの景色など目にも入ってなかったあの神族のロクを。
多分ロクの目には神族以外なにも映っていなかっただろう、あの目は確かにそう訴えていた。
「ロク・・・、まだ起きないのかな・・・」
キールアは医療室でただ1人、ため息をついていた。
「ねぇ・・・、キールアちゃん?」
「あぁ、なんでしょうフィラ副班」
「貴方の次元技の事についてなんだけど、今いいかしら?」
「はい、全然構いません」
「まぁこれは知っておいてもらいたいだけなんだけどね。貴方の次元技、名前がないでしょう?」
「あぁ・・・、はい」
「実は千年前のアディダス・シーホリーはその次元技だったらしいわ」
「あ、アディダスがッ!?」
「ええ、名前からして貴方の祖先だとは思うけど・・・」
(あの・・・、悪魔の血の張本人・・・)
「アディダスの場合、その次元技には『慰楽』と名づけられていたそうよ」
「慰楽・・・」
「でも貴方は多分、慰楽、と叫んでも次元技は発動しないでしょうね」
「へ?何でですか?」
「次元技というのは発動する際に必ず頭に名前が浮かんでくるもの。そうでないのは名前がない証拠」
「というと、あたしのはまだ・・・」
「ええ、あとでその次元技の調査も進めるけど、今は大変な時期だものね」
フィラ副班はキールアにそう言って、また空を見上げるように窓を見つめた。
だが、ロクが神族だというのは極一部しかしらない情報。
あの時気絶していた殆どが知らないはず。
そして、夜を迎えたある日。
レトは1人、眠れずにいた。
(俺・・・、ホント何してんだろうなぁ・・・)
レトは窓越しに夜空に浮かぶ月を見上げながらそう思った。
レトは車椅子に座り、気晴らしに隣の部屋に行こうと車輪を運ばせた。
隣の部屋は孤立していたロクが眠っている部屋だった。
だがロクは眠ってはいなかった。
そう、ロクは意識もないのにただ椅子に座っていたのだ。
瞳の色も淀んでいて、まるで動かぬ人形。
と、その時だった。
「いつか・・・、花・・・く」
(・・・?)
なんとロクが、歌っているような声を上げたのだ。
その現状に驚いたレトは耳を澄ませて歌を何度も聴いていた。
途切れ途切れで何を歌っているかも分からぬ名も無き歌を。
(ロク・・・、寝てるんじゃないのかな・・・)
レトは、ロクとその部屋で一緒にいた。
背中合わせでロクの歌声を聴きながら、レトは静かに夢に落ちていった。
そんな日々が、幾日も幾日も続いていった。