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- Re: 最強次元師!! ( No.504 )
- 日時: 2010/08/06 18:49
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
第118次元 執念
もうもはや国中の人々が知った事であろう。
ロクは自分の噂をされているのに気付き、冷や汗をかいてレトに呼びかけた。
「レ・・・、レト、行こ・・・う?」
「あ・・・あ、あぁ」
「・・・どっか行くらしいよ?」
「もうさっさと消えて欲しいよな?」
街の人々の声が全てロクの耳に入る。
1つ1つの言葉に、レトは怒りを抑え震えていた。
「あーあ、やっぱ神族って人間滅ぼすだけの奴だったのか・・・」
「がっかりだよねー・・・」
「・・・・おい」
レトは、もう耐えられなくなったのか、いきなり声を出した。
街の人々はこちらに振り向き、不思議な顔をしている。
「悪口言うのも、そこらへんにしないか?」
「はぁー?第一義妹が神族で、憎もうともしないのか?お兄さんは」
「あぁ、全然」
「えー・・・、有り得ない・・・」
「さっきから聞いてりゃロクの悪口ばっか言いやがって、他に何か言う事ないのか?お前ら」
「ちょ、ちょっとレト・・・ッ!!」
「他に?ないよな・・・?そんなの」
「・・・感謝の言葉も分からないのか?」
「感謝?」
「半年前、この街に2人も神族が来ただろ?あの2人を始末したのは・・・————————」
「もう、いいよレト」
「ッ!?」
ロクは、レトの服の裾をぎゅっと掴んで、レトにそう告げた。
ロクは俯いた顔を上げ、苦笑いをした。
「言ったじゃん、どんなに人間に嫌われても、あたしの目的は変わらないって」
「でもあいつらは・・・ッ!!」
ロクは首を振った。
今にも泣きそうな顔で。
「お願いだ・・・から。もうやめ・・・——————」
ズ・・・・・ン・・・・・、
「な・・・、何の音だ・・・?」
「・・・・元魔かもしれない」
「ッ!?こんな街中でかッ!!」
「きゃぁぁぁぁッ!!」
「怪物が来るぞーーーーーーッ!!!」
「・・・くそッ!!」
「行くよ、レト」
「わぁってらぁッ!!」
先ほどの音は、元魔の足音だった。
だがあれほど巨大な音なのに、
何故かまだ近くにはいなかった。
「まさか・・・新元魔のやろうか・・・ッ!?」
「可能性大。侮れないよ」
次第に足音は大きくなり、レトとロクの目の前にもその忌々しい姿を現した。
この大きさは・・・やはり新元魔だった。
「くそ・・・住人は全員非難したのか?」
「多分・・・ね」
「・・・気を抜くなよ、ロク」
「了解」
新元魔は大きく手を振り上げ、2人に真っ逆さまに落としてきた。
だがその攻撃は外れ、2人に掠りもしない。
「・・・命中型じゃ、なさそうだな」
「グアアアアアアアアァァァァァッ!!!」
「・・・大声型か?」
「んなわけないでしょ・・・」
元魔の攻撃を交わし、またこちらからも攻める。
そんな攻撃の繰り返しが続いていた。
だが2人は見落としていたのだ、1人の子供を。
「いやぁぁぁぁぁあああッ!!パパッ!!ママぁぁぁぁあぁッ!!!!」
「ッ!?」
「小さい・・・子供ッ!?」
「・・・捕まえ・・・た」
「やばい・・・ッ!!元魔に捕まったッ!!」
小さな女の子は元魔の手の中にいた。
今にも握りつぶされそうな小さな小さな子供を見て、下で嘆く母親。
「誰か・・・、誰かうちの子を・・・ッ!!!」
「どうする・・・?子供がいるから無闇に攻撃できない・・・」
「・・・・レト」
「ん?」
「ちょっと、離れてて?」
「何・・・するんだ?」
ロクは何も言わずただ口元を歪ませて、
たった1人で元魔の元へと走っていった。
「ば、バカッ!!攻撃が当たるぞッ!!!」
「パパ・・・、ママぁぁああああッ!!!」
(何を考えてんだよ・・・あのバカッ!!!)
「・・・自ら来る・・・とは・・・。愚か者・・・・め」
「愚か者、か。そう言われるなら、そうでもいいけど」
「何をしようと言う・・・・?今娘はこっちにいるんだ・・・・ぞッ!!!」
「・・・、ッ!?」
元魔はあいている右手で地面にいるロクに拳を向けてきた。
1歩間違えれば死亡に繋がる、だがロクは1歩も動かずにいた。
「風撃ーーーーーーーーーッ!!!!」
そう、右手を突き出し、ロクは風撃を唱えて拳に向けた。
その勢いで子供は落ち、ロクが子供も元へ走り、抱き抱えた。
「もう・・・・大丈夫だから・・・」
とロクが言いかけた瞬間・・・————————、
元魔が拳を怒り狂ったようにこちらに隼の如く向けてきた。
「ロクーーーーッ!!!」
(護るんだ・・・、絶対にッ!!!!)
その拳は落とされ、地形が変わるほどにまでの威力を見せ付けた。
ドーム型のようにして凹んだ地面からは、ロクと子供の姿。
だが、子供は一切怪我をしていなかった。
「な・・・にが・・・?」
「ママ・・・、ママッ!!」
「良かったわ・・・っ!本当に・・・」
(ロ・・・・、ク・・・・・?)
地形が変わった地面からはロクの姿が見られたが、ロクは動こうともしなかった。
「おい・・・ロクッ!!」
「・・・・ご・・・め・・・」
「ッ!?」
だがロクは血反吐を吐きながらも立ち上がり、腕を押さえてレトの元へ歩いてやってきた。
「ロク・・・、お前・・・・」
「護る事・・・・できて・・・良か・・・・————————」
ロクは、言葉を言い終わる事なく崩れるようにして倒れこんでしまった。
さっきの攻撃はプロの次元師が受けても相当の怪我になる。
そんな多大な力に挑むほど、ロクの目的というのは固いものだったのだろうか。
「・・・・・」
「やっと・・・、始末でき・・・た・・・」
「・・・、始末?」
「そうだ・・・始末だ・・・・」
「そうか、お前、めでたい奴なんだな。でも、運悪いぜ?」
「・・・・・?」
「あと2秒で死ぬから」
レトがそう元魔に告げた瞬間、
ザシュ————————————————————ッ!!!!
とっくに元魔の体は斜め半分に切れていた。
元魔は驚く暇も与えられず、体に大きな切込みを入れられた。
あの状況で、しかもあの小さな剣で、
どうやって元魔に一瞬にして切り込みを与えたというのだろうか。
2秒が経過した頃には、元魔は崩れ去っていた。
一体何が起こったのか、
近くにいた子供の母親も目をまん丸にして驚いていた。
「・・・・・やっぱ、お前はすげぇな、ロク」
自分の執念を貫き通したロクは未だ目を覚まさずにいた。
ロクはこの時まだ生きていたのにも関わらず起きなかった。
あの時、母親と子供が嬉しそうに泣きながら抱き合っているのを見たから。