コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.507 )
- 日時: 2010/08/09 11:18
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
第119次元 騒乱
「・・・・・」
元魔が消え去ると、街の人々は帰ってきた。
恐る恐る、ちらちらとレトに目をやりながら。
「・・・さ、流石レトヴェール・エポールだよ、な?」
「うんっ!あ、あんな怪物を1発で倒しちゃうんだもんっ!」
「千年前から続く正義の英雄だもんな、エポール家は・・・」
「本当に助かっ・・・」
「それだけか?」
街の人々がレトを煽て上げている時に、レトは冷たくそう言った。
住民は黙り込み、俯いてしまった。
「だ、だってあの怪物を倒したのはレトヴェールさんだろうっ!?」
「それ以上に何か言う事でもあるの!?」
「そうだそうだっ!!あの神族が何かやらかそうとも、神族に変わりはねぇっ!!」
「何でわざわざ子供を助けただけの神族を褒めなくちゃいけないのよッ!!」
「そうだそうだッ!!」
いきなりの住民達の反発に少し驚くレト。
その横でロクが荒い息を立てながら寝そべっていた。
そう、なんとコールが始まったのだ。
「かーえれッ!!、かーえれッ!!」
「かーえれッ!!、かーえれッ!!」
「かーえれッ!!、かーえれッ!!」
「な・・・・、な・・・ッ!?」
「さぁ帰れよ神族ッ!!」
「神族の場所があるんでしょうッ!?」
「かーえれッ!!、かーえれッ!!」
「かーえれッ!!、かーえれッ!!」
「かーえれッ!!、かーえれッ!!」
次第に住民全員がレトとロクを囲むようにして現れた。
そのうちに声は大きくなり、蛇梅隊本部にも声は響き通った。
「班長ッ!!街で何やら騒乱が・・・ッ!!」
「・・・私は知らん」
「班長ッ!!!、レトとロクが責められてるんですよッ!?」
「それはあいつらが回避するものであって私には一切関係ない」
「・・・・班長、隊員達が危ないというのに、本当にそれでいいんですかッ!!!」
「・・・・・フィラ」
「・・・?」
「ああいう道は大人達が案内するものじゃない。自分達で歩んで行く事だ」
「どう・・いう・・・」
「まぁ任せてみたらどうだ?未来の英雄に」
「・・・?」
「あいつらは絶対に挫けない。私はそう思うけどな?」
「・・・・分かりました」
「・・・あ、ところでフィラ」
「何ですか?」
「見ないうちにちょっと髪の毛伸びた?」
「・・・・・それ、今関係あるんですか?超ド級のロリコン班長さん」
「・・・毒舌だねぇ、君も」
班長は手を出すな、と令を下した。
だが本当に2人だけであの場を乗り越える事はできるのだろうか。
「かーえれッ!!、かーえれッ!!」
「かーえれッ!!、かーえれッ!!」
まだ反発は続く。
「・・・・レ・・・ト」
「・・・?」
「もういいよ・・・、あたし、精一杯・・・やったし・・・」
「・・・そういうわけにもいかないだろ。義妹が責められてるっていうのに」
「はは・・・レトはそこまで義兄になりたい・・・のかな?」
「どういう意味だ?」
「なんなら・・・ここで縁切ってもいいよ?」
「・・・・ッ!?」
「だって血が繋がってるわけじゃ・・・・ないし。あたし・・・レトとは釣り合わない・・・」
「・・・・嫌だね」
「・・・・レト・・・」
「誰が今更になって縁切るんだよ。第一お前がいなくなったら俺はあの糞親父としか縁ねぇじゃん」
「で・・・・も・・・」
「まぁ頼りないかもしれないが義兄を信じてみねぇか?」
「・・・・」
「血は繋がってなくても、お互いが違う種族でも、」
「・・・?」
「俺達は列記とした兄妹、だろ?」
「レト・・・」
「誰が何と言おうが俺とロクは兄妹だ。胸張って兄妹だって言えなくちゃ、意味ねぇだろ?」
「・・・・そ・・・か」
「・・・だから落ち込むなって。世界中を敵にまわしても、俺勝てる自信あるよ?」
「はは・・・レトらしい」
「・・・何だそれ」
全ての住民がロクに対して反発を繰り返している時、
1人の少女がロクの目の前に花を突き出してきた。
それは紛れもなく、先ほどロクが救った少女だった。
「え・・・・」
「お姉ちゃん、さっきはありがとうっ!!」
「な・・・」
「このお花、ママの店のお花でとっても綺麗なんだよ?だからお礼であげるねっ!」
「・・・・先ほどは娘を助けて頂いてありがとうございました」
「い、いや・・・そんな・・・」
「お詫びと言ったら恥ずかしい物ですが、どうかうちの店の花を1輪どうぞ」
「あ・・・ありがとうございます・・・」
その時だった。
街が、驚くほどに静まり返ったのは。
ロクは体を抑えながら立ち上がった。
「お姉ちゃん、今度うちに遊びに来てねっ!」
「・・・うん、分かった」
「本当にすみません・・・私の不注意で・・・」
「いえ、私はこういう子を護りたかっただけなんです。お礼を言うのはこっちですね」
「そうですか・・・」
「この花はあたしが責任持って活けますから。大事にしますね」
「本当に・・・ありがとうございました」
「ありがとうっ!優しいお姉ちゃんっ!」
2人の親子は笑顔で帰っていった。
その光景に、誰も口を開かない。
ロクは深呼吸を1度して、服についている土を掃った。
「帰ろう?レト」
「あ・・・あぁ」
「ねぇ皆さん」
「・・・・?」
「何だ・・・?」
「私が裏切り者だと言うなら、それでも構いません」
「・・・・っ!?」
「でも、兄のレトまでも巻き込む事は絶対にしないで下さい。約束、できますね?」
「・・・・・」
「・・・・まぁ、ね?」
「それじゃあ行こう、レト」
「あ、あぁ・・・」
ロクは優しく微笑みながら、蛇梅隊へと足を運んだ。
先ほどの少女の顔を思い浮かべているのだろう。
レトも、ロクの微笑みにほっとして、ロクと並んで帰っていった。
住民達も怒りを忘れたのか、自分達の家やお店に戻っていった。
ただ、まだ納得はいかなかったようだが。