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Re: 最強次元師!! ( No.521 )
日時: 2010/08/20 16:07
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)

第126次元 世界一の宝物Ⅲ

 翌日。
 ロクは宮殿にある空き部屋でまだ眠っていた。
 流石にガネストは起きていて、ルイルの朝食の準備をしていた。

 「おはよー・・・」
 「あ・・・おはようございます」
 「・・・・」
 「・・・何ですか?」
 「いや、挨拶はしてくれるんだなぁって」
 「・・・っ」
 「どうしたの?」
 「いえ・・・何も」

 ルイルは欠伸をしたまま椅子に腰をかけた。
 その表情は、まるで昨日の泣き声を覆すかのような晴れた顔だった。
 ガネストは何も言わず、ただルイルの前に食事を出す。

 「今日はサンドイッチか・・・」
 「?、どうかなさいましたか?」
 「ううん・・・ただ・・・」
 「・・・?」
 「お姉ちゃんが・・・よく作ってくれたなって・・・」
 「・・・そうでしたか」
 「・・・別に褒めてるんじゃないんだよ?」
 「分かってます」
 
 ルイルは口にサンドイッチを含み、美味しそうに食べる。
 何かあったのだろうか・・・とガネストは思った。
 昨日まであんなにふてくされていたのに。

 「・・・何か良い事でもあったんですか?」
 「へ?」
 「今日のルイル様の顔、今までよりずっといいです」
 「え・・・?」

 (ッ!?・・・思わず口にしてしまった・・・)

 「い、いや・・・、ちょっと・・・」
 「?」
 「昨日寝た時、お姉ちゃんが夢に出てきたから」
 「・・・それでですか」
 「うん・・・なんかそしたら怒る気失せちゃってさぁー、何でかなぁ?」
 「・・・さぁ、なんででしょうね」
 「・・・?」

 ルイルが首を傾げていると、なにやら向こうの方から何かが走り迫ってきた。
 猛スピードで廊下を走りぬけ、怖い顔をしてこちらに飛び込んできた。

 「あたしの朝飯ぃぃぃーーーッ!!!」
 「ッ!?」
 「だ・・・誰ッ!?」

 まぁそれは言うまでもなくあの人物。

 「ロクアンズさん・・・?何をしてるのですか?」
 「何って・・・朝飯だよ朝飯っ!!」
 「・・・?、?」
 「おっと、こちらがあの王女様かぁー・・・可愛いねぇ」
 「ちょ・・・誰っ!?」
 「あたしはロクアンズ・エポールだよ。もう面倒くさいから説明はこんくらいだけど」
 「面倒くさいって・・・昨日はあれほどテンション高かったのに・・・」
 
 (いつもMAXなのか・・・?この人は)

 「ところでガネストー」 
 「気安く呼ばないで下さい。というか何故僕の名前を?」
 「メイドさん達に昨日聞いてきたからっ」
 「そうでしたか・・・折角の朝食が台無しです。貴方はあっちで食べて下さい」
 「えぇー!?だって1人は寂しいじゃんっ」
 「・・・はい?」
 「だからー、3人で食べた方が美味しいってっ!!」
 「3人って・・・」
 「ほーら、いいよね?」
 「いい・・・けど」
 「そういえば王女様の名前は?」
 「王女になるとは言ってないけど、ルイルだよ」
 「ルイル・・・か。名前も可愛いねぇ〜」
 
 (この人・・・何だか調子が狂うなぁ・・・)

 ルイルがきょとんとしている間に、ロクはそこらじゅうの食べ物を食べ始めた。

 「ガネストも食べないの?」
 「貴方こそ何勝手に食べてるんですか」
 「だってこのサンドイッチ本当に美味しいんだもんっ!」
 「え・・・」
 「誰が作ったの?」
 「誰って・・・僕ですが」
 「そうなの?可愛い顔して料理もできるっていいなぁ〜」
 「・・・貴方、本当に何しに来たんですか?」
 「だから極秘ばっへばっ、ひんむなんあはらひょうがないべほうー」
 「何て言ってるんだ・・・」
 「ロクアンズ・・・かぁ」
 「あ、長かったらロクでいいからね」
 「ロク?」
 「うんっ」

 ロクも加え、何故かガネストも一緒に朝食をとることに。
 ただ、いつも以上に賑やかな食事となった事に、変わりはなかった。
 朝食を済ませ、すぐに部屋へ向かったルイル。
 ガネストは昼食の下準備と部屋の掃除に取りかかっていた。
 1人取り残されたロクはぽつんと立っていた。

 「・・・暇なら手伝って下さい」
 「嫌だ」
 「・・・なら迷惑なので今すぐ別の所にでも行って下さい」
 「それもヤダ」
 「・・・・」
 「だって見たいじゃん?ガネストが働くところ」
 「・・・はい?」
 「まぁ気にせず気にせず」
 「・・・・何なんだ」

 ロクは部屋の片隅で立っていて、ガネストの観察を始めた。
 これが今回の任務であって目的。
 いや・・・少し詳しく言えば違う。
 『王女と執事をどうにかして仲良くさせる事』
 それが今回の目的だった。
 国王はきっとそれが心配だったのだろう。
 
 ロクは今のところは安心していた。
 朝の様子から言って、2人に必要な点などないと思ったのだろう。

 だがその考えはまだ甘かった。 
 いや、甘すぎたといっていい。 
 王女と執事、この2人の想いはまだ、
 交差しつつある。
 
 「・・・ったく・・・これが王女の部屋ですか」
 「・・・なっ!?何か文句でもあるの?」
 「大アリです。何より整理整頓がなってない」
 「しょうがないじゃんっ!!全部大事なんだもんっ」
 「・・・大事?こんなにアルバムを広げて何をしてたんですか?」
 「それ・・・は・・・」
 「また過去に縛り付けられていたのですか?お姉様が亡くなってから3年は経っています」
 「・・・・あんたなんかにはなぁーんにも分かんないんだからぁぁぁッ!!!」
 「・・・っ!?」

 ルイルは走り去っていった。
 溢れ出る涙を堪えて。
 ガネストもこの部屋から颯爽と何処かへ消えていった。
 この部屋の中で、ただ1人。
 ロクだけが大きなため息をつく。

 (何なんだ・・・?あれが本当の2人なの?)