コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.534 )
- 日時: 2010/08/21 12:16
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
第129次元 世界一の宝物Ⅵ
「—————————————ッ!!?」
(やばい・・・間に合わな——————ッ!!!)
ザシュ————————————————ッ!!!!
ルイルに襲い掛かった大きな鎌。
だが、ルイル自身は傷ついておらず、それにガネストも手を伸ばしたまま硬直していた。
そう、その鎌の攻撃を受けたのはただ1人————————、
「ぐ・・・っ!!!」
「「ッ!!?」」」
「ルイル・・・・大丈夫・・・・?」
(嘘・・・何で・・・ッ!?)
左肩から多量の血を流し、ルイルの前で両手を広げ立ち塞がった少女。
まさしくロクが、ルイルの目の前で勇ましく立っていたのだ。
「ロク・・・・」
「何だと・・・ッ!?何故気付かれ——————」
男が震えていると、ロクは大きな鎌を左肩から抜き、両手を重ねた。
「ロクさん血が———————ッ!!」
「雷撃ーーーーーーーーーッ!!!」
ガネストの言葉を無視し、ロクは雷撃を放つ。
黒焦げになった男はそのまま倒れた。
ロクは鎌の攻撃を喰らったのと、鎌を抜いた時の衝撃の痛みに耐え、雷撃を放った。
そんな事が普通にできるはずもなく、ロクは膝をついて左肩を抑えた。
「ロクさん・・・っ!!」
「大丈夫・・・軟な鍛え方はしてないよ」
「でも・・・血が・・・」
「さてと・・・答えを聞かせてもらおうか?」
「・・・・っ!?」
「・・・・あ、たしね」
「・・・?」
「お姉ちゃんが生きてた頃、すごく楽しかったんだ」
「お嬢・・・様」
「でも、ガネストの言う通りかもね。あたし、昔起きた事、まだ根に持ってた」
「・・・・やっと、ガネストって呼んでくれましたね」
「・・・・え・・・?」
「さきほども呼んで頂いたのですが」
「・・・っ!!」
(あたし・・・さっき・・・・っ!?)
「い、いいじゃんっ!!だって・・・・執事でしょ?」
「・・・・まぁ一応」
「・・・でも、それでも一応助けに来てくれたん・・・だよね?・・・すごく嬉しかった」
「・・・僕が待っていたのはその笑顔ですよ、ルイルお嬢様」
「へ?」
「今まで、苦笑いが多かったので」
「へへっ、ガネストの笑顔も可愛いね」
「・・・え?」
「今、笑ったでしょ?」
「でも・・・僕は断じて男・・・っ」
「ガネストの困った顔も始めて見たっ」
そう言ったルイルの無邪気な顔にガネストも喜んだ。
ルイルは今まで、苦笑いか泣き顔…それ以外に心の奥底から笑った笑顔を出した事はなかったから。
「・・・ちょっと楽しいところ悪いんだけどさ」
「・・・?」
「1つ、覚えておいて欲しい言葉があるの」
「覚えておいてほしい・・・」
「言葉・・・ですか?」
「うん・・・、『笑顔は何よりの宝であって、心の証』」
「・・・・・へ?」
「笑い合う2人にとっての、最高の言葉じゃない?」
「・・・・ですね」
「あたし、ルイルとガネストにはこれからも笑って欲しい。だから・・・」
「心配しないでロクちゃん」
「へ?」
「あたし、お姉ちゃんがいないからって、弱くなってた」
「僕も、これ以上のお嬢様はいないと思いましたので」
「これからはこの国の王女として、強く生きていこうと思うの」
「・・・・そっかっ!」
「『笑顔は何よりの宝であって、心の証』・・・ですか」
「なかなかいいや、ねっ、ガネスト」
「そうですね、ルイルお嬢様」
「・・・・ねぇ」
「はい」
「お嬢様・・・って言わないで?」
「・・・え・・・・」
「なんか、固っ苦しいというか・・・っ」
「分かりましたよ、ルイル」
「やっぱがそっちの方がいいっ」
(笑顔・・・、それは1番大事な物。後でレトにも報告しなくちゃね)
「そういえばロクさん」
「あぁ、あたしの事ロクでいいよ」
「・・・そう、ですか」
「うんうん」
「ではロク、蛇梅隊本部は、何処にあるのですか?」
「・・・へ?」
「僕、ルイルと一緒に入りたいと思うんです。貴方がいるのでしょう?」
「・・・いいの?」
「うんっ!だってそっちの方が面白そうじゃない?」
ロクは任務先でまさかの次元師に出会い、そして蛇梅隊入隊希望にさせた。
何故2人は入ろうと思ったのか…、
いや、2人でなければ、多分入らなかっただろう。
「笑顔っていうのは・・・大事なものですね」
「うん、笑顔を教えてくれたロクちゃんがいる蛇梅隊だもん、きっと良い事あるよね?」
「・・・良い事あるかどうかは分かんないけど、歓迎するよ」
「ありがとうございます」
「行こうっ、ガネスト」
「・・・そういえば国王はいいの?」
「いいよ、別に」
「・・・、え?」
「この国に王女が滞在しなくとも、やっていけるでしょう」
「ちょ・・・」
「あとで手続きするから心配しなーいしなーい」
(本当にいいのか・・・?)
新しい仲間、ルイルとガネストを加え、また賑やかになりそうな蛇梅隊本部。
この国を治める王女とその執事の笑顔を取り戻した密かなる英雄、ロクは、
この2人に、もう一切不安など抱えていない。
寧ろ、安心したのだ。
無邪気な笑顔をする王女ルイルと、
優しく笑うその執事、ガネストに。
これにて、我儘王女と冷酷執事の物語は静かに幕を下ろした。