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Re: 最強次元師!! ( No.552 )
日時: 2010/09/09 17:10
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)

第135次元 冷たき瞳の言葉Ⅴ

 「・・・え?」
 「ラミアの次元技がその師匠に当たって、師匠はこの世から去ったんだと」
 「ま、待ってっ!!」
 「?」
 「何で、恨んでるの?普通なら悲しむんじゃない?」
 「いや・・・それには理由があってだなぁ・・・」

 「何?俺の話?」

 後方から声がしたかと思うとすぐに振り向いた2人。
 そこにはラミアが堂々と立っていた。

 「ら・・・ラミア・・・」
 「余計な事をべらべら喋る奴がまた残ってたのか・・・どうりで」
 「俺も詳しく知らねぇんだ。教えてくれないか?」
 「・・・何のために?」
 「ラミアのために決まってんじゃんっ!!」
 「・・・俺のためになんか・・・絶対ならねぇ」

 
 『ラミア君——————、強くなりたいなら、力を求めなさい』


 (分かってる———————、そんなの、初めから)


 ラミアはふっと後ろを向いて、食堂入り口の方へ歩いていった。 
 誰かの言葉を、思い出しながら。


 
 ラミアがまだ、幼かった頃。
 ラミアの両親はラミアを置いて何処かへ旅立ち、行方を晦ましてしまった。
 1人取り残されたラミアは、街で奇妙な男と出会う。

 「えぇー?このリンゴ、そんなに高いのー?」

 細い目で青く長い髪の毛を1つに結った、
 30代前半の長身な男。
 髪を掻き、んー、っと唸る男は溜め息をついてリンゴを買った。
 リンゴを丸齧りしながら、その男はラミアの傍に寄る。

 「・・・どうしたの?あ、このリンゴ欲しい?」
 「い、いらねぇよっそんなリン・・・」

 その時、ラミアのお腹から蛙の声かと思う程の大きな音が。

 「・・・クスクス・・・いいよ、あげる」
 「いらねぇって・・・っ!!」
 「お腹ってさ、空いたときに食べないと損しちゃうんだよ?」
 「余計な・・・お世話だ」
 「いいじゃんいいじゃん、ねぇねぇ、僕と旅しない?」
 「はぁ?何言っ——————」

 ラミアが言い終わる事なく、男はすたすたとラミアの腕を引っ張って歩く。
 真っ赤リンゴを、時折齧りながら。 
 ラミアは先程貰ったそのリンゴを、小さくだけど齧って食べた。

 「んー・・・、まぁここらへんで休憩だなぁ」

 男が止まったかと思うと、そこは草原の中。
 綺麗に並ぶ花はまるで星のように輝き、揺れる際に日光によって光る。
 こんな美しい景色を、見た事がない。

 「すっげぇー・・・」
 「でしょでしょ?此処で色とりどりの花を見ながらご飯食べるのが好きなんだ」
 「あんた、何者なんだ?」
 「僕?僕はねぇ・・・」

 一瞬、男は声を詰まらせた。

 「ただの・・・旅人だよ」
 「旅人?」
 「そうさ。世界中の景色をこの目に刻む、一種の職人」
 「よく分かんね・・・」
 「まだ、君には難しいかもね」
 「名前は?」
 「秘密♪」
 「・・・」
 「んじゃあ君は?」
 「・・・ラミア・ミコーテ」
 「へぇ・・・可愛い名前だね♪」
 「可愛くねぇ」
 「照れてる照れてる〜っ」
 「て、照れてねぇっ!!」
 
 風が気持ち良く2人を包み込む。
 2人を見ていると、とても親子に見えたのだ。

 「あんた、こっからどうすんの?」
 「そうだね・・・何処行きたい?」
 「はぁ?決まってねぇの?」
 「うん。だって自由気ままに生きたいじゃない?」
 
 誰がどう見ても、不思議な男だ。
 名も名乗らず、ただ『旅人』としか言わぬこの人を、
 誰が信じるのだろうか。
 
 「・・・そろそろ行こうか?」
 「何処にだよ」
 「次の場所さ」
 「決まってなかったんじゃ・・・」
 「今決めた♪」
 「・・・・」
 
 呆れた。
 ラミアは心の中で呟く。
 
 まだ幼かったラミアには分からない。
 この人物が誰で、どういう存在か。
 本当にただの旅人か?
 それとも本物の変人なのか?
 ただこの男は言う。

 『世界中の景色のこの目に刻む、一種の職人だ』、と。