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- Re: 最強次元師!! ( No.553 )
- 日時: 2010/09/09 17:11
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
第136次元 冷たき瞳の言葉Ⅵ
「・・・おい何処行くんだよー」
「まぁいいからいいから、ついてきてよ」
先程から何の答えもくれない男はすたすたと歩く。
ラミアは引きずられるようにしてついていき、男の後姿を眺めた。
自分と髪の色が似ている…と思いながら。
「さぁて、此処だっ!!」
「此処だ・・・って・・・・」
ラミアの目の前に広がったのは、
とある街の景色。
「これ・・・何だ?」
「何だ?って・・・街だよ」
「街っていうか・・・もはや・・・・」
ラミアはごくりと息を飲んだ。
「国じゃないのかぁぁぁーーーっ!?」
そう、ここは南の方の大きな街。
今時の都会人が集まり、
金に溺れ、金に生きる者達だ。
「こんなところで何すんだよっ!?」
「ん?金稼ぎ」
「金稼ぎって・・・」
「まぁ見てなって」
男の言われるがままに大きなカジノへ入るラミア。
此処で何をすると言うのだろうか。
「おい・・・っ!!」
「・・・呼びにくい?」
「・・・は?」
「僕の事、師匠って呼んでもいいからねー?」
「やだよ。誰も師匠だなんて認めてねぇっ!!」
「あぁ、そうなの?なら好きに呼んでちょー」
男、いや、師匠と名乗る男はラミアにそう言った。
自分が師匠である自覚などこの人にあるのだろうか。
「すみませーん50Nで100枚コイン下さぁーい」
N、というのはラミアも初めて聞く言葉だった。
「・・・Nって何だ?」
「あれ?この国のお金だよ?」
「へ?そう・・・なのか?」
「うん、50Nでコインが100枚もらえるんだ」
「へ、へぇー・・・」
コインについても硬貨についても良く知らないラミアにとって難しい事だった。
師匠はまず、スロットをやりに走った。
そこでコインを入れ、数字を合わせ…を繰り返していく。
どんどんコインを貯めていく師匠の顔を見て呆然と立ち尽くすラミア。
この時初めて、師匠がすごいと思ったのだろう。
そして約3時間経った頃。
師匠は沢山のお金を持って店から出てきた。
「お・・・おま・・・」
「へへっ、こういうの得意なんだよー?」
(得意どころじゃねぇだろ・・・この強運野郎・・・・)
お店の従業員の半泣き姿を拝み、食事へ向かった2人。
凄いのは師匠だけじゃない。
ラミアの大食いぶりは半端ではなかった。
「おかわりくだはいっ!!」
「ちょ・・・ラミア君・・・?」
「何だ?」
「そろそろやめない?お・・・お金が・・・・」
「さっき儲かってきたんだろ?」
「でも限度というものをだね・・・」
「んなケチケチすんなって、大人だろ?」
子供はこういう時に有利になる。
師匠は負けた気持ちでいっぱいだった。
良く食べるラミアを見て、お店の人も驚いていた。
「それに・・・」
「ん?」
「ここの料理店、さっき看板見たら『30人前のお食事につき無料!!!』とか書いてあったし」
「30人も一気に来ないと思うけど・・・」
「それが売りなんだろ。それに俺もう60人前食ったけど?」
「無料が更に無料か・・・」
「んじゃそろそろ行こうぜ?」
「君ねぇー・・・」
ちゃっかり60人前を平らげて無料の食事を楽しんだ師匠達がレストランを出た直後。
そこでは不良達が暴れていた。
「おいお前!!俺達の事裏切っただろ!?」
「何とか言えこの野郎!!!」
「す、すみませ・・・っ!!」
「許せるかバァーカッ!!!」
殴り合う男達。
いや、一方的な攻撃に変わりはないが。
ラミアは、気にせずに横を通ろうとした。
だが師匠は、ラミアの服の裾を掴んだ。
「お・・・おい・・・」
「ラミア君、僕は正義と悪、どっちだと思う?」
「え・・・」
「旅人は・・・常に正義なもんさ」
「何言・・・———っ!!」
ラミアは言い終わる事なく、師匠はその細い目を更に細めて男達に向かった。
師匠に気付いた男達は1人の男を殴るのやめた。
男は叫びながら必死に逃げていった。
「・・・んだよ、お前」
「旅人、だよ」
「旅人?この時代に何ほざいてるんだ?てめぇ」
「へぇー・・・今の時代は1人に対し複数で戦うのが正統なんだね」
「っ!?」
「何が言いたい?」
「ん?別に僕は君達と戦りに来た訳じゃないよ〜」
「喧嘩を売ってきた奴は強制的に戦うはめなんだよ———ッ!!!」
1人の男が師匠に殴りかかろうとした。
「ちょ、おま———っ!!」
ラミアが叫んだ時、
師匠は右から迫る男の腕を、右手を上げて一瞬にして止めた。
だが師匠はたった1人、目の前の男だけを見つめ、決して視線を変えなかった。
「な・・・っ!?」
「あんな状況からっ!?」
「すげぇ・・・」
「甘いんだよ。ろくに人生を送ってない人達に僕は殺れない」
「んじゃあ・・・これならどうだ?」
師匠の後方に立っていた仲間がにやりと笑う。
「次元の扉———————、発動!!!」
男は両手を綺麗に開いた。
「伸爪—————っ!!」
(次元技・・・・か)
男の両手の指からは突如指輪のような物が現れ、そこから30㎝程長い爪が伸びる。
「さぁ・・・釘付けになりな」
(厄介だなぁー・・・次元師は苦手なんだけど・・・)
「次元師・・・」
男は足を構えると、ダン!!!という風に足を弾いて高速で師匠の懐に入ってきた。
「そらよ!!!」
「ぐぁッ!!」
長い爪で師匠の腹を狙い、突き刺した。
「師匠!!!」
「ぐはぁっ!!!・・・これは・・・すごい次元技・・・だ」
師匠の口からは血の塊がどっと出てくる。
ごぼごぼと、まるで滝のように。
「・・・ラミア君」
「・・・?」
「これ、持っててくれないかな」
師匠は自分の髪を結っていた赤い髪紐を解いて、ラミアにぽんっと投げた。
「これ・・・」
「僕の大事な人から貰ったんだ。・・・傷つけちゃ悪いからね」
「・・・」
「さぁ、遊びはこれくらいにしようぜ?」
「あぁ、おっ始めようとしよう」
今までの師匠とは違う。
何やら…すごく怖い殺気が伝わってきた。
それはまだ幼かったラミアにも分かる。
禍々しいというよりは幼く、まるで怒りを鎮めているかのような、この感覚。
師匠からはそういう殺気が伝わってきた。
「第六次元発動——————、刺根雑騎ッ!!!」
「・・・・」
たった今、
長き鋭い爪を持つ大柄な男と、
滑らかで綺麗な青い髪を靡かせ立っている旅人の、
2人のかけ離れた戦いが始まる。