コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.556 )
- 日時: 2010/09/15 19:06
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
- 参照: 最強次元師!!等、色々と執筆中—*
第139次元 冷たき瞳の言葉Ⅸ
「・・・へぇー・・・その人の話だと、そうなるんだ」
「まぁ詳しい事は知らないから、良い手がかりにはならなさそうだけど」
「・・・いや、あたし的には大船に乗った気分だけどね」
「・・・は?」
ロクはにやりと笑い、食堂からさっさと消えてしまった。
きょとんとしていたレトも、何か策があるのかと思いロクについていった。
午後5時。
辺りがぼんやりと明るさを失ってきたこの時間帯に、
ロクはづかづかと歩いて屋上に行く。
ひんやりと冷たい風がロクの体を包み込んだ。
その夕日の光に照らされて誰かの青い髪が光っていた。
間違いなく、ラミアだろう。
「・・・何?」
ロク達に気付いたラミアはくるりと回り、夕日をバックに冷たく言い放った。
ロクはそんな言葉をものともせず、ラミアに近づいた。
「だから、何か用って・・・」
「ラミアさぁ、師匠いたんだね?」
「・・・何で知ってんの?」
「まぁ色々とね」
「・・・折角1人で景色を眺めてたのに、台無しだ」
「1人で・・・なんでもしようとしないでくれる?」
「どういう事だ?」
「任務とか食事とか、何でもかんでも孤立しないで」
ロクやレトの周りに漂う空気。
その空気だけが、静かに音をたてている。
「何が言いたいんだ?お前」
「だから・・・」
ロクは、言葉を飲み込んだ。
そしてふいに、出た言葉とは…。
「あたし達にも・・・師匠がいたの」
そう、ロクは会話を止めて自分達の師匠の話を切り出した。
いや、勝手に口が開いていたのかもしれない。
「・・・え?」
「あたしやレトにも、昔師匠がいたの」
「・・・」
「師匠はわけの分からない人でね、自分の親友のために命を捨てられる、正義の人だった」
(ロク・・・)
「だから・・・命を落としたんだ」
昔の事を思いだす度、ロクは目をカタカタと震わせていたのだ。
まるで、雪山で凍え死にそうな子犬のように。
「だから・・・ラミアの気持ちも少し分かるかな」
「俺の気持ちなんて分かんねぇ!!」
「・・・ねぇラミア」
ラミアは怒り余った気持ちを少し緩めた。
「お願いだから・・・、もうやめよう?」
「・・・ッ!?」
「師匠は死んだんでしょ!?、数年前に!!」
「そうだよ・・・師匠は死んだ!!」
「・・・」
「でもずりぃじゃねか!!人の事勝手に庇って自分は罪人みたいな真似しやがって!!!」
「ラミア・・・」
「絶対許さねぇよ、あんな師匠!!勝手に死んで、まだ聞きたい事が・・・いっぱ・・・っ!!」
ラミアの言葉は既に掠れていた。
たった一筋、流れる涙によって。
「・・・はは、こんな事言ったの、初めてかも・・・な」
「ラミア・・・?」
「お前・・・似てるよ、師匠に」
「?、?」
(あの能天気で気分屋で・・・名も隠す旅人に——————)
「・・・おい」
「・・・?」
「俺は・・・強くなれると思うか?」
「へ?」
「聞いてるんだ、答えろよ」
「そんなの即答に決まってんじゃん」
「?」
「絶対だよ、100%だから」
「はは・・・お前、怖いもんねぇのな」
「へへっ!!」
師匠の面影を探し続ける1人の弟子の姿。
初め会った頃とは、けた違いの優しさだった。
「そういえばラミアさぁ」
「ん?」
「やっぱ一緒に食べない?あたしと」
「はぁ?大食い勝負ってやつか?」
「そうそう、あたし、1回でいいからラミアと競い合ってみたかったんだ」
「別に・・・いいけど」
「やったーーっ!!あんまり大食いっていないから困ってたんだーっ」
(そりゃ・・・いねぇわな)
「そんなに・・・喜ぶか?」
「うんっ!!ラミアと一緒に食べれるなんて嬉しいじゃん!!」
「勝負だけだから、言っておくけど」
「んじゃあ今夜は何にする?カレーでもいいよ?」
「カレーは昨日食った。どうせならもっと量の多いやつな」
「おっけーっ!!考えとくから!!」
何故だろう。
ラミアの笑顔が急に増えた。
ロクのお蔭なのか、
それとももしかして初めから…、
「さぁて、行くよラミア!!」
「・・・はいはい」
「なるほどな」
「レト!?」
「・・・お前・・・」
「おいお前ら、後ろ見てみ」
「後ろ?」
「後ろに何か・・・—————」
2人が後ろを向くと、
そこには綺麗な橙に鮮やかに光る夕日。
沈む直前、正に奇跡の風景だった。
「綺麗ー・・・」
「あの時の・・・景色みたいだ」
「へ?」
「いや・・・昔師匠と1度だけ見たんだ。花の揺れる丘の上で2人で寝転んだ」
「へぇー・・・すごくいいね、それ」
「あぁ・・・」
まるで、師匠と見た綺麗なあの景色のように、
夕日は綺麗に光を放つ。
誰の心をも溶かしてしまいそうな、
熱々とした夕日は今も燃え続ける。
「・・・さぁ、行くか」
「え、ラミアもう行くの?」
「あぁ・・・此処に残ってても、夕日はあの何分かで消える」
「そっかぁ・・・」
「それに・・・」
「?」
「・・・やっぱ何でもねぇわ」
「?」
ラミアはその長く、青い髪を靡かせて歩く。
ロクはすたすたとついていき、ラミアの後を追った。
レトはただ1人、夕日の目の前にいた。
(バーカ・・・ラミアが何でそんなに早く気が変わったか・・・気がついてないのかよ)
レトはくるりと回って、今にも沈みそうな夕日を眺め、こう呟いた。
「あの夕日を見る前から、とっくにラミアは諦めてたんだよな・・・師匠の事」
根拠は分からない。
レトの言う事が確かだという証拠もないが、
レトはそう言った。
師匠の面影を探して生きてきた少年の奥に隠された、本当の真実。
ラミアはきっと強く、凛々しく生きていく。
あの赤い髪紐が…そう訴えていた。