コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.595 )
- 日時: 2010/11/04 19:17
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
- 参照: 最強次元師!!等、色々と執筆中—*
第148次元 姉への想い
ドクン・・・
ドクン・・・
微かに聞こえる、エンの心臓の音。
心もない、感情も失われたとしても、
しっかりと生きている、1人の人間。
1人の、次元師。
「・・・そろそろ終盤か」
「まだ・・・まだ負けてはいないっ!!!」
「所詮は千年前の英雄。現代の次元師には勝てない———ッ!!!」
躊躇なく襲いかかる偽者の攻撃。
その力はエン同様の力で、光節も何度も目にしている。
だが、肝心の主人が何も思わない限り、
この勝負に勝機はない。
(エン殿・・・)
光節の心に甦る、
エンとの思い出。
『これは・・・っ!?』
『初めましてエン殿。・・・拙者は光節と申す』
『こう・・・せつ・・・・?』
『千年間—————、ずっと待ち続けておりました』
今からだいぶ前、
光節は出会った。
まるでサンタでも見たかのような、
驚きに塗れたあの表情のエンと。
『そんな・・・ミン殿が!?』
『姉さん・・・が・・・・!?』
だけどそんな幸せなど、続かなかった。
エンの姉、ミン・ターケルドはこの世を去ってしまった。
『そ・・・んな・・・』
『姉さんっ!!姉さんっ!!!』
エンは太陽が沈んだ事も、
月が顔を出した事も気付かずに、
何度も泣いて、
何度も姉の名を呼んだ。
戻ってくるわけでも・・・ないのに。
そこからが、レトとロク同様、
あの神がエンの前に姿を現した。
『お前・・・誰?』
『僕?僕はねぇー・・・君の恩人になる人だよ♪』
『恩人・・・?』
『そうさ♪・・・ねぇ君・・・』
『・・・?』
『お姉さんに——————会いたいと思わない?』
『———ッ!!?』
『僕はね、君とお姉さんが会う方法を知ってるんだ♪』
『嘘だ・・・ッ!!姉さんは死んだんだッ!!』
『嘘じゃないよ・・・、さぁ・・・おいで?』
エンは、自分の心に勝てなかった。
死んだ人間と、
もう1度会う事なんて絶対にできない。
そしてエンは選んでしまった。
偽りの道に進み、
己の“感情”を奪われるとも知らず。
『お前・・・騙したなッ!!!』
『ピンポンピンポーーンっ!!君ってもしかしておバカさんなのかなぁ♪』
『帰せ・・・ここから帰せっ!!!』
『自分の心に負けた奴なんか・・・帰る資格ないよ??』
そこでデスニーがエンを殺そうと企んだ瞬間、
デスニーはまた、何かに気付いたような顔をし、
『そっか・・・そうなんだ・・・・・』
と何か呟いて、
エンへの攻撃をやめた。
『・・・気が変わった。君とは今度戦おう』
『・・・・ッ!?』
『僕とまた戦う理由として、深く刻んでおくよ』
『・・・?』
『君の・・・“感情”を奪ってあげる♪』
その時感情を失ったエンは、
たった一言、
『また会おう』
とだけデスニーに言われ、
傷だらけで現世に戻った。
傷だらけのエンを背負い、
多くの病院を訪れた光節だったが、
エンの感情を戻す事など、できなかった。
深く姉を慕い、
親のいなかったエンは、姉と共に生きてきた。
姉のために頑張って、
姉のために生きて、
苦労だろうが困難だろうが、
構いもなしに、働いた。
だが、姉は剣闘族に殺された。
自分が折角、何ヶ月もかけて育てた米や野菜達を、
ぐしゃぐしゃにされたから、だった。
自分の畑を荒らされたと、剣闘族に強く歯向かった姉だったが、
やはり権力や地位の差で、
処刑が執行された。
姉のために全力を尽くしてきた弟のエンの気持ちを、
誰が分かろうか。
己の道を曲げまいと必死で守った畑は、
半減されてもなお、
生き生きと育ち続けていた。