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Re: 最強次元師!! ( No.608 )
日時: 2010/11/08 19:57
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)

第149次元 正義とは何か

 額から多量の汗を流し、まるで猿のように動き、逃げ回るのはレトだった。
 反撃する事ができず、先程から逃げる事を繰り返している。

 「どうしたどうした次元師よー?一応俺なんだろー?」
 「・・・・っ!!!」
 「・・・なんだよ、喋れよ俺」
 「・・・」
 「・・・・・おらよッ!!!」
 「ッ!?」
 
 偽者はレトに目掛けて横に剣を振るった。
 だがその攻撃は当たらず、わざと偽者は止めた。

 「・・・時間をやるよ、選べ」
 「・・・?」
 「1つ目は、大人しく負けを認めて帰る。2つ目は—————」
 「・・・・」
 「————その本物の双斬を、俺によこせ。・・・そうすれば体内のもん全部返してやる」
 「・・・ッ!!?」

 無理難題な選択肢に、レトは戸惑う。
 本物の双斬をよこせ、など、無理な要求である。
 双斬も戸惑いを見せ、レトは俯いた。

 「さぁ・・・どっちにする?」

 レトは俯いたまま何も言わなかった。

 (レト・・・)

 双斬は不安を抱え、実体化に戻った。
 その溺れたレトの顔を覗き込む勇気もなくて。

 「・・・どっちだ、俺」

 

 このまま、双斬を渡してしまえば、
 とりあえず俺の体は戻ってくる。

 でも、そんな事は絶対にできねぇ。
 双斬を渡す事なんて、絶対に。

 でも、この不利的状況をどうやったら逆転できる?
 首には剣をつきつけられてるし、
 下手な真似したら、殺される。
 
 かと言って負けを認めれば、俺の体は戻ってこないし、 
 あいつらの期待も裏切る事になる。


 どうすりゃいいんだよ・・・ッ!!!



 「・・・どうした?言わないのか」
 「・・・・・」
 「んじゃ・・・ここでおさらばだなッ!!!」

 偽者は大きく剣を振り上げた。

 「レト———ッ!!!」

 双斬の声がレトを耳を通過した時、


 『俺はこの世の正義のために戦うっ!!』

 「———ッ!?」


 不意に、昔の事を思い出した。



 正義って・・・なんだろうな。


 この世のために戦う事か、
 それとも貫くべき自分の目標か。

 俺は・・・この世の正義のために戦ってきたはずだ。
 キールアの泣き顔を・・・もう見たく・・・・なく・・・・て・・・。



 「———死ねッ!!!次元師さんよ———ッ!!」


 『エポール兄妹がやわじゃないって事、あたし1番分かってるからっ!!』

 
 そうか———————ッ!!!

 
 「レトーーーっ!!」
 「・・・悪い、もう1個選択肢を作ってくれ」
 「・・・ッ!?」
 「・・・俺がお前に勝って、全部取り返す—————ッ!!!」
 
 ガンッ!!!という鈍い音が鳴り響いた。
 だが、レトは傷など負っていない。
 では何故・・・。

 「な———ッ!?」
 「・・・俺、結構足鍛えてるんだよね」
 「レトっ!!」
 「お前・・・っ!!」

 なんとレトは、右足の裏で剣を止めた。
 その驚異的な行動に驚きを見せた偽者の隙をついて、レトは離れた。

 「・・・よくも甘い言葉を吐けるな、お前」
 「エポール兄妹のお兄さんをなめんなよ?」
 「・・・面白くなったじゃねぇか———ッ!!」

 偽者はダッ!!と足で地を蹴って低姿勢で走ってきた。
 レトはその行動に惑いもせず、

 「————斬り払いッ!!」

 まるで目の前のものをかき消すように剣を払い、偽者の攻撃を止めた。
 偽者は少し後ろへ下がった。
 が、その時。

 「———ッ!?なんだこれは!!?」

 そう、偽者の足には何かがへばりついていた。

 「・・・実は斬り払いには2つ効果があってだな、1つが敵を払う事、2つ目が・・・・」
 「・・・?」
 「払った物体を、思う物に変形させる事、だ」
 「そんな能力・・・双斬の斬り払いにはないはず———っ!!?」
 「ある次元技の2つ目の能力ってのは、次元唱も唱えずに次元を発動できる奴にしか現れない」
 「じゃあ・・・っ!!」
 
 偽者は、足を震えさせた。 
 先程までの威勢は、何処へ消えたのか。

 
 「———————ジ、エンドってか」

 「———ッ!!?」

 「十字斬りィィィーーーーッ!!!!」

 レトは双斬をクロスさせ、斬り払いのように横に振るった。
 レトはさっき、斬り払いと見せかけて地面を斬り、欠片として偽者の後ろへと運んだのだ。
 そのおかげで小さな欠片達がガムのような物質に変わり、偽者の足を固めてしまったという。
 知能的なレトに、とても似合う戦略だった。

 「・・・やっと終わっ———!?」

 突然、レトは激しい痛みに首元を抑えた。
 レトは喉の奥から何かが込み上げてくるのを感じた。

 「ぐはぁッ!!」

 吐き出したのは、なんとコアだった。

 「コ・・・ア・・・・?」

 コアは己の魂を入れる事が可能な超高性能の最新技術が発達した、言わば『動かざる心臓』。
 そのコアが出されたという事は・・・。

 「なんか・・・体が重いような・・・・」

 「戻ったんじゃない・・・?体内」
 「・・・マジで?」
 「・・・マジ・・・かも」

 一瞬の沈黙が流れた。
 だがその沈黙も、レトの大きな声により消し去った。

 「よっしゃァァァァァァッ!!!」
 「やったねレトーーッ!!」

 派手にガッツポーズしたレトは双斬と共に喜びに浸っていた。

 「あ、でも他の2人はどうなったんだろうな」
 「さぁ?でも勝ってると思うよ」
 「だといいけどな・・・」

 少しの不安を抱えながらでも、見事な勝利を遂げたレト。
 己の信念を忘れかけてはいたが、キールアや他の人々への強き想いが、
 レトを勝利へと導いたのだろう。

 正義とは何か。
 はたまた、正義は何のために存在するのか。
 それはきっと、レトが世界で証明してくれるであろう。