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- Re: 最強次元師!! ( No.623 )
- 日時: 2011/03/11 23:22
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)
第150次元 “魂”と“心”
「—————くッ!!」
「甘いぞ—————千年前の英雄よ!!!」
ガキンッ!!!っと鋭い矢の音が鳴り響く。
戦いを始めてから2時間。
まだ光節は、偽者から逃げ続けた。
「・・・エン・・・・殿・・・ッ!!」
まるで壊れた機械のように、
まるで淀んだ水滴のように、
エンの瞳には—————何が映るのだろうか。
「心を動かすのは、とても難しい」
「・・・」
「だからこそ俺の持つ心は、そいつの事が全て分かる」
「果たして・・・本当にそなたにエン殿の心が読めるか———ッ!!」
光節は弓を引く。
殺すためではなく、
護るために。
「・・・・——————・・・つ・・・」
(今・・・エン殿の・・・声がしたような・・・?)
一瞬の錯覚なのだろうか。
だが後ろに振り向いても、変わらぬ顔。
光節は気のせいだと言い聞かせた。
「・・・そろそろ終焉にしようか、英雄」
「く・・・・ッ!!」
「千年も生きていれば、十分だろう」
偽者は、
光節の首目掛けて弓を引く。
「・・・心というのは・・・・簡単に動かせるものでは・・・ない・・・っ!!」
「・・・・」
「エン殿が今までどれだけの思いで過ごしてきたか・・・貴様には分からぬであろう!!」
「どんな思いだと・・・?心もないのに」
「心がなくとも————エン殿には“魂”がある!!!」
「・・・・魂、だと?」
「例えエン殿が何も語ってくれぬようとも・・・・エン殿はきっと助けを求め叫んでいる!!」
「・・・もうじきエンは消える。・・・これからは俺がエ・・・・———」
「貴様のようなエン殿を似せた悪党に——————エン殿の名を語る資格などない————ッ!!」
一閃。
「———————黙れ」
偽者の声が響いた時、
既に血飛沫は終わりを告げていた。
「・・・・・」
偽者はふっと弓の血を払い、
後ろに振り向いた。
その時。
ザ————シュァ・・・———ッッ!!!!
「・・・な—————ッ!!?」
偽者の左の腹脇が、
酷く血飛沫を撒く。
「・・・・・マだ————終わッてナ・・・い・・・ッ!!!」
「何故・・・何故言葉を喋る———————エン・ターケルドッッ!!!!」
偽者の声ではなく、
本物の声が響いた。
「エ・・・ど・・・————」
「ぐ———ッ!!」
偽者はぐッっと胸倉を掴んだ。
「・・・痛イか?」
「黙れ・・・ッ!!!」
「俺ハ・・・・諦めタくなインだ・・・・」
「喋るな・・・・・ッ!!!心もない—————はずなのに!!!」
ドク・・・ッ
ドク・・・・ッ!!
(何故だ・・・ッ!?そんな事・・・・は・・・ッ!!!)
「エン・・・ど・・・の・・・・っ」
「もウ・・・・」
「・・・・ッ!?」
(やめろ・・・ッ!!それ以上喋られたら—————ッ!!!)
「光節ニ・・・迷惑ハかけラれナイ・・・・ッ!!!!」
ドク・・・ッ!!ドク・・・・ッ!!!
「・・・や・・・・め・・・ろ・・・・」
ドク・・・ドク・・・ドク・・・ドク・・・ッッ!!!
(心が・・・感情が・・・・————————)
エンは、
弓を引いた。
「一閃——————————ッ!!!!」
ドクドクドクドクドクドクドクドク——————————ッッッ!!!!!!
(まるで誰かに引っ張られてるみたいだ————————ッ!!!!)
エンの瞳が力を取り戻したと同時に、
一閃の刃は鏡を打ち砕いた。
まるで砂のように、
弾け飛んだ水のように、
偽者は、散った。
誰も犠牲にはしない。
誰も傷つけはしない。
誰も失いは、しない。
「・・・・そう、心に誓った」
「エン殿・・・」
「世話をかけた・・・すまないな、光節」
「いえ・・・貴方のためになれたのならば、本望で御座います」
「そうか・・・この不甲斐無い主人を許してくれ」
「言われずとも、勿論で御座います。・・・もう後戻りをする必要もありませんので」
「・・・そうか。ありがとな」
エンの微笑みは、
誰もが待っていた事。
心も感情もなく、
姉を思い、慕って。
たった1つの願いだけを胸に、生きてきた。
「これからは、目的を変えよう」
「え・・・」
「姉さんを思って生きるのではなく・・・」
「・・・?」
「隣にいる、1人の精霊を想い、生きてゆこうと、俺は誓う」
「エン殿・・・・」
そう。
もう亡くなってしまったものは、
戻らないのだから。
だから、
いつも隣にいる何かを、
支えて、生きてゆこうと思うのだろう。
「永久についていきます・・・エン殿」
「頼もしいな、光節」
心を取り戻す事に、
大事な事は1つだけ。
「さぁ、あとの2人を見に行こう」
「大丈夫ですか?エン殿・・・」
「お前の方が重症だろ。もう消えていていいぞ」
「恩にきります」
どれだけ自分を信じて、
どれだけ仲間を信じているか、だ。