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Re: 最強次元師!! ( No.631 )
日時: 2010/12/02 19:02
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)

第151次元 仲間

 「「雷撃ーーッ!!!」」

 2つの雷の塊が交差する。
 何度繰り返しているのだろうか。

 「・・・っ!!」
 「もうギブアップー?早すぎだよ〜?」

 偽者はまるで嘲笑うかのように高笑いをした。
 ロクは流血し続ける腕を抑えてもなお、立ち上がった。
 
 「こんな実力じゃ人間を護るどころか、神さえ倒せないよ?」
 「そんなの・・・あんたに関係ないっ!!」
 「だってあんたはあたしで、あたしはあんた」
 「・・・・」
 「関係ないはずないもんねー?」
 
 偽者がにっと笑ったとき、
 素早くロクの背後に姿を現した。
 殺気を感じてとっさに避けたロクの息は、もう既に荒かった。

 「・・・ねぇロクアンズ」
 「・・・?」
 「人間ってさ、何だと思う?」

 飛んだ質問に、ロクは少し戸惑った。
 偽者から出た言葉の意味が、理解できないのだろう。

 「・・・どういう事?」
 「つまり、人間ってのはさ、何のために生きて、何のために死んでいくモノなのかって事」
 「・・・・そんなの、簡単じゃん」
 「へ?」
 「それを見つけるために生きて、限界まで生きて・・・死んでいく。人間は素晴らしいモノだよ!!」
 「・・・それ、本当に言ってんの?」
 「え・・・?」
 「人間ってのは弱いから集団で行動して、過ちを犯すから心が歪む・・・・弱い生き物だよ」
 「違う!!人間は弱くない!!」
 「・・・・」
 「1人じゃ何もできないから、仲間がいる。過ちを犯しても・・・また何度でも立ち上がれるんだよ!!」
 「違うね。人間は弱いもの、1人じゃ何もできない?それは小さい子が言う“言い訳”だよ」
 「言い訳なんかじゃない!!足りない部分を補って、支えて生きていく・・・それが生きる理だよッ!!」
 「・・・生きる理・・・か。でもそれって実際さ・・・」 
 「・・・・」
 「————弱いから、頼ってるんでしょ?」
 「——————ッ!?」

 ロクが一瞬油断した隙に、
 偽者はロクの腹部を、素手で貫いた。

 「——————ぐはッ!!!」
 
 口から多量に溢れだす、真っ赤な血。
 止まる事もなく、川のように流れる。

 「あーらら・・・神族の前で油断は禁物だよ?」
 「・・・ぐ・・・くぁ・・・ッッ!!!」

 ずぶッっという音をたてて偽者は腕を引っ込めた。
 ロクの体中を駆け巡る衝撃は、もう立つ事もできない程の痛みを覚えさせた。
 床に倒れたロクは、それでもまだ、

 弱い力で、偽者の靴にしがみついた。

 「・・・だ・・・わって・・・ッ!!」
 「そんな体になっても、まだ戦う?」
 「戦・・・なきゃ・・・・意味・・・な・・・ッッ」
 「ロクアンズってさ」

 偽者は、微笑みながらしゃがみ込んだ。

 「人間に、見放されてるんでしょ—————?」
 「——————ッ!!?」

 偽者が再度告げる、 
 ロクの心の大きな傷。

 「街でぎゃーぎゃー言われて、仲間からも見放されて・・・君には兄と幼馴染だけ」
 「・・・ち・・・・ぁ・・・・」
 「それで——————、本当に人間を護る権利が、君にあるとでも・・・?」

 “権利”
 唯一、人間が誰しも欲する、欲望の塊。
 ロクが逆らう事のできない、絶対的な壁。

 「権利がない君に、人間が護られて嬉しいの?・・・それとも名誉が欲しいだけ?口だけ?」
 「・・・・ち・・・が・・・・」
 「言えないでしょ?人間の本音を聞いてるわけじゃないのに・・・言い張れないでしょ?」


 『帰れ!!帰れ!!!』


 『神族の場所があるんでしょう!?』


 『ロクちゃんだったなんて・・・ショックだよね』


 『騙してた・・・って事なのかな』

 
 『仲間だとは————認めんがね』




 ドクン・・・・


          ドクン・・・・


 (あたしは———————————)



 その時、


 静かにも、哀れな者を見るかのように、




 (—————————————仲間じゃ、ないんだ・・・)




 偽者は、一撃を放ち、


 その不適な笑みで、





 微笑んだ。