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- Re: 最強次元師!! ( No.632 )
- 日時: 2010/12/02 21:02
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
第152次元 傷ついた体
「あ・・・エン!?」
「レト・・・・か?」
レトは真っ黒な扉を開けた。
その先に見えたのは、なんとエンだった。
「お前・・・勝った、のか?」
「まぁな・・・今まで世話かけてすまなかった」
「いや・・・お前、そんな声してたんだな」
「意外か?」
「心がなかったしな・・・」
失くしたものを取り戻したレトとエンは、笑顔に満ち溢れていた。
何年も何年も、その苦しい生活は続いていたのだから。
「さて・・・あとはロクか」
「ろく?」
「あぁ、お前、話した事もないんだっけか・・・」
「た、多分・・・」
「ロクは俺の義妹で、本名はロクアンズ・エポール・・・と、」
「と?」
「・・・フェリー・・・・だ」
「ッ!?」
フェリーという名を聞いてエンは驚いた。
そんな名前を・・・普通口に出しはしないのだから。
「神族・・・なのか?」
「まぁな、そこらへんはあとでじっくり話そう。・・・今は・・・」
「そのロクアンズを探すのか。確かに、優先だ」
エンとレトは周辺をきょろきょろと見回した。
そして、もう1つ扉があるのに気がついた。
「お・・・もうロクも終わったところか」
「様子を見に行こう」
「おう」
レトが扉を開けた時、
目の前にロクはいなかった。
「あれ・・・ロクがいな—————」
ピ・・・チャ・・・・・
「・・・・・・・え?」
レトは確かに、何かを感じた。
冷たい液体のようなものに。
「ま・・・・て・・・よ・・・・・」
下を見た時、
それが水でない事が、はっきりと分かった。
黒の世界に溶けた—————ドス黒い血の色。
「ロ・・・・ロクッ!!!!」
レトは叫んだ。
この状況が信じられなくて。
「おいロクッ!!ロクッ!!!」
「レト、いたぞっ!!」
エンが指差した先にいたのは、
己に甚振られて、残酷な悲劇を終えた少女の姿。
「やはり・・・神族が相手では敵わない・・・かっ」
「ロク・・・・しっかりしろロクッ!!!」
レトは必死にロクの名前を呼んだ。
ロクの体はぴくりとも動かない。
「・・・・戻るぞ」
「・・・」
「ロクを・・・連れて帰る」
レトは血塗れのロクを背負った。
その冷たい感触が、レトの背中に伝わる。
心臓の音も、もう僅か。
生きているのかさえ・・・分かりえなかった。
デスニーに見送られ、レト達は帰還した。
1人の少女を背負って。
蛇梅隊の前では、殆どの人が姿を現していた。
そわそわしていた中、キールアが真っ先に走り寄ってきた。
「あ・・・だ、大丈夫!?」
そわそわと落ち着きのない台詞で、レト達に話しかけた。
だが、レトとエンは笑顔を見せない。
「・・・?」
「あ、あぁ・・・俺とエンは・・・・ちゃんと取り戻せた」
「・・・まぁな」
「良かったーっ!!・・・・あ、ロクは!?ロクも一緒!?」
時間の限界、だった。
レトは、どうしてもキールアには見せたくなかったという表情で、顔を顰めた。
「どうしたの?何か・・・あったの?」
不安そうに聞くキールアには、言えなかった。
ロクがボロボロになって、死ぬ寸前だなんて。
「ごめん」
たった一言、
レトはキールアに謝った。
「え・・・・?」
エンは自分の背中に背負ったロクを、
キールアに見せた。
「——————ッ!?」
大量の出血。
ぽっかりと開いた腹部。
冷たい体。
深く傷ついた・・・ロク。
「・・・ん・・・・で・・・・っ」
今にも泣きそうな顔で、
キールアはロクを見つめた。
「・・・急患です!!!医療部隊を集めて下さい!!」
「で、ですがキールアさん・・・」
「早くして下さい!!!」
キールアの指示により、援助部隊と共にロクを隊内に運んだ。
もうロクの面影さえ感じさせないあの体は・・・深く、傷ついた。
「おかえりなさい、レト、エン」
「ただいま、ガネスト」
「何があったんですか?」
「・・・・ごめん、それは言えない」
「・・・そうですか。こちらこそ、すみません」
ガネストは悲しそうな瞳をしていた。
あんなに傷ついたロクを見て、何を思ったのだろう。
「レト」
「・・・何だ」
「どっちを・・・選ぶべきなのでしょうか」
「・・・」
「僕達は・・・まだ迷ってるんですよ」
そう、言った。
まだ迷っていると。
それを何だと言うまでもないであろう。
「自分の好きにすりゃいい」
「・・・・」
「信じるか信じないかは・・・自分で決めろ。・・・次元師だろ、俺らは」
レトはそう言い放って、手術室に向かった。
1人取り残されたガネストは、強く、手を握り締めた。
手術室の前でロクを待っていたのは、レトだけだった。
それ以外の人間は、誰1人おらず、
たった1人で、レトはロクの無事を祈っていた。