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Re: 最強次元師!! ( No.633 )
日時: 2010/12/05 17:47
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)

第153次元 1本の電話

 「ね、ねぇ・・・」
 「うぁ?」
 「ロクちゃん・・・大丈夫?」

 ミル・アシュランはレトに恐る恐る聞いてきた。
 凄く心配をしているらしい。

 「あぁ・・・とりあえず手術は成功だってさ」
 「良かったー・・・っ」
 「まだ安心はできねぇらしいけどな。・・・今日の朝起きたばっかで」
 「体、動くの?」
 「・・・全然。手足も動かせないって、言ってた。無茶するよな、まじで」

 神族相手に、それだけの力を発すれば勝利を得られるのだろうか。
 自分との戦いで、精神に負けてしまったロクは、どんな気分だろうか。
 どれだけ自分を追い詰めても、まだ答えは見つからなかった。

 「・・・それより、お前らはどうしてた?」
 「え?」
 「俺達がいない間」
 「あぁ・・・人それぞれだったかな」
 「それぞれ?」
 「うん・・・任務行ったり、待ってる人達もいたし・・・」
 「そうか・・・ありがとな」

 レトの顔は、微笑んでいるように見えなかった。
 強いて言うなら、“作り笑い”。

 「うん・・・じゃあ、ね・・・」

 ミルは少し弱った声でそう言った。
 ドアをぱたんと閉め、ミルはそのドアに寄りかかった。
 たった1つの、眼鏡を握り締めて。



 
 
 「はぁ・・・はぁ・・・っ」


 午後5時頃。
 任務へ行っていた第五番隊はこの時間にして、任務を完了した。


 「流石・・・で、ですね・・・ミルさん」
 「そう?・・・ありがとう」

 大きな新元魔の太い腕や足が、見事に散らばっている。
 もう既に、新元魔の面影など残っていなかった。
 まだ次元師として未熟なリルダがやったものとは思えない。

 「アシュラン・・・お前、凄いなぁ」

 ヴェイン副班は思わず感嘆の声を上げた。
 普通の次元師では有り得ない程の出来栄え。
 流石の副班も言葉を失った。

 「いえ・・・副班も強いじゃないですか」
 「だって俺・・・マリエッタだしなぁ」
 「あらあらヴェイン、私になにか?」

 ゾッ!!というなんともおぞましい殺気を背後から感じとったヴェインは情けない姿で走っている。
 この光景を1日に何度見た事か・・・という顔で呆れる隊員が2人。
 
 「・・・報告も終わったし、帰ろっか」
 「そ、そうですね・・・」

 眩しい夕日の照り返しを受けて、ミル達は蛇梅隊本部へと帰還した。
 
 「・・・?」

 帰り道。
 何やらミルに元気がない事に、リルダは気がついた。
 暇さえあれば、手に持っている黒い淵の赤い眼鏡を握っていた。


 (早くしないと——————)


 

 心の中で、ミルはそう呟いた。
 




 『ミル——————大好きっ!!』




 (・・・あたしだって・・・——————)






 『ML368—————あの人物のデータを早急に用意しろ————』



 「・・・ッ!!!」


 
 ミルは険しい顔で歩いていた。
 その威厳のある後ろ姿を、
 不思議そうな顔でリルダは見つめていた。



 「おかえり、ミル」
 「ただいま・・・キールアちゃん」

 ミルは帰った途端、医療室にいたキールアに会った。
 まだロクの手当てをしているらしい。
 起きているらしいのだが、気力がないという。


 「ロクちゃん・・・?」

 
 少し戸惑いながらロクに話しかけるミル。
 その言葉に応答するかのようにロクはミルの方に顔を向けた。

 「あ・・・ミル」
 「大丈夫・・・なの?」
 「まぁ・・・あんま動けないけど」

 自分と本気で戦ってきたというのに、
 なんと清清しい顔をしているのだろう。

 「あのね、ロクちゃ・・・」
  

 
 『この事は——————、誰にも口外してはいけない』



 「・・・?」

 「ごめん・・・何でもない。・・・とりあえず元気で良かった」
 
 「あ・・・うん」

 きょとんとしていたロクを見て、ミルはまた医療室を出て行った。

 ふと、ミルの隊服のポケットが震えている事に気がついた。
 だがその振動はすぐに消えてしまった。
 ミルは自室まで戻ると、再度かけなおした。



 「・・・・何か」


 『・・・分かっているだろうな。あと僅かな時間しか、残っていない』


 「ええ・・・もちろん」

 
 『順調を祈っているよ』


 「・・・・」


 『・・・データは、集まったか?』


 
 その言葉を聞いて、


 一瞬だけ、ミルは唇を震わせた。



 「ええ」


 『・・・』


 「————【FERRY】、ロクアンズ・エポールの情報データは、既に最新データまで確認致しました」