コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.655 )
- 日時: 2010/12/17 20:01
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TV9sr51/)
第156次元 データ
「うっひゃぁー・・・」
あまりの光景にレトは感嘆の声を上げた。
辺りは真っ暗で、太い管が床、壁、天井にまで延々と続いていた。
コンピューターや情報データの装置まで・・・あらゆる物が壊され、形を保っていなかった。
バカ広いこの研究所に入り込んでから約10分。
誰にも会わず・・・また何の音も聞こえなかった。
「どうなってんだよ・・・」
「扉が開いてたという事は、誰かいるのには間違いなさそうだ・・・」
「でも何の音も聞こえねぇーぞー?」
「薄気味悪いし・・・お化け出そうー・・・」
「今時何言ってんだよ」
「だってだって〜〜っ!!!」
レトの背中に縋り付いてキールアは辺りを見回す。
お化けなど非現実的な物を、未だに信じているらしいが。
それでも科学術の1つ・・・次元技を司る者なのだろうか。
「あれ・・・こっちの扉開かねぇぞー?」
「こっちもだ」
「んじゃ・・・この扉っつう事か?」
レト達の前に佇むのは、大きく真っ赤な扉。
その禍々しさに平常心を奪われそうになるが、
4人は顔を頷き合わせて、冷たい扉の表面に手をついた。
「「「「せーのっ!!」」」」
流石4人の力だけあって、軽く呆気もなく開いてしまった。
その先には広い部屋が広がっていたが、
やはり研究所だけあり、周りはごちゃごちゃだった。
そこで、誰かの靴音が耳に入った。
「皆、隠れろ!!」
小声で話すレトの指示により、皆は近くの機械の裏に隠れた。
歩いてきたのは・・・白衣を来た中年の男。
中年と言ってもただのおじさんで、黒ブチの眼鏡にいかにも汚そうな靴を履いていた。
ここの研究所の主だという事が、はっきりと分かった。
「・・・“ML368”・・・、来てるかぁ?」
何とも厭らしい声で、この男は言う。
口から出た“ML368”というのは誰かの名前だろうか。
もう1度靴音が鳴り響く。
だがそこにいたのは—————。
((((—————ッ!!?))))
「・・・はい、既に到着しております」
桃色のミディアムヘアで、見覚えのある隊服を羽織り、
いつもとは違う威厳の強さを感じさせる、
幸福と処罰を与える少女。
「おぉ・・・流石だML368」
「それで、データの集計ですが・・・」
淡々と話を始めるミル・アシュランは、まるで別人のようだった。
いつもは明るい元気な瞳が壊れた人形のようで、
いつもは可愛らしい性格がまるで機械のようで。
全く違う別人を演じていた。
(ミル・・・どうして・・・っ)
誰もがこの時疑問を抱く。
確かにミルを追ってきたのだが、
こんなに変わり果てた姿は普段のミルからは想像もできない。
ミルは何かの情報データを白衣の男に淡々と述べていた。
戸惑いもせず、躊躇いもせずに。
全てを報告し終えると、ミルは手に持っていた紙を静かに下ろした。
「・・・以上です」
これは本当にミル・アシュランの声なのだろうか。
冷たく、感情も感じさせぬ声のトーンはやや低く、“恐怖”を覚えさせられる。
男はふむふむと頷きながら聞いていたが、話が終わるとふぅっと安堵の溜め息をついた。
「・・・どうやら本物の情報みたいだね。ご苦労、ご苦労」
「・・・博士」
「なんだい?」
「まだ・・・あの“データ”は渡してくれないのですか?」
「まだまだ・・・これからだよ?」
「・・・ですが・・・・っ」
「————また、犠牲者を増やす?」
男の禍々しい殺気にミルは一瞬体を震わせた。
とてもあの笑顔からは殺気など感じなかったのに。
するとミルと男は2人で別の部屋に移動してしまった。
何かを話し合うみたいだ。
その行動に、4人の気持ちは固まった。
全員で顔を頷き合わせ、ようやく決める。
この問題を、最後まで求めてみよう、と。