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Re: 最強次元師!! ( No.664 )
日時: 2010/12/26 23:09
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jQHjVWGa)

第158次元 元魔を造る者

 「「「「次元の扉—————————発動!!!」」」」


 次元師は叫ぶ。
 己の心を開くために。
 
 突如現れた元魔。
 その汚らわしく、猛獣のような体つきは、普通の人間が見れば一瞬で気絶してしまう程である。
 だが此処で退く訳にはいかない。
 此処まで来た以上、次元に関わる事は全てにおいて無視はできないのだから。

 「レト!!まずどうする!?」
 「こりゃ大物だな・・・」
 「関心してる暇があるか、指示を頼むぞッ!!」
 
 手を額に持っていき、レトは関心していた。
 これ程までに大きな元魔はそういないだろう。
 だがエンからの一喝を喰らい、レトは少しふぬけた顔でやれやれと呟いた。

 「サボコロは攻撃にまわってくれ!!エンは援護を頼むぞ!!」
 「「了解———ッ!!」」
 「キールアも援護だ。・・・お前は無理すんなよ?」
 「うん、分かってる」
 「傷の手当てとかは任せたから、そんときゃ頼りになってもらうぞ」
 「・・・はいはい。んで、レトは?」
 「俺も攻撃にまわろうか援護にまわろうか・・・ちょい迷い気味」
 「サボコロ1人じゃ可愛そうじゃない?」
 「・・・・んじゃ攻撃まわってくるわ」

 キールアを残し、レトは元魔の元へと向かった。
 一方サボコロとエンは、

 「・・・ってめぇッ!!何で今弓放ちやがった!?俺に当たるところだっただろうがッ!!」 
 「ほざけ、貴様がとっさにそこをどかないからだッ!!」
 「今のは避けられねぇタイミングだっただろォォォーーッ!!!」

 喧嘩。

 レトもキールアも呆れ顔。
 何をしているのかと思えば・・・くだらない喧嘩だった。

 「喧嘩してる余裕があるのか・・・」

 レトはもう剣を握る手を緩めてしまう程に呆れていた。
 ツンツンとした2人に、レトは一喝を入れる。

 「おいお前らっ!!喧嘩してる暇があんならさっさと攻げ——————」

 レトがそう、告げる瞬間の事。
  
 元魔の左腕が、一直線にサボコロに向けられた。


 「サボコロ—————ッ!!!」


 レトが手を伸ばしても、届くはずがなかった。
 近くにいたエンでさえ、その事に気付かなかったのだから。
 そのまま左腕を振り下ろされたサボコロは、その衝撃の音と共に押し潰された。

 「・・・ぐ・・・ぁ・・・っつぅ・・・・っ」

 パラパラ・・・と砕ける床に中には、身を丸めているサボコロがいた。
 これは確実に骨を5、6本はやられているであろう。
 これでは、折角の攻撃戦力が失われたのと同じ事。
 果たしてこの驚異なる力は…。


 「はっはっは・・・!!愉快だねぇ・・・君達?」


 聞こえる。
 あの、太くて厭らしい、男の声が。


 「いやぁ・・・君達には気付いていたよ。・・・どういう目的で来たのかは知らんがね?」
 
 「さっきの・・・男・・・・!?」

 「何の用だ?場合によっちゃあお引取り願うけど」

 
 男は問う。
 レト達に、何の用だと。
 その穏便な顔に、
 殺気さえ感じる—————。

 
 「・・・ま、いいけど?侵入者はこいつが排除してくれるだろうーし」


 男は元魔に触れた。
 普通なら人間が触れる事のないその怪物に。
 その驚異的な行動に、3人は目が狂ったのではないかと驚いた。

 「お前・・・死ぬぞ・・・!?」
 「はて・・・何も知らないのかなぁ?」

 顎を触り、んー、と唸るような顔をし、男は笑う。
 まるで自分の子供かのように、親しく触れて。


 「これ・・・僕が作ったし—————?」


 神をも創造すると述べた男なら、
 元魔を造る事など、及ばないという事なのか?
 
 
 「——————さぁ、やれ」


 男がそう告げたのと同時、
 元魔は天に向かって高らかに喚いた。

 その気迫はなんとも言えず、
 最早口から言葉を出す事さえ出来ぬ程に圧倒されていた。
 
 「く・・・っそ・・・・ッ!!!」
 「元魔を・・・造るなんて・・・・」

 エンは弓を引く。
 目の前の現実を壊す為に。
 だがその震えた右手は、どうしても動かない。
 元魔を造るという現実が・・・どうしても受け止められない。

 「ふ・・・ざ・・・・けるなァァァ———————ッ!!!!」
 
 あの冷静、冷淡、冷徹なエンでさえ、既に狂っていた。
 震えた右手が放つ1撃は、元魔に届く事はなく、打ち落とされる。
 圧倒。
 元魔の底知れぬ力も・・・あの男の研究の末なのだろうか?

 「エン————ッ!!!」

 元魔は咆哮を放つ。
 喜びなのか、怒りなのか、哀しみなのか、楽しみなのか。
 どの感情も当てはまらぬ程の勢いで、放つ。
 咆哮を向けられるエンは、避ける余地も与えず直撃。
 その爆音が鳴り響くのと同時。
 男は愉快そうに嘲笑う。

 「ふはははははッ!!!!これが人間の弱いところだねぇッ!!!」

 狂笑・・・、男は笑う。
 その狂った瞳で、狂った言葉で。
 サボコロの炎を掻き消し、エンの一閃を撃ち抜いて。
 あれほどの実力を持った元魔など、
 この世に存在していいものか?


 「———————さて、残るは・・・」


 男の視界に入っていなかったレトは、
 男の視線の先にいる人物に——————叫んだ。

 「キールア——————ッ!!!」

 此処からでは間に合わない。
 間に合ったとしても、止められない。
 
 元魔はまたしても咆哮すべく口を開き、その気力を集めていた。 
 レトは走る、ただ護る為に。
 だが届かない。 
 元魔が咆哮を撃つ時には既に——————レトはまだ遠くにいた。

 
 「さてと————————死んでもらおうかぁ?お嬢ちゃん」


 
 男の言葉がキールアとレトの耳を過ぎた瞬間、


 元魔の咆哮は放たれる。