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Re: 最強次元師!! *オリキャラ募集(第2弾)* ( No.680 )
日時: 2010/12/29 10:41
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jQHjVWGa)

第160次元 揺るがない覚悟

 ロクは、血の流れる両腕を押さえながらも、立つ。
 ミルの力は把握してある筈。それにも関わらず、1度もミルから視線を逸らさなかった。
 それはロクなりの覚悟か、否か。
 例えどんなに傷つけられたとしても、ミルへの攻撃は一切しなかった。
 
 「どう・・・して・・・?」

 ミル・アシュランは問う。
 目の前の現実に、理解が遅れて。
 ロクはそんなミルの質問に、少し戸惑いを見せた。

 「どうしてって・・・何で?」

 いつもと変わらぬ笑顔で。
 誰もを幸せに導いてきた、その顔で。
 この場でたった1人の神は笑う。

 「・・・・・実につまらないなぁ?ML368?」

 途端に、奥からあの男の声がした。
 つまらなそうな顔をして、退屈そうに耳を穿って。
 そのこけた頬を撫でて。

 「全く・・・だから人間ってのは弱い」
 「・・・・?」
 「大事な人とか大事なもの・・・欲望にしがみついて、離そうともしない・・・なんと醜い生き物か」
 「—————!?」
 「もう死んだんだよML368、あいつは」

 またもミルは挫折する。
 追い討ちをかけるかのような、男の言葉に。
 ロクは、先程まで向けていたミルへの視線を、男にずらした。

 「・・・今、何て言ったの?」

 笑顔ではない、怒りの顔。
 ミルから離れたロクは、男に歩み寄った。

 「人間が・・・醜い生き物、か」

 ロクは腕の血を払い、気がつけば男の目の前まで来ていた。
 神を創造する事が出来る・・・と言うこの男に向かって、
 ロクは拳を握った。


 「・・・っざけんなァァァアアーーーッ!!!!」

 
 ロクの拳は見事に男の頬を捉えた。
 その衝撃で男は壁際まで一直線に吹っ飛んだ。
 荒い息を立てて、ロクは男の胸倉を掴む。

 「・・・人間は醜い生き物?・・・そんな戯言、もう1度言ったらぶっ飛ばす———ッ!!!」
 
 恐怖を覚えさせるロクの言動。
 男は少しだけ・・・手を震わせた。
 目の前に神がいると思うと・・・怖いのだろう。
 
 「ふ・・・はッ!!お前が・・・ロクアンズ・エポールか・・・?」
 「・・・?」
 「妖精の異名を持つ神—————【FERRY】だろう!!?」

 男はロクの腕を振り払った。
 何年も手に入れたかった・・・神の力が、
 今、目の前にいる。

 「教えろ神。—————貴様は何の為に生きるのかッ!!!」

 何の為に、生きるのか。
 男は止まらぬ冷や汗を気にもせずに、
 目の前にいる神へ問う。

 「・・・人間を護る為。・・・それ以外に何の理由も存在しない—————ッ!!!」

 ロクは右の足で男を蹴り飛ばした。
 壁に凭れていた男は、またしても笑う。
 何の為に生きて、何の為に戦うか。
 ロクの答えが———それ程までに馬鹿らしい事だということか?

 「人間を護る為に生きる神・・・か。ふははははッ!!何を言うかと思えば!!!」
 「・・・!?」
 「馬鹿らしい!!実に馬鹿らしいぞ妖精!!!———この世はそこまで甘くないのだッ!!!」
 「・・・・分かってる」
 「・・・?何だと・・・?」
 「あたしは自分自身に打ち勝てなかった。その理由は心の弱さ」
 「・・・」
 「心の神であるあたしが心に負けててちゃ意味がない————そう、運命に教わった」
 
 無次元へ行った時。
 ロクは・・・勝てなかった。自分自身に。
 心に追い打ちをかけられるかのように責められ、人間を護る“覚悟”をも打ち消された。
 己の弱い心を、まるで抉るように鏡の妖精は言った。
 だからこそ・・・負けられない運命であると。

 「・・・あたしは自分の大切な人も護れないような小さな神にはなりたくない」
 「・・・」
 「だからミルを助けに来たの。この身が動かなくても————それでも護りたいからッ!!」

 この静かな空気の中。
 笑う者はいない。
 決して揺るがない神の覚悟に、狂いはない。
 
 ミルは想う。
 失くしてしまった自分の友を。
 ロクの逞しい後姿を見て、鮮明に————。


 (そ・・・っか—————似てるんだ・・・ハルに)

  
 ミルは、ただ自分の掌を見つめた。
 処罰の剣を握っていた、誰も護れぬその手を。
 そして・・・重ねていたのだ。
 ロクアンズ・エポールと——————親友だった“ハル”という人物を...。