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Re: 最強次元師!! *オリキャラ募集(第2弾)* ( No.719 )
日時: 2011/01/06 22:54
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jQHjVWGa)

第163次元 白銀の少女Ⅲ

 「はぁ・・・っ・・・・はぁっ」


 荒い息が止まない。
 誰1人いないこの大広間に、あたしはたった1人で立っていた。
 あの頃みたいに・・・たった1人で。

 「ミル・・・」

 後ろの方から、あの子の声がした。
 あたしは元魔が消滅したのを確認すると、
 くるっと振り返った。

 「・・・って、うわぁッ!?」
 「ミル!!凄いねミル!!本当に凄いよっ!!」

 あたしが振り返るなり抱きついてきたハルを、
 あたしもそっと・・・抱き締めた。

 「うん・・・ごめんね」


 この時から、この瞬間から、
 あたしはハルの友達だったのかも、しれない——————。


 「ほら皆!!言うことあるでしょ!?」

 
 ハルが振り向くと、その先には大人数の子供達がいた。
 あたしから少しだけ視線を逸らして、後ろや前で手を組んでいた。
 
 「ありがと・・・新入りさん」
 
 「え・・・」
 
 「助けてくれて・・・あ、ありがとうなっ!!」

 「あ、い、いや・・・」

 なんと、次々にあたしに感謝の言葉を投げかけていた。
 感謝されるなんて・・・慣れてないんだけど・・・、

 でも・・・凄く嬉しかった。

 「ミル・・・やっぱりミルがいてくれて良かったっ!!助けてくれてありがとう!!」

 ハルも、満面の笑みで言ってくれた。
 あたしは・・・皆の言葉に耐え切れなくて、涙を流した。

 「ちょ・・・ミル!?」
 「ごめん・・・・慣れてなく、て・・・っ」
 「・・・・ミル・・・」
 「ありがとう・・・————————————————ハル」

 この時、初めて思った。
 次元師で良かった・・・って。
 今まで褒めて貰った事がなくて、
 今まで感謝された事がなくて、
 だから——————————余計に嬉しかった。

 すると・・・途端に皆笑い出した。
 今までとは違う、温かい笑顔で、
 300人以上の子供達が・・・あたしに拍手してくれた。
 嬉しくて・・・あたしはずっと下に俯いてたけど、
 それでも、温かい拍手をくれたから・・・。




 「ハルっ!!この花可愛いねっ」
 「うわぁーっ本当だぁ!!」

 あたし達は次の日から、よく話すようになった。
 暇な時間も一緒に過ごす事が多くなって、
 次第に・・・友達になっていった。
 それも、掛け替えのない、大事な友達に。

 「もっと沢山見たいなぁ・・・」
 「私もそう思う!!・・・いつか、見れるといいね」
 「・・・?」
 「この実験をさっさと終わらせて・・・ミルと2人で外の世界、歩いてみたいんだっ」
 「外の世界かぁ・・・」
 「ミルは1回体験してるから羨ましいよね、私は物心ついた時には、とっくにここにいたし・・・」
 「そっかぁ・・・じゃあ、約束だね」
 「うんっ!!ミルと私の約束ねっ!!」
 
 実験が終わって、自由になったら、
 一緒に、永遠に、2人でいようねって。
 
 約束した。
 絶対揺るがないって、信じてた。
 
 

 それから毎日、あたしはハルとの時間を大切にした。
 いつかこの研究所が思い出になるのなら、 
 2人が巡り合えた場所にしよう・・・って、ハルが言ったから。
 だから、この時、この瞬間を大事にして、
 いつか思い出にして・・・また2人で笑って語り合いたい。
 
 でも、

 そんな小さな願いさえ・・・あたし達には、届かなかったなんて。


 残酷な運命を、背負う事になった。







 —————————————あれから、9年の年月が流れた。

 
 今日は皆わくわくしてる。だって、この実験が成功して終わったら、皆自由なんだから。
 だから皆はこの日の朝から張り切っていた。

 そう・・・今日は【十一次元覚醒実験】の実行日。
 実験内容は、実験の繰り返しで集めた皆の元力を、
 単にあたしに移すだけ・・・との事。
 それであたしが“十一次元”という未知の次元級を手にする訳で。
 これで神族にも打ち勝つ力を入手する・・・との事。
 
 子供にも分かる、とても単純な実験だなと、少しだけ疑問を持ったけど、
 正直そんなのどうでも良かった。
 これが終われば・・・自由なんだから。

 
 「んじゃ始めようかぁ?・・・皆ぁーっ、位置につけー」

 
 真っ白で汚れ1つない純白の部屋に連れて行かれ、
 あたし達は絶句した。
 何も言えない・・・凄く綺麗だった。
 床にはコードがあって、それを腕に繋げるんだとか。
 あたしは次元師で、土台になる子だから・・・って言って、
 真ん中の子供が1人入るくらいの縦向きの小さなビンのようなものに入った。
 中は空洞で、ガラスを通して外が見えるようになっていた。
 きちんと呼吸もできるから・・・問題ないって。

 

 「これで・・・数十年間の苦労が報われる・・・・・」



 博士は実験の開始際に、そんな事を呟いていた。
 
 あたし達は、何も知らずにわくわくしながら実験後を待ち焦がれていた。
 助かるって思ってた。
 大丈夫って思ってた。

 だから・・・きっと惨劇を生んだんだな、と。
 今でも思う—————————。


 あたしは、終わった後のハルとの毎日を想像しながら、

 静かに・・・目を閉じた。