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- Re: 最強次元師!! *オリキャラ募集(第2弾)* ( No.726 )
- 日時: 2011/05/20 22:01
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)
第164次元 白銀の少女Ⅳ
随分と長い間、眠っていた気がする。
流れる無機質な音を・・・子守唄にして。
もう終わったのかな、と思って、私はそっと目を開けた。
あたしの視界に入ってたのは、ぼんやりと霞んだ箱の底だった。
まだ眠気があたしを襲っていたのか、凄く体が重かった。
あたしは目を擦りながら扉を開けて、冷たい空気に触れた。
でも・・・次の瞬間、
あたしはとんでもないものを目にした。
「——————————————————ッ!!!?」
これが夢であってほしいと・・・その時、何十回も願った。
目の前にあったのは・・・白くで純白な部屋じゃない。
赤黒いペンキで乱雑に塗ったくったような・・・血の海。
最初に思ったのが、何でこうなってるのだろう、で。
次に思ったのが・・・、誰がやったんだろう、だった。
でも、そんな暢気に考えられる程、平常心は保てなかった。
「みん・・・・な・・・・・・?」
理解したくなかった。でも、理解せざるを得なくなった。
パト・・・フォウ・・・ワータ・・・コルン・・・レーデ・・・カルシェ・・・・。
特に仲の良かった皆が・・・目の前で顔を伏せて倒れてる。
腹部、腕、足、背中、首・・・至る所から溢れ出た血に、滴って。
ハルは・・・?
ハルは何処にいるの?
お願いハル・・・、無事でいて——————、なんて。
適わない願いを胸に押し付けて、ハルを探し回った。
「ハ・・・・ル・・・・・?」
見つけた・・・でも、
それはあたしの望んだハルじゃなかった———————。
顔を伏せて、白くて綺麗な髪を真っ赤に染めて、
ハルは・・・息絶えていた。
近くに落としていた特徴的な眼鏡にも返り血が浴びせられ、それは全ての終わりを物語っていた。
「ハル・・・?・・・・ねぇ・・・ハルって、ばぁッ!!!」
幾ら叫んでも、ハルの声は返ってこない。
幾ら呼んでも、ハルは振り向いてくれない。
この時初めて理解した。
——————————————————ハルが、死んだって。
「おぉ・・・これが結果かぁ・・・・まぁ、予想はしてたけどねぇ・・・」
一瞬だけ、その一瞬だけ、
あたしの心臓は、止まった。
「上出来だ・・・これで絶大な力は手に入る・・・」
博士だ・・・。
この研究の首班となった、博士。
あたしの心臓の音は激しく高鳴った。
こんな現状を見て・・・この人は何も思わないの?
「待って・・・下さい・・・・・」
言わなきゃ。
何か言わなきゃ・・・。
じゃないと何も考えられない——————。
「ん?どうしたML368。具合でも悪いのか?」
どうして・・・何も言わないの?
泣いたりしないの?
こんな事になってるのに?
「博士・・・これは、どういう事ですか・・・?」
「んー?どういう事って、ねぇ・・・」
「皆は何処に行ったんですか・・・?どうして沢山の血痕が染み付いてるんですか・・・」
「何処って・・・ほら、いっぱい目の前にいるじゃない」
「待ってください・・・これが皆だって言うんですか——————!!!」
あたしは耐え切れなくなって、震える声を抑えて博士に怒鳴りつけた。
どうしてそんなに冷静でいられるのか・・・全てを聞きたかった。
「そうだよ?これが実験の結果だ。・・・思った通り、1人も残らなかったなぁ・・・」
思った・・・通り・・・・?
「何を・・・言って・・・・・」
「どうしたML368・・・、お前は喜ぶべきなんだぞ?」
「よろ・・・・こぶ・・・?」
「そうだ・・・お前は世界で1番強い次元級を手にしたんだからなぁ」
「世界で1番の・・・次元級・・・・・?」
———————喜ぶって、何を?
———————世界で1番って、何?
———————どうして、平気でいられるの?
———————次元級って・・・何の為に?
「待って・・・・」
「んー?」
「全て説明して下さい・・・・意味が分かりません!!!」
「んー・・・まぁ、お前ならいいかぁ」
博士はこほんと1度、咳をした。
それから眼鏡越しに・・・あたしを見下ろして、話始めた。
「お前にも話したように、これは【十一次元】の覚醒の為の実験だ」
「・・・・」
「だが・・・それを行うのには、リスクがあってだな・・・」
博士の話によると。
十一次元の覚醒の為には、莫大な元力が必要である。
そして、研究員達は次元師367人分の元力を集めなければいけない、という結果を叩き出した。
次元師を367人も用意するのは不可能な為、【人工元力】を造りだし、
それを普通の人間の体に含ませる事により、次元師じゃなくとも・・・同じ結果が得られると見た。
元力は、体内にある事により、少しずつ増えていく。
もっと増やすには、自分自身の身体能力を上げていく必要がある。
それでも最低9年の時間が要り、その9年で十分に体内で集められた元力を・・・1人の次元師に移す。
ここまでは、普通に聞いた話と同じ事だった。
そう、もしこのまま実験をすれば、大きな犠牲を伴う。
何故なら・・・普通の人間が元力を体に取り込む自体、己の体を焼き切る程の痛みに襲われるから。
そして、次元師であろうと人間であろうと、自分の体から元力を解き放つのは、非常に危ない事。
それを行えば、自殺行為そのもの、だという。
「・・・だからと言って実験を中断させるのは不可能だった。だから仕方なく子供達の命を奪ってでも成功を・・・」
「そんな・・・!!たかがそんな事の為に367人の人間を殺したんですか!?何の関係もないのに・・・!!?」
「たった367人が殺されて、世界が救えるなら・・・安いもんだろうー?」
自分で纏めてて分かった。
この博士は・・・相当悪だって。
人間の命が安い?
そんな事を普通に言える精神があるの?
「まぁいいじゃないか——————————————————もう終わった事だし」
「・・・——————————————!!!!」
あたしはその言葉を聞いた瞬間に、
既に・・・この男に殺意というものを芽生えさせていたかもしれない。
許せなかった。
人の命を簡単に考えるこの男が、
世界で1番許せなかった————————————。