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Re: 最強次元師!! ( No.758 )
日時: 2011/03/02 19:52
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: yycNjh.Z)

第170次元 運命を背負いし橙の少女Ⅰ

 秋になり、紅葉が街に色を付け始めた。
 夏の熱気はどこか遠くへ飛んだのか、今は肌寒い次期となった。
 隊員達は集会所のストーブの前で日に日に温まっている。そういう日常が続いている。
 
 そんな時、秋の寒気も吹っ飛ばしてしまうような事実が、とある義兄妹を苦しめた。

 「・・・って事で、貴方達はここ2週間、任務禁止だからね?」
 「「・・・は、はいぃぃぃ——————————!!?」」 
 
 あまりの事実に思わず驚きの言葉を吐き出す2人。
 フィラ副班は病室にいた2人を見て、はぁ、っとため息を吐く。
 もの静かで白を基調としたこの部屋で、唯一2人だけの声が響いた。

 「・・・だからぁ、貴方達のここ何ヶ月かの調子を見ても、無茶ばっかりなの!!」
 「でも・・・っ!!」
 「それに、今は元力の心配をした方がいいわ。・・・なくなったら次元師じゃいられないのだから」
 「う・・・」
 「まぁ外を出歩く程度はいいけど・・・くれぐれも無茶しないように!!」
 「はぁーい・・・」
 「もし何かあったら私達に知らせてね?私達は大人として貴方達を護る義務があるから」
 「へいへい、分かりましたよー」
 「2週間くらいなら別に・・・」
 「よし、良い子ね。流石エポール兄妹っ!!」
 
 フィラ副班はそういってよしよし、と2人の頭の上にぽんと掌を乗せると、自分の仕事の為、帰っていった。
 しぶしぶ言う事を聞く事にしたレトとロクは、真っ白なベッドの上に腰をかけて座った。
 軟らかな感触に包まれそのまま倒れた2人は、目線の先にある天井を見上げた。
 
 「2週間か・・・」
 「暇になるねー・・・」
 「ちょっと憂さ晴らしに街にでも出るか?」
 「え・・・あ、でも・・・」
 「・・・、あぁ、ごめん。・・・やっぱ、ダメか?」
 「いや・・・まぁ別にどうって事じゃ、ないけど・・・」
 「嫌ならいい、俺1人で行く」
 「じゃ、じゃああたしも行く!!」
 「・・・嫌じゃないのか?」
 「久しぶりにレトと街をぶらぶら歩くのも、悪くないと思って」
 「・・・物好きだな、やっぱ」

 2人は勢い良くベッドから起き上がると、病室を抜けて門へ向かった。
 何ヶ月ぶりだろうか。
 この頃はエンやサボコロの事もあり、そして神族だと分かったロクへの反逆もあったりと、忙しない日々が続いていた。
 それに、ロクにとっては半年も眠っていた訳だから、あの日が昨日の事のように思えてくる。
 だから尚更思うのだ、義兄と出かけるのはいつぶりなんだろう、と。

 「くーっ!!やっぱさみぃけどいいなぁ外の空気は」
 「だねぇーっ、病室って薬品臭いし」
 「さて、と何処行くかな・・・」
  
 ちゃっかり防寒着を纏い、2人は外の冷たい空気に触れた。
 私服を着るのも久しぶりだ、と先程レトが呟いていたもんだ。
 少し長めのコートを羽織り、首元には黒いマフラー。ロクは耳当てまでやっている。
 10月といっても、これ程寒いものだ。

 「・・・ん?」
 「?、どうしたの?」
 「あの路地の奥・・・」

 レトは何かを見つけたのか、目線の先にある細い路地を見つめていた。
 そしてふと走り出し、その路地の奥へと突き進んでしまう。
 暗い路地の向こう。
 その先に向かってしまったレトを追いかけるべく、ロクも迷わず路地へと入っていった。
 狭くて細い、真っ暗な道を辿る2人。
 変な水の音まで聞こえる為、余計に寒気が差してくる。

 「ねぇ・・・どうしたの?」
 「いや・・・・、今人が・・・」
 「人・・・?」
 「キャぁぁ———————ッ!!!」
 「「———————!!?」」

 途端、女性の声が2人の耳を突き抜けた。
 声がしたのは右の方向。
 2人は迷わず右に曲がって走った。

 「だ・・・大丈夫ですか!?」

 着いた先にいたのは、中年の男に胸倉を掴まれて涙目になっている同い年くらいの少女だった。
 少女はびくびくと震え、眼鏡越しの瞳からは涙が輝いている。
 そんな状況を前に、あの少女が許す筈もない。

 「今助—————」

 レトがそう、言いかけた瞬間の出来事。

 レトの真横を、一筋の光が通った。

 「・・・え?」

 瞬間、中年の男は大きな爆音により煙に包まれた。
 その激しい雷撃は見事暗闇に潜んでいた男を捉えたのだ。
 襲われていた眼鏡の少女の口はぽかんと開いていて、驚きに溢れた表情を見せた。

 「・・・いい年した大の大人が女の子を襲うじゃありません!!!」

 腰に手を当てて右手の人差し指を突き出したロクはびしッ、っと男にその指を向けた。
 ひくひくと足を動かし、しゅう・・・、というように体から煙を放つ中年の男は、

 「・・・に、逃げられると思うなよ—————!!!」

 とだけ言い残し、さっさと街の方へ消えていってしまった。
 ふんっ、とそっぽを向いたロクは、隣にいた少女の方に振り返る。

 「大丈夫?」
 「あ・・・はい、ありがとうございます・・・」
 「さっきの男の人、知り合いなの?」
 「ま、まぁ・・・知り合い、というのが1番適切ですね・・・」
 「・・・?」
 「な、何でもないですっ!!本当に助かりましたっ」
 「へ?いや・・・別にそこまでは・・・」
 「いえ・・・本当に、助かったんです」
 「・・・?」

 腰まで伸びた橙色の髪の毛を揺らして、深くお辞儀をした少女。
 若干の垂れ目で、ものすごく気弱そうに見えたその少女はどことなくリルダを連想させた。
 おどおどしていて慌てているところがとても似ている。

 「・・・んで、何で襲われてたの?」
 「わ、私・・・」
 「・・・?」

 少女は一瞬言葉を詰まらせた。
 それが本当に詰まらせただけなのか、それとも言えない事情があるのか否か。

 「————————————狙われてるんです」