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Re: 最強次元師!! ( No.759 )
日時: 2012/08/16 09:41
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TDcrpe6v)

第171次元 運命を背負いし橙の少女Ⅱ

 「・・・んで、さっきの話だが・・・・」

 喉奥と潤わすアップルジュースを口に含み、かたんと音とたててテーブルに置いたレト。
 少し言葉を詰まらせながらも、レトは話を切り出した。
 
 ・・・今から凡そ10分前。
 任務禁止令を出され、街の中をぶらぶらと歩いていたレトとロクの義兄妹。
 そこでふと、暗い路地の奥に何かあると感じたレトは走り出し、ロクもそのまま奥へと突き進んだ。
 その奥で中年の男に胸倉を掴まれ、涙目になって怯えていた少女を見つけた。
 少女に話を聞くと、少女は一言、

 『狙われている』

 と言った。

 それに疑問に思った2人は、近くにあった喫茶店で眼鏡をかけた少女と一緒にいた。
 そして、現在に至る。
 
 「・・・そ、それは・・・・」 
 「何か、言えない話?」
 「そうでは・・・ないですけど・・・」
 「あたし達、蛇梅隊の次元師で、放っておけないんだ、貴方みたいな人っ」
 「そ、そうなんですか・・・!?」
 「うん、レトヴェールとロクアンズって、知らない?」
 「え・・・・あ、あのエポール義兄妹なんですか!!?」

 少女は思わず声を荒げ、テーブルに手をつけ、ガタンッ!!と音と鳴らした。
 非常に驚いたのか、眼鏡越しの瞳がその表情をあらわにしていた。
 この少女の耳にも、ロクとレトの名前は届いていたらしい。

 「あ、そ、そうだけ、ど・・・」
 「私・・・こんな人達とお話なんて・・・!!」
 「いやいや・・・、そこまで・・・・」
 「んで、話せない内容なのか?『狙われてる』ってのは」
 「詳しくは話せませんが・・・少しくらいなら」
 「んー・・・、あっ、貴方、名前何ていうの?」
 「私ですか?・・・私はセルナ・マリーヌと言います」
 「セルナ、ね・・・。あたしの事はロクでいいから」
 「そ、そんな罰当りな・・・っ!?」

 頬を赤らめて手を左右に振り、必死になっているセルナ・マリーヌ。
 彼女はどうやら臆病で且つ、内気な人らしい。
 見ていて飽きないなぁ、とロクは顔を緩ませて笑った。

 「・・・おい、本題に入らねぇか?そろそろ」
 「あ・・・そうだったね。それで、話せる範囲まで話してくれる?」
 「あ、はい・・・・実は・・・」


 ・・・彼女は次のように語った。


 「私、遠くの村に住んでいたんです、両親と一緒に。でもある時・・・」


 
 ある時、私の家にたちの悪い強盗のような人達が入り込んできたんです。
 それは突然で、それに凄く頭に来ていたのか、
 私の両親はすぐに殺されてしまいました。
 生き残った私は護ってくれた両親から逃げろと言われ、涙ぐみながらも雨の中、必死に走って逃げ回りました。

 強盗のような人達は、実は今、国際指名手配犯の4人組で、酷い殺し屋だったそうでした。
 そして近くの森で体力のない私は力尽きて、殺し屋達にも見つかって、絶望していた時です。
 その人達に言われたんです。

 『お前、生きてぇか』って。

 その言葉に驚いていた私に、更に苛立った殺し屋達は、『生きてぇかって聞いてんだよッ!!!』って怒りだして・・・。
 私は必死になって顔を上下させて頷きました。
 死にたくなかったんです。
  
 そしてたその人達が笑って、私の事を眠らせて・・・ある場所に連れて行かれました。

 その場所が何なのかは言えませんが、とにかく静かなところでした。
 殺し屋達に聞いてみたところ、お前に協力してほしい事があると言われ、私はその現場まで向かいました。
 そこは・・・とある研究所でした。
 何も知らされないまま、私はまた眠らされたんです。

 ところが・・・。


 「・・・と、ところが・・・・?」
 「・・・・・」
 「・・・・セルナ?」
 「ごめん、なさい・・・やっぱり言えない・・・っ!!」
 「セルナ・・・・、何?何か、あったの?」
 「貴方達を巻き込みたくないです・・・ごめんなさい。今の話・・・全部忘れて下さい」
 「セル—————ッ!!」

 
 ロクが叫んで手を伸ばしたが、セルナは走って去っていった。
 一瞬見えた、光る何か。
 セルナの眼鏡越しの瞳から・・・光が零れ落ちた。

 (泣い・・・、てた・・・・?)

 あれは幻覚だったのだろうか。
 たった一瞬に見えた小さな光。
 だが確かに震えていた、確かにここで彼女は語っていた。
 何かに恐れて・・・それでも懸命に。

 誰かの助けを求めていた—————————。



 
 「・・・レト、どうする?」
 「どうするもこうするもねぇだろ。・・・お前も同じ気持ちだろ?」
 「・・・やっぱり、そういう性分だもんね」

 ロクとレトは、その後必死になってセルナを探したが、
 街の中には・・・それらしき人物はいなかった。
 もういなくなってしまったのだろうか。

 いや・・・それにしても。
 2人は何より気になっていた事があった。

 『研究所』という言葉だ。

 研究所は今でも多く聳え建っているが、訳も分からぬ実験に無関係者は普通、連れ込もうとしない。
 まだ発見されていない実験が存在しているか、
 それとも新しい実験の企画が始まっている、か否か。
 いや、レトもロクもそんな事は気にも留めていない。

 幼き頃の師、ルノス・レヴィンの死。
 幸罰の少女、ミル・アシュランを苦しめた悲劇。

 この2つを縛り付けていた根本的な原因は『実験』だった。
 
 もう2度と繰り返したくない、哀しみだけを植えつけられる。
 そんな実験を垣間見てきた義兄妹は、何を思っていたのだろうか。
 神族に勝ちたいが為に、国や政府が強制的に行わせた実験など、
 
 もう、見たくない。

 犠牲者は作らない、必ずこの手で、少しでも多くの人間を救い出す。


 2人が天に誓った、生涯の約束———————————。