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Re: 最強次元師!! ( No.764 )
日時: 2011/03/02 19:50
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: yycNjh.Z)

第174次元 運命を背負いし橙の少女Ⅴ

 「「———————————————ッ!!?」」

 レトが勢いよく部屋の扉を開けると同時。
 真っ黒な服を身に纏った2人の男がその音に反応した。
 だが、見渡す限りではセルナ・マリーヌの姿がない。

 「だ・・・誰だお前らっ!!」
 「この研究所に何の用が・・・!?」
 「・・・ちっ、いねぇのか」
 「んじゃ—————ちょっと痺れててね?」

 ロクは男達の背後に回り、雷皇を纏った右手で同時に首元を叩いた。
 男達2人は声を上げる暇もなく、そのまま眠るようにして倒れていった。
 無機質な機械音の鳴る中、レトはため息をつく。
 倒れてしまった男2人にも目を向けず、扉へと向かう。

 「ちぇ・・・、やっぱいなかったか」
 「もっと奥の方にいるんじゃない?・・・此処は狭いし」
 「だな、探そう」

 そう言って2人はこの部屋を後にし、再び廊下を歩いた。
 冷たい、何とも言えぬ空気が立ち込める廊下は、何処か寂しさと孤独を与える。
 まだ真新しい壁や天井、床。
 こんな事件など無ければ、これ程美しい研究所はないというのに。

 「あ、れ・・・」
 「?、どうした、ロク」
 「あっちから・・・・声がする」
 
 先程の部屋から真っ直ぐに進んできた、その突き当たり。
 誰かの声がする。それも、どうやら女性と男性の声だ。
 まだ幼いような女性の声に・・・大人というのには早すぎる低い声。
 いるのは、2人・・・いや、3人か。

 「もしかしたらセルナかもしれねぇな」
 「うん・・・、油断は禁物だよ?レト」
 「ばぁーか、俺はお前程バカまっしぐらじゃねぇーよ」
 「な・・・!?そ、その言葉は聞き捨てならな————」

 途端、ロクの言葉は何かの音によって遮られる。
 鋭いような・・・まるで、

 鋸のような恐怖感の滾る音が———————。

 「・・・!?、セルナ・・・!!?」
 
 鋸の音を聞いて飛び出した2人は、バタンッ!!!という大きな音により扉を開ける。
 荒々しく開けたせいか扉はその衝撃で変形し、目の前に映る光景にも驚きは隠せなかった。
 セルナ・マリーヌは確かに、そこにいた。

 「セルナ・・・」
 「あ・・・っ!?・・・レトヴェールさん、と・・・ロクアンズ、さ・・・ん・・・・?」
 「ほほぉ・・・、仲間がいたのかよてめぇ?」

 若くてひょろっとした体系の男の声が耳を過ぎる。
 鋸を片手に卑しそうな笑みを浮かべて、びくびくと怯えるセルナの前に立っていた。

 「・・・単刀直入に言う、セルナを返せ」

 レトは鋭い声で男に言い放つ。
 だが返ってきた反応は、想像もつかなかったものだ。

 「あぁ・・・いいぜぇ?、こんなんで良ければなぁ」

 男は簡単に、セルナを差し出してきた。
 今まで何度も追いかけてきたであろう少女を、たった一言で解き放った。
 何か策略でも…。

 「そんなんで良ければ・・・だがなぁ?」
 「お前・・・何考えてんだよ」
 「さぁーなぁ?俺だっていらねぇよ、そんな屑」
 「だ、ダメです・・・!!!」

 セルナは、その小さな声で精一杯叫んだ。
 震える腕から大量の汗を流し、全力で首を横に振る。

 「え・・・」
 「私と一緒にいちゃ・・・だ、め・・・・っ!!!」

 涙ぐみながらも、セルナはそう言った。
 レトとロクは、同時に男の方に顔を向ける。
 
 「てめぇ・・・、今まで散々セルナに何してきたんだよ」
 「あぁ?知らねぇーなぁ、だって俺は考案者だし」
 「ふざけないで!!あんた達のせいでセルナがずっと怖い思いしてんきたんだから!!!」
 「ふざけてねぇよ、ただ俺達は欲したんだよ」
 
 くっくっく…っと不適な笑みを浮かべて男は高笑いをする。
 狂ったような青い瞳を輝かせ、不気味な声をあげた。
  
 「次元師よりつえぇっていう—————名誉がなぁッ!!!!」
 「・・・!!?」
 「いいだろ?俺は次元師よりつえぇんだぜ?人間を超越してんだよ!!!!」
 「・・・・笑えるな、お前」
 「・・・あぁ?」
 「その腐った脳天———————————」

 
 狂った男に向かって、

 2人の義兄妹は拳を翳した。

 
 「「180度回転させてやるよ————————————————ッッ!!!!」」


 男に向かって2つの拳が襲いかかった。
 その衝撃により鈍い音が鳴り響いた後、男は口から吐血した。

 「ぐ、はぁ・・・!!?」
 「もう許してやらない———ッ!!!」
 「超越だと?そんな事して楽しいのか、てめぇ!!!」
 「・・・くっくっく・・・・」
 「・・・!?」
 「楽しいねぇ・・・、やっぱ次元師はそうじゃなくっちゃなぁ———————ッ!!!」

 烈火の如く男は2人に向かって走り出した。
 流石噂に聞いていた通り、身体能力はズバ抜けているようだ。
 
 「ぐはぁ!!?」
 「・・・おいおいどうしたぁ・・・?盛り上がんねぇなぁ次元師!!!」
 「雷撃ィィィィ—————ッ!!!!」

 男がレトの頬に拳を振るった瞬間、横の方から雷の塊が襲いかかってきた。
 だがそんなものはものともせず、男は安易に避けてみせた。

 「え・・・っ!?」
 「甘い、甘いぜぇ次元師・・・、もっと楽しませろよ・・・」
 「ったく・・・調子乗りやがって・・・・っ」
 「レト・・・、どうするの?」
 「——————————————最終手段、だな」

 レトはロクに向かって微笑んだ。
 手の甲で口から吐き出した血を拭い、レトは再び立ち上がる。
 狂った男は未だ笑い続けていて・・・その不気味な笑みに少し肩が震えてしまう。

 「・・・おい、どうしたぁー?」
 「・・・・分かった」
 「次元師様ぁー?どうしましたぁー?」
 「・・・あぁ?うっせぇな・・・てめぇに勝つ最終手段使うんだよ」
 「はぁ・・・、最終手段だぁ?」
 「あぁ—————————、分からせてやるよ、次元師が最強って事をな」

 レトとロクは2人で頷き合い、目を閉じ、お互いの右手、左手を隣で合わせた。
 そしてゆっくりと指を折り曲げ、絡ませ———————、息を吸う。

 「「両次元発動————————————」」

 「・・・・———!?」
 
 「「雷斬———————————ッ!!!!」」

 レトの両手には金色の雷を纏う両手剣が収まっていて、ロクはぺたりと座り込む。
 そしてそのまま壁に寄りかかり、呟いた。
 
 「・・・今回は任せたよ、我が義兄っ」