コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.770 )
- 日時: 2011/03/12 13:20
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)
第178次元 砂漠に現れし“殺戮の拷問者”
「くぅーっ!!おっわったぁーっ!!!」
「今回は流石に楽だな、まぁ元力使わない仕事選んだ訳だし」
「うんうんっ」
日が傾く時刻。2人は砂埃の舞う広い砂漠で歩いていた。
小さな一粒一粒の砂を見つめて、熱い地の上を淡々と進む。
果てしなく見える大空と大地の狭間。
義兄妹は本部に帰還する所だった。
「あ・・・サボコロに怒られるかなぁ?」
「はぁ?何が?」
「ほら・・・来る前に・・・」
ロクは任務に行く正午前後の事を思い出す。
丁度サボコロに出会い、つい…。
「お前らもう任務禁止令解禁なのかぁー?」
「うん、今から砂漠まで行ってくるーっ」
「へぇー・・・」
「ついでにサボコロのご親族様にも挨拶してくるけどね?」
「・・・おいてめぇ、俺はサボテンじゃねぇって何度いやぁ——————」
「じゃあなー、サボテン君。綺麗なお花を咲かせるんだぞー」
「レトまで・・・、ちょっと待ててめぇらァァァ————————ッ!!!!」
という会話が飛び交っていた。
帰って炎を浴びせられずに済む事を切に願う2人だった。
元々悪いのはこの2人だが。
「にしても・・・」
ロクは額に手の甲を当てる。
焼け付くような砂漠地帯に降り注ぐ熱い炎の光。
漂う熱気を払うこともできない2人の体力は、もう限界。
「何でこんなに熱いんだァァァァーーーーッ!!!」
「・・・知らねぇよ・・・、つか、叫んだら余計熱くなるぞ」
果てなく続く地平線。
太陽の光だけを受けて、この熱い砂漠を歩く2人。
此処にラミアがいたら…等と叶わぬ願いを胸に潜めていた。
そんな物を願うくらいなら1歩でも進む冪だが…2人の足は止まる。
冬になるこの季節に、何故熱い、と疑問を投げかけるかのように。
「この世の太陽さんはどうなってんだ?冬になっても熱いんじゃねぇーだろうな?」
「今が夏じゃない事を心から感謝したい」
「俺もそう思・・・・——————————」
途端、レトの言葉は紡がれる事なく止まった。
それは、何かの音を耳で聞き取ったからだ。
熱い地平線のこの大地に、
自分達以外の人物がいるのは分かる、が。
これは1人や2人ではない。
複数、それも大勢の大群が迫りくる音—————————。
「「——————————————ッ!!?」」
思わず2人は振り返る。
いる。何かがいる。
この場から然程遠くない砂漠地帯に——————何かがいる。
「何、だ・・・、この音」
「分かんない——————————、でも」
絶対何かがいる、とロクは言葉を飲み込む。
急に不安と緊張感が込み上げてくる。
喉元を鳴らし、2人は身構えた。
そして…ゆらりと、人影が見えた。
真っ暗でまだ良く見えないが、段々明白になっていく黒い影。
その人影の背後にもまた…ずらりと大群が並ぶ。
そして———————————————、
「やぁ・・・—————————————、エポール義兄妹さん?」
ド太い男の声。低音のその声に…2人はまたも震え上がる。
見た事もない男。
水色の服を来た、身長の低いその人物。
「だ・・・・」
「一体・・・・、あんた、誰なの?」
2人から数十メートル離れたその位置にいる男は、にやりとその汚い口元で笑う。
「剣闘族って言えば・・・分かるかな」
「「———-——————————————————ッ!!?」」
男はその口元で確かに『剣闘族』と言う。
それは誰しも耳にする極悪人の名であり、一部の人間はその集団を『一番神に近し者達』とも言う。
人を危め、人という人情溢れた者達を殺し、
この世に害のある人物を徹底的に殺していく————————、云わば“殺戮の拷問者”
「何でそんな奴らがこんなところにいるんだよ」
「・・・何故って・・・、まぁ色々あるが・・・・・」
レトはロクにとっては、剣闘族は許してはならぬ存在である。
幼馴染の家族を罪なく殺し、
サボコロの妹、エンの姉をも死へと誘ったのだから。
自分の仲間達や身内を此処まで傷つけられ———————、この2人が許す筈もない。
「そうだな・・・強いて言えば・・・」
「・・・・」
「そこのロクアンズエポール————————、いや、【FERRY】の処刑と言った所か?」
ここ数日口に出していなかった、ロクの心を焼き切る程の事実。
ロクの心そのものを乱雑に引き裂き…、底の底から抉り返す、その言葉。
“神族【FERRY】”
「神族と人族の交際は一切禁じ、十次元の発動も禁ずる。———“絶対法律”を忘れた訳ではないだろう?」
“絶対法律”…とは。
この国に置いて、また全世界に置いての守らねばならぬ法則。
それは実に300条以上あり、掟に反した者に剣闘族が罰を下す。
最も、“刺殺”、“射殺”…など、綺麗な殺し方は一切行っていない。
この世界の秩序を乱す者に、“生”という娯楽は与えられないのだから。
「・・・んで、その剣闘族様様が、ロクを殺しに来たってか?」
「こちとら黙っていられないんだよ——————そういう罪人は」
「・・・ふざけんじゃねぇ—————————ッ!!!!」
啖呵を切ったレトは剣闘族の男に向かって叫び出した。
「威勢がいいなぁ小僧。・・・でも、この大群相手にどう戦う?」
「・・・っ!!」
そう、男の背後には見るからに戦闘体勢の兵士が五万といた。
完全装備に完全体勢。
此処には戦いにきたというかのように、その兵士はずらりと並んでいる。
「・・・ロク」
「・・・・レ、・・・っ」
「お前、もう1度でも元力使ったら危ないんだから、絶対手出すなよ」
「でも・・・・それじゃあレトが・・・!!」
「俺はお前を生かせたい————————、こんな願いじゃ、だめか?」
振り返る事なく、レトは双斬を身構えそう言った。
この大群の兵士を、たった1人で斬り抜くと、そう背中が物語る。
無茶にも程がある…と、ロクは自分の言葉を飲み込んで、自分の無力さに痛感する。
「面白いなぁ・・・、君。此処にいる兵士はざっと1000人だ。・・・君みたいな少年が、立ち向かうのか?」
「あぁ————————そうだ」
レトはそう振り切って、双斬を握りなおしてぐっと力を入れる。
レトの背後にいるロクは、ただ震えて小さな粒を見つめた。
そしてレトは大きく口を開けて、兵士に向けての言葉を一気に投げかけた。
「そこの兵士全員—————————————、片っ端からアップルパイの具材にでもしてやるよッ!!!!」